一同会する時
「まだ来ないか」
天断ギルドとのダンジョン攻略から一夜開けて今日も禁縛のゲートの出現はない。一度目の出現からあまり経っていないので早まりすぎだろうか
寝ぼけ顔を水ですすいで、スマホに手を伸ばす。すると一件の通知が入っていた。
「ハンター統括本部が俺に何のようだ」
しかも送り主はハンター統括本部からだった。アブソルゲートの件で集められてからそう経ってないのにまた何か起きたのだろうか。
そうだとしてもやはり俺に連絡が来る理由は思い当たらない。俺は通知をタップして中身を開く。
ハンター統括本部
東堂御門
この度、ハンター統括本部より会合を開くこととなりました。極秘事項のため内容は伏せさせていただきます。
日時 8月11日 午後13時
場所 ハンター統括本部 2階特別会議室
なるべくご欠席なさらないようお願い申し上げます。
メールは簡潔に書かれていた。。だがそんな極秘事項を何故俺宛に………
「いるよな」
俺は不知火凛を思い浮かべ溜め息を付く。極秘事項なら五大ギルドが呼ばれていないはずがない。先日の天断ギルドとの共闘も既に知っているかもしれない。透道兄が黙っていくれればいいのだが
「しかも今日なのか……」
急で悪いとはあったが、それにしても急過ぎる。もしゲート予約が入っていたら罰金を立て替えてくれるのだろうか。
そんなことを考えながらも今日一日中暇であることに安堵し、支度を始める。
私は部屋で1人窓から見える景色を眺めていた。何度見たかも分からない景色は既に頭に焼き付いている。この安泰が永遠に続くことを願いながらも私は………
その時、部屋の扉が開いた。
「お久しぶりです会長」
私の前に現れた1人の男と挨拶を交わす。黒薔薇ギルドを束ねるその男は今日も律儀に集合時間30分前に到着した。
「先日会ったばかりではないか」
「それもそうですね」
彼は私の横に座る。ここは既に彼の定位置になりつつある。召集前にいつもこうやって少し会話を交わすのが私の楽しみになっている。話していく内に分かったことだか、どうやら彼とは気が合うようだ。
ダンジョンでの出来事は勿論、趣味などの世間話などもする間柄で、いつもこの部屋に1人でいる私からすると至福の時間なのだ。
2人は視線を交わすことなく、話し始める。
「会長が最も印象的だったゲートはどんなゲートなんですか」
西園寺から質問が飛ぶ
「そうだな………あのB級ゲートかもしれない」
「B級ゲートですか。僕はてっきりあのSゲートかと思ってました」
「確かに4年前のS級ゲートも記憶に深く刻まれている。だがね………老いぼれにとっては遥か昔の出来事にすぎないんだ」
「そうですか。そのB級ゲートはどんなゲートだったんですか」
「ああ、あれは私にとって始まりのゲートなんだ」
「始まりですか」
「S級ゲートで片腕を失って以来ダンジョンに潜ることは無かったんだが、あるとき思い立ってね。数年振りに悪魔と戦ったんだ」
「そのゲートがそのB級ゲートだったんですね」
「そう、部下には必死に止められてね。何とかして潜入許可を取ったよ」
その後も二人の会話は続き、話題はダンジョンから1人のハンターへと移る。
「僕は今あるハンターについて調べているんですが、調べるほどに興味が湧いてくるハンターなんですよ」
「西園寺くんが興味を持つハンターか………それはなかなかに面白いな。でも私にも1人、気になるハンターがいるんだ」
「会長がですか。どんなハンターなんですか」
西園寺が尋ねる
「面白いハンターでね、2回も死にそうになっておいてハンターを続けているんだ。しかも自分がやりたいからやっているそうだ」
「そんな怖いもの知らずのハンターもいるんですね」
西園寺は苦笑いを浮かべてそう口にした。
「ガチャ」
その時、扉が開いた。気づいたらかなり時間が過ぎていたようだ。
「お久しぶりです会長、いつもお世話になっております」
入ってきた女は深々と頭を下げる。全身黒のスーツに身を包む彼女は髪をポニーテールに結んで、室内にも関わらず黒のレザーグローブをはめている。しかしそれが彼女のトレードマークだ。
「失礼します」
それに続くように1人ハンターが入室した。
「久しぶりだな凛」
スーツの女が後ろから来た不知火にそう声をかける
「橘さん、お久しぶりです」
「敬語はやめろ凛」
「そういう訳にはいきません。私の方が年下ですので」
「2人とも座ってくれ」
西園寺が仲裁に入る。
「居たのか西園寺。悪い悪い」
全く申し訳なさそうに橘が席に着く。
「会長、どうせ今回も2人は来れないんですよね」
「ああ、不参加の連絡を貰っている」
「ならもう皆集まったので少し早いですが始めましょう」
西園寺が会議を始めようとしたその時、ドアが開いた
その者の来訪を知っているのは東堂御門ただ1人だった




