どれだけ早く着いても自分以外の全員が揃っていると何か申し訳なく感じるアレは何
「昨日の午後5時頃、京都府端山市ホトトケ村でアブソルゲートが観測されました。世界で二件目のアブソルゲート発生について詳しく調査が行われているもようです。」
今朝からどこのニュース番組でもアブソルゲートの一件で持ち切りだ。だがどの報道番組でも詳細は未だ語られておらず、アブソルゲート発生という断片的な情報だけが出回っている状況だ。
そして村長の殺害も報道されていなかったので恐らく警察かハンター統括本部が独自に捜査しているか、抹消したかだ。
村長の関与が発覚すれば奴は死刑になっただろう。死刑になったから殺してもいいなんてことはないが俺としては見逃してほしいものだ。
だが証拠は残していない筈。人を殺したのはこれで二回目だが特に思うところはない。ゴミ同然の人間を掃除したにすぎない。そこに後悔や同情などは微塵も感じちゃいない。
だがそれによって俺が損をするのは気に食わない。まぁ、ばれたら牢屋にでも入ってやるさ
そしてもう一つ、恐らくハンター統括本部は不知火の存在を既に知っていたとしてもそれを国民に知らせはしないだろう。昔の事件を掘り返してわざわざS級ハンターの死亡を知らせるメリットがない。
日本の失踪中S級ハンターの死亡が確認されればそれだけで日本の軍事的影響力は各国と比較して格段に下落してしまう。
ハンター統括本部という最早政府同然の組織からすれば、不知火の死はマイナスでしかないのだ。このまま失踪ということにした方が都合がいいだろう。まぁ家族への配慮はあるだろうが
そうなるとそろそろ俺達のところに何かあってもいい頃なのだが
その時、玄関扉の投函口に何かが入れられる音がした。俺はテレビを消してから、玄関まで確認しに行く。
そして投函口には封筒が入っていた。そして中身を開けると一枚の手紙が同封されていた。
この度のアブソルゲート発生について
ハンター統括本部
東堂御門
先日のアブソルゲート攻略におきまして感謝申し上げます。
ついてはハンター統括本部より話し合いの場を設けさせて頂くこととなりました。
本日5日午後17時よりハンター統括本部までお越しください。
要するにゲート内で見たことを共有、又は口止めしたいのだろう、予想通りだ。俺達しか知らない情報も沢山あるし、それをペラベラと話されては困るということだ。
日時は今日か、なら一日中暇だ。俺は昨日のアブソルゲート後に二件のゲート参加予約を入れていた。だが知っての通り一件目のアブソルゲートで予定は大幅に狂い、結局二件とも参加することができなかった。
参加予約済みのゲートを無断で休むと罰金が課せられる決まりになっている。俺は渋々二件の罰金を払い家に帰った。
そしてこの教訓からダンジョン資源目的のゲート周回は控えることに決めた。一回でも今回のようなことがあるとそれだけで赤字になってしまうのだ。それほど罰金は重い。
時間もないので俺はパジャマ姿から着替えて家を出る。これで本部に着いたら即逮捕なんてことになったら笑えないな。
俺は徒歩で集合時間5分前に本部に着いた。今日も今日とて森羅万象の時辰儀に変化はない。これで本部に来るのは3度目だが、初回に感じた緊張感はもうない。
俺は集合場所だった応接間に着く。扉を開くと既に俺以外に空席はなかった。5分前に着いたのになんだか周りからの視線が痛い。
「綾小路さん、今日はありがとうございます。お席はそちらです」
入口正面に座る西園寺にそう促される。当たり前だが須藤と友瀬の姿もあった。だが見慣れない顔が殆どだ。
「では、これより先日のアブソルゲート発生についてハンター統括本部と黒薔薇ギルド、それと天断ギルドの3組による談議を始めさせて頂きます。司会進行は私西園寺とハンター統括本部東堂御門会長で務めさせていただきます。」
西園寺の進行で談議が始まった。この場に天断ギルドの人間もいるようだがそれが誰かは分からない。メディア出演を頑なに拒んでいる天断ギルドはあまりその素性が知られていないのだ。西園寺とその隣に座る東堂中心に話が進む。
「まず始めに私東堂の方から、今回のアブソルゲートについてのハンター統括本部の見解をお話しします。」
西園寺から東堂へ会話が繋がれてハンター統括本部の見解が語られた。ハンター統括本部はゲート内で発見された天断ギルドの防具に記載されたギルド登録番号から着用者の身元を割り出した。
その結果、身元が3年前の不知火千影失踪の時、彼女と共にホトトケ村のゲートに潜入した3人の内の1人だと判明した。
それによってボス部屋で発見された不知火千影らしき人物の頭部は不知火のものだと確定した。
そしてハンター統括本部も俺と同じように今回のゲートはアブソルゲートの上位互換だという認識を持ったようだ。
「これが我々が見いだした結論です。そして今回のアブソルゲート攻略隊の君達からも意見を聞きたいと思ってね。ゲート内の出来事を覚えている限り話してくれ」
まず手を挙げたのは須藤だった。
「俺達はボス部屋まで空飛ぶイビルフィッシュと門番みたいな戦士の二種類の悪魔としか戦わなかったっす」
「空飛ぶイビルフィッシュか…………これまた見たことのない悪魔だな」
西園寺がそう洩らす
「ボス部屋は円柱型の部屋で壁一面に本が敷き詰められていて書庫みたいでしたっす」
「それは西園寺君からの報告と同じだな」
「はい、私が見たのも同じ書斎のような部屋でした」
「ボスは魔術系だったか?」
西園寺が俺の方を見て聞いてきた。俺はこういう話し合いは苦手なんだ。しかも隠し事をしている今の俺はボロを出さないようにするので精一杯だ。
何かを感じ取ったのか隣に座る友瀬が代わりに答えてくれた。
「はい、魔術系のボスで、見た目は骸骨でした。相手に近づけなかったり、ケルベロスの召喚魔術を使ってきました。」
「召喚魔術ですか………ボスの等級はどの程度でしたか」
いずれ来るだろうと思っていた質問だ。不知火の存在がばれた時点で俺達が攻略できたことに疑問を持っている筈だ。
「以外と呆気なく終わってしまったのでB級といったところでしょうか」
そうなのだ。二人からすれば膠着状態が続いた末、突如骸骨が死んでいっただけなのだから手応えがないのも当然だ。しかしこれでは不知火が負けたことと矛盾してしまう。
俺は矛盾を少しでも埋めるため口を開く。
「今回は相手の骸骨が魔術系の悪魔、そして此方が近接二人の後衛1人という理想的な戦況でした。しかも本来魔術系のボスが引き連れている筈の仲間の悪魔達がいなかったことも手応えがなかった要因だと思います。それを加味するとA級ゲートに匹敵すると思われます」
不知火が負ける辻褄合わせにしては少し無理があるが、ゲートブレイクが起きていない限り最も説得力のある意見は攻略隊の意見なのだ。
「そうですか…………でも確かにA級ボスにいくらS級魔術師だとしても単独で挑んだ場合、勝ち目はないですね」
どうやら俺の力説は西園寺に効いたようだ。
「でも、俺達が戦っている時、人の頭部なんてなかったっすよ」
ここで須藤が疑問を洩らす。須藤が戦っていたのは幻術中なのであの骸骨が実は不知火の顔だったことなど知るよしもないのだ。しかも覚醒してから部屋を出るまで隅に転がっていた頭部に気が付くこともなかった。
「魔術系の悪魔では死んだ後に原型に戻る悪魔は珍しくありませんよ。恐らくあの骸骨は不知火さんの肉体に受肉していたのでしょう」
俺は空かさずフォローをいれる。どこからボロが出るかたまったもんじゃない。そして須藤は特に要注意人物だ。
「そうですね………あれが不知火千影であることは間違いないでしょう」
「分かりました、ありがとうございます。ではそろそろ話し合いを終わりにしましょうか。聞きたい情報は沢山頂けたので十分です。後、呉々も今回のアブソルゲートのことを口外しないようにお願いします。勿論不知火千影の存在も極秘です」
会長の一声で俺達はその場で解散となった。




