徳仁の霊
結局、その晩に禁縛のゲートが開かれることはなかった。俺の魔力量が低下したということはありえないので可能性としてはクールタイムが存在するのかもしれない。
そして考え得る限りでの最悪は一度きりの挑戦だった場合だ。強制終了という告知があったためイレギュラーな事態であったはずだがそれが一度きりの挑戦にカウントされるのかは、また別問題だ。
だがどうしても諦めきれない。未だ解縛不可となっていた3つのゲートには行けるはずだ。例え【冥】がもう挑戦不可でも残りの3つに備えて準備する価値は十二分にある。
俺はもし再び禁縛のゲートに行けた場合のことを考えて昨日はゲート予約を入れなかった。再び戻ってくるのに何日掛かるかも分からない状況で予約するなんてリスクが高すぎる。
俺はダンジョン募集サイトで今日行われる募集を探す。暇だからといって一日中何もしないわけにはいかない。
なかなか条件の合うダンジョンが無い中、画面をスクロールする指があるところで止まる。
B級ゲート
実施日
8月10日 (木) 13時集合
集合場所
奥田市
編成
攻略班のみの16人編成
B級 15人
募集枠 1人
募集人数
1人
募集条件
なし
「条件なし!?」
募集条件の記載がないことに驚きと焦りを感じる。誰かに取られてしまう前に早く確保せねばと、俺の腕が自然と応募ボタンをタップしようとしたその時、ある疑念が過った。
「徳仁の時みたいなのはないよな……」
今の状況があの時と完全に重なり、僅かな迷いが生まれた。しかし、こんな良物件はなかなか無いのでこれを逃す気はない。
徳仁の時みたいに嵌められてもやり返せばいいだけだ。俺は思考を切り替えて応募ボタンを押した。
募集は既に締め切られています
「徳仁ぉぉぉぉぉぉぉ」
俺は自分のミスを徳仁に擦り付ける。
「死んでも俺の邪魔をするのか!」
悔やんでも悔やみきれない後悔が俺を支配する。何故あそこで躊躇ってしまったのか………
俺は気を取り直して再び画面を下にスクロールしていく。しかしあれ程の良物件はなかなか見つからない。
「流石にそんな簡単に見つかる筈な………」
B級ゲート
実施日
8月10日 (木) 14時集合
集合場所
豊満市 高津駅前
編成
攻略班のみの16人編成
A級 1人
B級 14人
募集枠 1人
募集人数
1人
募集条件
なし
「徳仁ぉぉぉぉぉぉぉ」
俺は脳裏に繰り返し浮かび上がる徳仁の顔を霧散させながらも、指を画面にスライドさせた。応募ボタンをしっかりと捉えた俺の指は赤くなっていた。二度目の好機を逃すわけにはいかないのだ、指にだって力が入る。
参加を受理します
「おし!」
俺は表示された画面を見て一人ガッツポーズを取る。徳仁に打ち勝ち、見事Bゲート参加を勝ち取ったのだ。
しかも一回目と違いA級ハンターが編成されていることも大きい。恐らく何処かのギルドに所属している筈なので15人全員同ギルドで俺だけ別枠なのかもしれない。ギルド内で人数が確保できない場合はこういうことが起こりうるのだ。
場所もかなり近場なので余裕をもって準備できるだろう。俺は支度もそこそこに家を出た。




