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剣と拳

今後一日一回投稿にさせていただきます。時間は午前7時に投稿していく予定です!これからもどうぞよろしくお願いします!早く受験終われ

一服終えた彼女は仮面越しに此方を睨む悪魔へと告げる。


「来なへんなら此方から行かせてもらうで」


柄に手を掛けて構える。悪魔からは彼女が一瞬で姿を消したように見えただろう。音すら置いていく彼女の居合いは、抜刀から振り抜きまでの一連の動作を刹那の間にこなす。


隣で仲間が殺されたことに気付いた悪魔だったが、その時既に自分の首が切られていることには気付いていない。


「どうした己等!」


どちらが悪魔か分からないような一方的な虐殺が繰り広げられる。悪魔からしてみれば、ただ仲間の首が飛ぶだけで肝心の相手を捉えきれない。


これ程人間離れした妙技を巧みに使いこなす橘であったがここまで1度たりとも魔操術を使っていない。五大ギルド準トップの実力は伊達ではない。




次々と死体が地面に落下していく中、彼女の進撃が止まる。首目掛けて振り抜いた太刀が防御されたのだ。橘は即座に距離を取る


「ようやく骨のありそうなのが来たかいな」


彼女の速さについて来た悪魔は他のモブと明らかに一線を画す。それは纏う覇気だけでなく限界まで引き締まった肉体や1人だけ熊の毛皮を頭に被っていることからも分かる。


「親分ってところやな」


「ウポッポポ」


「なるほどなぁ、そりゃ困ったなぁ」


意味など微塵も通じていないが納得したように頷く。


「そんなら」


一筋の閃光が宙を駆ける。橘は一蹴りで奴の頭上まで跳躍し、脳天目掛けて太刀を振り下ろす。


「これがオススメや」


しかし又しても刀身は奴の腕で防がれる。両腕を頭上でクロスさせるようにして防いだ斬撃だったが、彼女の強みは素早さだけではない。


防がれた一振りだったがその刀身は徐々に腕に食い込んでいく。防がれても尚、彼女は太刀に力を籠めてゆく。


「うちの太刀が折れるか己れの腕が取れるか、我慢比べや!」


ゆっくりと刀身が腕に食い込んで行き、切れ目から血が溢れだしてくる。しかし食い込む刀身もプルプルと震えだして、いつ折れてもおかしくはない。


しかし予想外の第3の結末が訪れる。


「バキッ」


「あ?」


「ッポ」


橘の肩から力が抜ける。奴の足場にしていた主根が根本から折れたのだ。橘は奴に覆い被さるようにして地面へと落下した。


「まだ終わってへんぞ」


彼女は落下時の隙を見逃さない。仰向けで落ちる奴を踏み台にして、一瞬だけ滞空する。


『魔操剣術 天穿』


左手で握る太刀を奴の蟀谷目掛けて撃つ。地へと駆ける刀は天地すらも穿つ。刀身は地面を深く抉り取り、刃先が突き刺さったまま地面に直立した。しかしそこに奴の残骸は無い。


咄嗟に回避したようだが千切れた熊の被り物は衝撃の大きさを物語っていた。一拍遅れて着地した橘は即座に太刀を握り直して部族の長へと迫る。


橘は奴の左脇腹に狙いを定め、真横に振り抜く。しかし間一髪で受け止められる。続けざまに刺突を繰り出そうとするが奴の回し蹴りが橘に防御を強いる。


橘はそれをバク転して回避する。華麗な足捌きで一旦奴と距離を取るが、再び奴を視界に捉えた時には奴の拳が眼前まで迫っていた。


煙草の先端が拳と触れる。反射的に顔をずらすが顔の左半分に奴の殴りが直撃する。凄まじい衝撃が橘を襲うが自らで首を左回りに傾けることでうまく威力を散らした。


更に身体ごと回転させて次の一撃に遠心力を乗せる。奴の衝撃を乗せた一振りは伸ばされた奴の左腕を切断した。


「ウポポッポポ」


サシの勝負に邪魔が入る。突然叫びだしたのは長ではなく、後ろの大木から此方を覗く子分達だった。


まるで長を助けるかのように一斉に橘目掛けて槍が飛んでくる。雨のように降り注ぐ無数の槍が彼女の退路を断つ。


「邪魔や」


それは若干の怒気を孕んだ声だった。何事にも道理を通す彼女からしてみれば、タイマン勝負に割り込まれたこと自体許せなかった。


その上、割り込んできたのは遠距離攻撃の雑魚。安置から隙を見て攻撃するようなこすい行為が彼女の怒気を更に逆撫でしたのだ。


『魔操剣術 次元刀』


太刀に魔力が宿る。漆黒を纏わせた刀は彼女の頭上に弧を描いた。その瞬間、空間が裂けてプラックホールのように飛んできた槍がその裂け目に吸い込まれてゆく。


次元を断つことで刃先の軌道上に歪みを生み出すこの魔操術は凄まじい高エネルギーを孕んでいる。


来る者拒まずの歪みはあらゆるものを吸い込み、跡形も無く粉砕する。木の上にいる悪魔達は引力に必死に逆らう。しかし無慈悲にも先に足場の枝木が限界を向かえる。


引きずり込まれる悪魔達の断末魔すら歪みは吸い込んでいった。そして樹林に久方ぶりの静寂が訪れる。この超引力にも動じること無く耐え抜いた悪魔の長は即座に攻撃へと転じた。


片腕を失った悪魔だが再生している様子はない。それでも奴の身のこなしは先程とまるで遜色無い。むしろさっきよりも格段と速くなっていた。


「なっ」


奴から放たれた拳を腕でガードする。いつものように衝撃を散らして受け流した筈が直後に重い衝撃が彼女を襲う。


まるでガードの上から何かを流し込まれたような二重の衝撃に思わず声が出る。奴はその動揺をいやらしく突いてきた。


ジャブを思わせる軽い連打から本命の右アッパーが橘の顎目掛けて飛んでくる。懐から競り上がるように迫る奴の拳に、橘は何を思ったか一瞬硬直する。


直後、奴の拳が橘の顎を粉砕した。鈍器でかち上げられたような重い一撃が顎から脳へと駆け巡る。意識が飛びそうになるのを何とか堪え、奴から一旦距離を取る。


橘はダメージを負いながらも硬直の原因を探る。あの時、殴られる直前に橘は右腕に殴られたような衝撃を感じていた。そして偶然にも先ほど奴の拳をガードした所と全く同じ所だった。


更に初撃のガード直後に感じた二重の衝撃。これらを繋ぎ合わせると奴の能力が浮かび上がる。




遅効性の攻撃。一度殴った部位に後から再び衝撃を与えることが出来る。所謂追撃だ、それも一度マーキングした箇所に無条件で。橘はもう奴の攻撃を避ける以外に選択肢は無い。ガードは被弾と同じなのだ。








「おもろなってきたな」


しかし、幾度の修羅場を潜ってきたこの女は逆境にこそ快感を覚えるのだ。

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