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裏口

「では以上で会合を終了する。くれぐれも明後日の集合に誰一人欠けることのないよう頼む」


その後、集合場所や孤島への移動手段、島での作戦など、諸々の説明を受けて解散となった。橘と呼ばれていた女は1番に部屋を出ていった。


そして彼女が口にした「婆娑羅」というギルド名に心当たりがある。というか全国民が知っているだろう。


五大ギルドのトップ2に君臨するギルド、それが婆娑羅だ。


五大ギルドでメディア露出を拒まないのは西園寺だけ、しかもゲート付近は一般人の立ち入りが禁止されているため、出待ちなんかも出来ない。なので他のトップは顔が知られていないのだ。


俺の横を西園寺が通り抜け、俺も席を立とうとしたその時


「綾小路さん」


「綾小路くん」


不知火と東堂が同時に俺を呼んだ。まさか被るとは思っていなかったようで3人だけの空間に少しの静寂が訪れる。


「私は急ぎではないので後日にします」


「悪いね」


不知火は遠慮気味にそう言って部屋を出た。俺は中途半端に浮いた腰を元に戻して、東堂を見る。


「なぁに緊張することはない。少しだけ話をしようと思っただけだ」


「そうですか、俺が答えられるようなことなら何でも」


「では1つ。今回の孤島のゲートブレイク、何かおかしいとは思わないかい」


「おかしい、ですか………」


俺は考える。孤島に出現したゲートが発見されること無く放置された結果、ゲートブレイクを起こした。何もおかしなことは無いように思えるが。


「そもそも何故孤島にゲートが現れたのか。不思議ではないかい」


「……………そうですね」


俺もその疑問に気が付く。


「通常、ゲートとは魔力の量に比例して出現するとされている。要するに人間が集まるところにゲートは出現しやすいという事だ。一般人であろうと多少の魔力は持っているものだ、魔力を持たない人間などいない。そうすると今回の孤島に出現した5つものゲート、この時点で既におかしいのにその全てがA級と来た」


「確かにおかしいですね」


人間がいる筈の無い孤島に偶然にも5つのゲートが出現し、その全てがA級ゲートである確率はどれ程のものなのだろうか。


魔力だから人間だけではなくて、昆虫や動物なども対象なのか………それにしたっておかしい。そもそも人間が持つ魔力からしたらその他の生命体が持つ魔力など無いに等しい量だ。


「私にはどうしても分からなくてね。君に意見を聞こうと思ったんだ」



「…………分かりません」


俺は必死に考えたが答えを出すことが出来なかった。全く検討も付かない。


「そうか、悪かったね」




「ただ」


俺は唯一思い付いたあまりにも頓珍漢な回答を口にする


「あの孤島にゲートが出現する前から桁外れの生命力を持つ生命体が………例えば悪魔なんかがいたとしたらあり得るのかもしれませんね」


「ふふふ、何故人間界にもとから悪魔がいるんだい………やはり君は面白いね」


「あはは、見当違いも酷いですね」


俺は自身のあまりにも的外れな回答に恥ずかしくなってしまった。しかし、何故か会長はバカにする訳ではなく、満足そうな笑みを浮かべていた。


「付き合ってくれてありがとう。では明後日会おう」


会長は笑みを浮かべたまま部屋を出た。俺一人残された部屋に静寂が訪れる。ふと横を向くと、窓から外の景色が見えた。


2階なので天断ギルド本部に行った時にエレベーターから見た絶景には程遠いが、それでも平和な町並みが広がっている。


視線は徐々に下がって行き、ハンター統括本部の入り口前に立つある人物を捉えた。


「……………」


不知火だ。先程東堂と被った時は後日にするとか言っておいて外で待機していた。西園寺の姿はなく1人で腕組をして立っている。


「帰ろ」


俺は別の出口を探して帰路に着いた。














「……………………………」


私が部屋を出てからかれこれ1時間も経っている。そして彼が降りてくる気配は無い。もうとっくに会長との話し合いは終わっている筈だ。


なら何故来ない。何度も再び上に上がって確認しようと考えたがどこかで入れ違いになったら今までが無駄になってしまうためここで待つことを決めた。


うちの本部に連れ込んで先日のゲートの事も含め彼の秘密を暴いてやろうと思ったのに、これでは空振りになってしまう。


「あれ不知火くん、まだいたのか」


「会長!」


そして先に降りてきたのは彼ではなく会長だった。


「あの、綾小路ハンターはまだここにいますか?」


「もうとっくに話し合いは終わって帰った筈だよ。もう40分くらい経ってるんじゃないかな」


「そうですか……もしかしてハンター統括本部の出入り口って2つあります?」


「よく知っているね。今は車が駐在するようになってあまり使われなくなってしまったんだ」


「そうなんですね、ありがとうございます」


私がそっと顔を上げると先程まで自分達がいた特別会議室が見えた


やられた。恐らく彼は私がここで待っていることに気づいていたに違いない。あの窓から確認して私を避けて裏口から帰ったんだわ




「それほど知られたくないと」




私の1時間を無駄にした彼に少しだけ逆恨みする。それと同時に彼の隠す秘密を尚更知りたくなった。

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