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にゃ?

先日読者の方より評価をいただきました!ありがとうございます!何よりの励みになります!

橘は最小限の動きで太刀を振るう。何時でも回避に転じられるように無駄な動きを排除した。しかしそれに比例して太刀の軌道も狭くなる。


奴は流れるように太刀を避け、橘の足元を蹴りで掬い上げる。橘はそれを小ジャンプでかわすが、空かさず奴の蹴り上げが顔目掛けて迫る。


橘は足が地面から浮いており回避ができない。仕方なく太刀の平地で受ける。しかし二重の衝撃が伝播して、太刀を握る拳をも振るわせた。


この時点で2人の間にほぼ間合いはない。太刀のリーチを活かせないと判断した橘は斬撃を囮にして後出しの蹴りを奴の面に叩き込んだ


その一撃で流れが変わる。よろめいて後退したところに更に拳を打ち込む。身体の軸がブレながらも急所は避ける奴だったが次の瞬間、地に片膝を着けて悶絶する。


「っ…………………」


「なかなか便利やんな」


彼女の拳からは二重の衝撃が放たれていた。橘は戦闘中に奴の魔力操作のロジックを暴き、自らの物語としたのだ。


「ほれ!」


橘の拳の甲が奴の鼻を正面から叩き潰す。あまりの衝撃に頭だけが後ろへ仰け反り、その直後に3連続の衝撃が悪魔を襲う。


地面に突き刺していた太刀を抜き、奴の首元に斬りかかる。ギリギリで仰け反るようにかわした奴だったが何故か顔の表面がスライスされる。


彼女が奴から会得した魔力攻撃は単なる模倣ではなかった。彼女専用にアレンジされていたのだ。そして完全な上位互換と化した。


一度は空を切った太刀から斬撃が飛ぶ。彼女は即興で拳技を剣技へと昇華させた。


橘は首と胴と膝を交互に狙い済ます。太刀が華麗に舞う中、奴は避けるので精一杯で反撃の隙がない。


幾重にも重なる攻防の中、橘の突きが奴の鳩尾に向けて放たれる。奴は回避が無理だとし判断し、被撃覚悟で腕を前で組み合わせた。


突が前腕に突き刺さる。しかし魔力で固められた表皮を貫くことができない。だが橘はこの時点で既に目的を果たしていた。


奴の身体が突如前に仰け反る。見ると奴の背後には一本の大樹。橘は乱戦の中でジリジリと敵の退路を断っていた。


それは全てこの一瞬のため。奴は自分が追い詰められていたことに気付かなかった。


「悪魔にしてはようやったわ、誉めたるで」


橘は太刀を逆袈裟に振るわせる。左脇腹から右肩への軌道は止まること無く一瞬で駆け抜ける。奴は視界が斜め左へとずれたことで、初めて自分の身体が二分されたことに気付いた。やがて上半身が地に伏せる。


『魔操剣術 羅刹鬼』


彼女はそう口にしてこの殺伐とした場を後にした。直後、奴の後ろの大樹が地面にずれ落ち、悪魔の断末魔が掻き消される。










「紅さん!」






ちょうど一仕事終えたタイミングで森の奥から人影が近づいてきた。


「おお、凛じゃねぇか」


そしてそれは不知火凛だった。しかし現れたのは彼女だけ。


「聞いてください!悪魔の襲撃にあって私たちの隊が壊滅状態なんです!」


「そうか、わかった」


彼女の顔は顔面蒼白でその興奮気味の口調からも只事ではないことが伝わってくる。


「今仲間を起こすから少し待ってくれ」


橘は未だ幻術をかけられて目を覚まさない仲間のもとへ歩み寄る。そして不知火凛に対して、がら空きの背中を晒す。


そしてその背中をじっとりと見つめる不知火はそっと右手に殺意を籠める。この無防備な彼女にこれから起こることを想像するだけでこの猫は絶頂しそうになる。


「凛、手伝ってくれ」


「分かりました!」


小走りで橘へ駆け寄る。そしてゆっくりと右手の爪が伸びていく。鋭く尖った爪は何百匹という悪魔の血を吸って先端が赤黒く染まっていた。


猫がその右腕を橘のうなじへと伸ばす


首が飛ぶ


宙を舞う視線に思考が停止する


そして朧に見える橘の背中


そしてその左手には太刀が握られていた。奇襲に成功した筈の猫は何故か返り討ちにあっていた。


猫の頭部が地面に落ちる。その上を此方を振り返った橘の靴裏が踏みつけた。


「雑魚のくせして人真似だけは一級品やな」


そう口にする彼女はニタニタと嘲笑を浮かべていた。しかし死を待つのみの生首にはそれをじっと見つめることしか出来ない。


「察するに凛とこから逃げてきたっちゅうとこか」


「っ……………」


「あー喋んでええ、死ぬ前に教えたるわ」


死に際に追い討ちをかけるように悪魔へと告げる


「凛はな、うちのこと名前で呼ばへんのや。己れはな、それだけで死ぬんや」


咥えた煙草を地面に落として、頭と一緒に踏みつける。その時、声すら出せずに悪魔から生気が消えた。


「それとな」


彼女は静まり返る中、1人呟く


「あいつは仲間を置いてったりせえへんのや」


橘は出会った時点で奴の正体に気付いていた。その上で奴の話に乗り、わざと隙を晒した。それと同時に奴も隙を晒した。一番の隙は、隙を見つけた瞬間なのだ。


「ほれ、起き」


彼女は団員の頬を叩いて目覚めさせる。


「な、なんだ………え………」


覚醒した全員が同じような反応を示した。どうやら今まで奴らと戦っていたようだ。


「それは幻や。以後幻術には気いつけや」


全員を起こし終えた彼女は、ここに来た本来の目的を思い出した。


「先を急ぐぞ」


随分と時間が掛かってしまったが加勢がないよりはマシだろう。婆娑羅一団は黒薔薇の加勢のため、再び更地を進んでいった。

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