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作戦開始

「ピピピピピピピピピピピピ」


「バンッ」


俺はけたたましく鳴る目覚まし時計を寝たままの姿勢で止める。起き掛けにスマホを開き、日付が8月13日になっていることを確認する。


決戦の日がやってきた。俺は何とも緊張感の無い欠伸をしながら身だしなみを整える。結局今日まで禁縛のゲートが開かれることはなく、あの犬との再戦は叶わぬまま孤島へ行くことになった。


俺は早めに家を出て集合場所へ向かう。ハンター統括本部へ着いた俺はエレベーターで最上階まで上がる。そして最上階から階段で更に上り、屋上へ続く扉を開ける。


「うわっ」


扉を開いた瞬間、強風が吹き付けて俺の髪がなびく。伝えられた集合場所はハンター統括本部の屋上だ。そして孤島までは航空機で行くらしい。


ハンター統括本部が所有している航空機は100人まで搭乗可能だそうだ。既に航空機の周りにはハンターがちらほら集まっており、昨日の面子は全員来ている。


「では皆さん、そろそろ搭乗してください」


東堂が集まったハンター達にそう声をかけ次々と機内へと乗り込んで行く。強風が吹き荒れるなか、俺達の長旅が始まった。


「隣いいですか」


俺が座った座席の隣に腰掛けようと一人の男が俺に声をかける。


「どうぞ」


西園寺は荷物を荷物棚に仕舞い込み、俺に語りかけた。


「こうしてちゃんと話すのは始めてかもしれませんね」


「確かにそうですね」


最近は顔を会わせる機会は多いが直接話をすることはなかった。まあ特段話すことなど無いのだが


「昨日は災難でしたね」


恐らく橘とのやり取りの事を言っているのだろう


「いえ、俺がE級なのは事実ですから」


「あいつも君を嫌っていったわけではないんだ」


西園寺は彼女について語り始めた


「橘は不知火千影と昔からの親友だったんだ。だからこそ誰よりも命の重さを理解している。昨日の君への言葉はそこから来る思いだった筈だ」


「もう二度と自分の周りで親友と同じような死を繰り返してほしくないだけなんだ」


どうやら彼女の言葉は不知火の死から来るものだった。D級ゲートでS級ハンターが死ぬという事故が起きたことで、ダンジョンに絶対はないということを彼女は理解した。


だから昨日の不知火の話題で異常に反応していたのか。


「そうだったんですね」


誰しも人生の中でも背負って行く物がある。彼女にとってそれは親友の死であった訳だが、それは彼女を縛る重荷ではなく彼女を支える心の核となったようだ。


窓からチラリと見えた日本列島は豆粒のように小さくなっていた。離陸からかなり時間が経ち、島が見え始める


「あれか」


大海原に浮かぶ孤島は歪な楕円型をしていて、樹林と砂漠地帯に別れていた。東堂から聞いていた通りだ。


何故孤島に砂漠地帯が出現するかは謎だが、考えたところで答えはでないだろう。


オスプレイ型航空機は徐々に速度と高度を落として行く。


「皆降りる準備を始めてくれ」


西園寺から指示が下り、各々が防具と武器を装備する。周りが皆、重厚で値が張りそうな防具を身に付ける中俺だけボロい装備を身に付けるのはやはり恥ずかしい。


「よっと」


俺達は島に足を踏み入れた瞬間、ある異変に気づく。


「悪魔の鳴き声がしませんね」


「ああ、本当に200もの悪魔がいるのか怪しいほどだな」


島の南端に降りた俺達を出迎える者は誰一人としておらず、妙に静まり返っていた。まるで俺達の来訪を感知したかのようだ


「ではこれより悪魔の殲滅に取り掛かる。皆、作戦通りに頼む」


西園寺から作戦開始が告げられ、各々が持ち場へと移動し始めた。


まず今回の作戦では島の南端から北端に向かいつつ悪魔を殲滅する計画となっている。バラバラに倒していくのでは見逃す危険性があるため、端から一掃していくのだ。


そしてハンター達はそれぞれギルド別に別れて行動する。一塊で行動した場合、人口密度が高まりすぎて戦闘に支障をきたしてしまう。そしてそもそもバラバラに散らないと南から北へ移動する間に悪魔を取り逃がしてしまう。


そして俺は2番隊ではあるが共闘経験があるとして天断ギルドに同行することになった。欲を言えば西園寺のいる黒薔薇が良かったが婆娑羅でないだけマシだと思おう。


南端をスタート地点として西側を天断ギルドが、中央を婆娑羅が、そして東側を黒薔薇が担当することになっている。上空から見た限りでは黒薔薇の担当する東側だけ北寄りに砂漠地帯広がっており他は全て樹林だった。


俺は天断ギルドの最後尾に付いて、森に入る。2m間隔に大木が生えており、これでは戦闘になったら相当戦いにくいだろう。


「いやですね」


先頭を歩く不知火もそれに気が付いたようでポツリと呟いた。だが一向に悪魔が現れる気配は無く、未だ樹林は静寂に包まれている。


しかしその直後、事態が急変する


「バチュッ」


「なっ」


樹林の奥から突如、茶色い固形物が飛んできた。それはガーディアンの構えていた盾に衝突し、べっとりとこびり付く。


「な、なんか…………臭い」


そして誰かがそう呟いた。確かに俺の鼻も悪臭を感じ取っている。それも酷い臭い、まるで糞のような臭いだ。しかもその投擲は一度では終わらなかった


「来ます!」


不知火が声を上げたと同時に前方から大量の固形物が飛んできた。そしてその内の殆どが盾に衝突して、悪臭を振り撒く。


どうやら敵の狙いは攻撃そのものでは無いようだ。姿が見えない以上断言はできないが敵の悪魔は知能が高く、恐らくこれはマーキングだろう


俺達に臭いをつけることで居場所を周囲の悪魔に伝えているのだ。そんな厄介で狡猾な戦法を使う悪魔がようやく姿を現す。










「またですか」


キキを見た不知火がそう口にした

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