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絶望降臨

この孤島では短期間で急速な食物連鎖が引き起こされていた。狭い孤島に解放された200を越える悪魔達は互いに生き残るために争いを始めた。


環境に適応できず、強者にねじ伏せられた者は死に行き、生き残った種だけが着々と成長を遂げていった結果、6種の悪魔だけがこの地に残った


その飛び抜けた知性で劣種をいたぶり殺す猿


地下に巣穴を作り、敵を死地へと誘い込む蜘蛛


姿を自由自在に変化させ、その並外れた瞬発能力で樹林を駆け回る猫


古来より伝わるまやかしを呼び起こして拠点を広げていった部族


そして黒薔薇ギルドの前に立ちはだかったワームは砂漠地帯を我が物とし、その規格外の巨体ともう1つの口を手にいれた。






そして最後の一種は強者の来訪を只待つのみであった。





前衛が地上に這い出てきた変異型デポロワームに攻撃を仕掛ける。西園寺の凪払いはワームの腹部を捉え、剣の持ち手に重い衝撃がのし掛かる。


確かに攻撃は入っているが奴に効いている感触はない。奴の皮膚は固いだけで無く、しなやかで柔軟性も兼ね備えている。


だからいくら剣や鎚を叩き込もうとも、衝撃が散らされてしまうのだ。しかし西園寺は先程の攻撃である手応えを感じていた。


『魔操剣術エンソウル』


西園寺の魔操剣術が再び奴の腹部を捉える。しかし、先ほど同様弾かれたにも関わらず奴が呻き声をあげた。


「魔術だ!物理攻撃は効果が無い!使える者は魔術でも魔操術でも何でも使え!」


一度目の手応えといい、コイツは極端に魔力干渉の攻撃に弱い。物理はだめでも、刀に乗った火炎は確実に奴に効いていた。


しかし腹部ごと噛み千切るように頭部と尻尾の口が同時に西園寺を襲う。


『砂塵兵』


それを阻止するように地面の砂が1対の巨大な腕へと変化する。魔術師が放った魔術は砂、岩などを変形させることが出来る。


「そのまま掴んでろよ!」


出現した両腕は奴の首と尻尾を掴みあげた。必死にもがくデポロワームだったがその隙に前衛の攻撃が叩き込まれる。


『魔操剣術 滅刀』


西園寺の握る大剣が黒炎を帯びる。空気すら滅するほどの火力を奴の首に振り下ろした。皮膚に刀身が触れた瞬間炭と化し、奴の頭が切り落とされた。


しかし西園寺が尻尾を切り落とそうとしたその時、奴が砂の拳から逃れて地面に消えた。


「お前ら!あとは尻尾の口だけだ、いくぞ!」


西園寺の声と同時に奴が地面からの奇襲を仕掛ける。しかし何度も同じ手に引っ掛かるような彼等ではない。


彼等は後衛と前衛の2部隊に分かれることで奴の出現時に必ずどちらかがフリー状態になるようにしたのだ。


後衛部隊は地面の揺れを察知し、回避に成功する。ワームは突き上げと同時に身体を捻り、前衛部隊の方へと突進した。


それを余裕で避ける彼等であったが、何やら奴の狙いはハンターではなかったようだ。


「まさか」


西園寺が気づいた時には既に奴は切断された頭を咥えて地面に潜っていった後だった。


そして間髪入れずに這い上がってきたデポロワームを後衛部隊がしっかりと回避するがここで予想外の事態が発生する。


「何で!?さっき切断した筈じゃ」


回避先に切断した筈の頭部の口が現れる。前後をワームに囲まれた後衛部隊は魔術を打ち込もうとするがそれよりも速く両側から突っ込んでくる。


『ポリゴンアーマー』


間一髪でガーディアンの魔操盾術が発動する。しかし、状況が先程とは重なる。しかも今回はデポロワーム2体分と考えていい。


この危機的状況に前衛部隊が背中を向けるデポロワームに飛び掛かろうとしたその時、奴の身体にある無数の穴から紫の煙幕が放出された。


明らかに人体に害がありそうな煙幕は彼等の行く手を阻んだ。そして中からは障壁を噛る音が聞こえてくる。


「西園寺さん!助けてください!」


煙幕の中から仲間の声が響くが前衛部隊はこの毒霧を抜ける術がない。









「西園寺さん!助けてください!」


そう叫んだが返事は帰ってこない。障壁越しに奴の口の断面が2つ見える。先程と違い、両側から押し潰すように力が加えられている。


「ピキッ」


その時、障壁上部の1ヶ所に小さな亀裂が入った。全員がその音に反応して絶望の表情を浮かべる。その亀裂はゆっくりと伝播して行き、魔力で構成された障壁が徐々に小さくなっていく。


「いやぁぁぁぁぁぁ」


1人の魔術師が恐怖で叫び出したことでギリギリで保っていた連携が決壊する。ここでガーディアンが1人でも掛ければ一瞬にして潰される。


「召喚魔術の詠唱を始めましょう」


その時、1人の魔術師がそう口にした。その場の全員が彼女に視線を向けるがその顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚れていた。


なにもしないで死ぬくらいなら抗ってから死にたいというハンターらしい選択を取った彼女に異を唱える者は誰1人としていなかった


泣き崩れた魔術師を立ち上がらせ、5人の魔術師が同じ詠唱を始める。


『召喚魔術』


彼等の呼び声に一体の悪魔が応えた。彼等の頭上に規格外の大きさのゲートが1つ出現する。



「ギィィィァァァァァァァァァァァァ」



満を持して顕現した悪魔は燃えていた。ばかでかいゲートから出てきたのは人型の悪魔。サイズも人間と同じくらいで全身に火を纏っており、もがき苦しむような呻き声をあげている。


その様子を外野から見ていた西園寺は、奴の不可解な挙動に気づく。


「おい…………まさか」


燃え盛る悪魔の姿に違和感があった。それは火に炙られてもがいている訳ではなく、まるで拘束に抗っているような


「一彦!」


「西園寺さん!せ、制御ができません!」



「やめろ!今すぐ解術しろ!」



「と、止まりません!解術できません!」



「だめです!もう降臨します!」




この絶体絶命な場面で更なる脅威が降臨する

調査によって判明した悪魔200体というのは実際に数を数えたわけでは無く、孤島に蔓延る魔力量を測定して数を仮定したものです。


なので6種の悪魔(キキ+5種)は悪魔200体分の魔力量を持っているということです。


恐ろしいですね

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