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曇天を泳ぐ魚

一度目のアブソルゲートの発生を58年前から8年前に訂正しました。大変失礼しました。

それが初めて観測されたのは今から8年前のある夏のことである。都内に発現したゲートは通行人の発見によりハンター統括本部へ知らされ、その日の内に編成隊が組まれた。


そのゲートはE級ゲートと判断された

C級ハンター3人

D級ハンター6人

E級ハンター5人

総勢14人のハンターが集結した。


その日も何事もなく攻略されるはずだったのだ。E級ゲートに対してC級ハンターが複数人編成されたこの隊が失敗するはずがなかった。


しかし攻略班がゲートに潜入したその時、異変が起きた。突如ゲート表面にラグが発生し、次第にブロックノイズが掛かったように狂いだした。


通りかかった通行人によってその異変はハンター統括本部に報告され、至急本部からハンターが駆けつけた。


そして駆けつけたハンター達はそれを目撃した。バチバチと音を立ててゲートが乱れていたのだ。そしてハンター達を更なる異常事態が襲う。


なんと再びゲートの等級を検査すると魔力値が爆発的に増加していたのだ。


魔力測定器はA級ゲートでの平均的な魔力量を示していた。前例の無い事態に現場は渾然としたが至急追加で攻略班が編成された。そしていざ潜入しようとしたその時、ゲートに入ることができなかったのだ。


ハンター統括本部はゲートブレイクの可能性を示唆し、ゲート前に総勢300人のハンターを集めた。五大ギルドや民間ハンターに援助を頼み、手が空いているハンター総出で悪魔が現れるその時を待った。


午後8時36分、ゲート潜入から約2時間後、京都の街に悪魔が降り立った。


五大ギルドから唯一援助に応えた天断ギルドの指揮の元、悪魔討伐が始まった。ボスは未確認の魔術系悪魔であった。


日没から4時間後、ゲートブレイク発生から約8時間の激闘の末見事ボスの撃破に成功した。そして破壊された首都の再建には1年の月日が必要とされた。


後の調査によってハンター統括本部の一回目の魔力測定に誤りや不具合は無かったことが判明した。そしてハンター統括本部よりゲートの魔力増加の原因についてこんな結論が発表された。





「悪魔による魔力量の偽装」





ハンター統括本部が発表した「ゲートの等級が意味を成さなくなった」という事実に日本中、いや世界中が震撼した。


後に日本とアメリカで共同チームが組まれ、この事実の真否を確かめたところ、ボスの死体解剖によってボスはダンジョン外に流れ出る魔力量の操作が可能であったことが判明した。


このゲートは潜入した瞬間死が確定することから後にアブソルゲートと呼ばれることとなった。




そして最初のアブソルゲート発生から8年の月日を経て、二度目のアブソルゲートが開かれた。まるでハンターを歓迎するかのように








俺はゲートに入った瞬間、異変に気が付いた。いや、否応にも気づかされたのだ。明らかに潜入前とは桁違いの魔力量。大気中に漂う魔力は無いに等しい。しかしある一点から放たれている魔力量は規格外だ。まるで、私を早く見つけてくれとでも言わんばかりの圧倒的覇気。


断言しよう、このゲートはE級ではない。少なく見積もってもA級はあるだろう。


「2人とも落ち着いて聞いてください。ここは恐らくアブソルゲートです」


俺は試しにゲートに片腕を突っ込んでみる。すると腕が一瞬で後方へ弾かれた。確定だ、ここはアブソルゲート内だ。


話には聞いたことがあったがまさか本当に存在するとは。俺が13歳の時に起きたアブソルゲート。


一度目のアブソルゲート発生から今日まで一度もアブソルゲートは観測されていない。だから俺は心のどこかで迷信にすぎないと思っていた。しかし実際に遭遇することになってしまうとは………………


「そうすか。なんとなくおかしいとは思ってましたけどアブソルゲートだとは………本当にあったんすね」


「やることは変わりません」


意外なことに思った以上に2人は落ち着いていた。見た感じ俺より年下のようだがその表情に焦りは感じられない。


そして目線の先には俺達の視界を埋め尽くす程の十字架。地面に刺さる十字架には人型の何かが括り付けられており、その数、千はくだらない。俺達はそのうちの1つに近づいてみる。


「これ………………人っすね」


触って感触を確かめる須藤がそう口にする。確かに悪魔特有の牙の発現や筋肉の肥大化などの異常が見られない。


しかしそれでは元からゲート内に人が居たことになってしまう。そんなことは有り得ないだろう。それとも別次元で人類が誕生したのか。未知というものは何時だって突然現れるものだ


死体は干からびたようにふやけており、両手を左右に伸ばして吊られている。辺りの十字架を何個か調べてみたがどれも同じであった。


そして皆防具を来たままの姿で死んでいる。どうやら生前はハンターだったようだ。


俺達は十字架の間を抜け、魔力を放つ一点に向かう。かれこれ20分ほど歩いたのに未だ悪魔との遭遇はない。





と、その時頭上より奇襲を受けた。間一髪で回避した俺達は天を仰ぐ。そしてそこに広がるのはまさしく地獄であった。


大量のボーンフィッシュが空中で泳いでいた。空一面を覆い尽くす程の魚骨が蠢いている光景は一種の錯覚を起こすほどであった。


ボーンフィッシュは比較的脆く打撃戦に極端に弱い。だがボーンフィッシュの厄介さは下級モンスターの中でも群を抜いている。奴らは個で行動せずに必ず群れを成してハンターを襲うのだ。


群れでハンターを食い尽くすその姿はまるでピラニアのよう。襲われたハンターは肉を全て食いちぎられ人骨だけが残る。


「ここは俺に任せてくださいっす」


『魔操鎚術乗降ラビットホロン』


須藤のハンターが天を穿つ。振り上げたハンマーの軌道に沿うように空を泳ぐボーフィッシュが更なる上空へと飛ばされる。そして振り上げた鎚を思い切り地面に叩きつける。


衝撃で地面が割れ、猛スピードでボーンフィッシュの群れが地面に衝突する。


乗降ラビットホロンはハンマーが描く軌道に沿って範囲内の悪魔に衝撃波を加える魔操術である。特に今回のような群れ相手には凄まじい効果を発揮する。


地面に叩きつけられたボーンフィッシュは骨が分裂し動かなくなった。流石B級ハンターだ、緊急事態でも臆すること無く武器を振るうことができる。


しかし何かがおかしい。

本来ボーンフィッシュは水中に生息しているのだ。それに変わって空中で活動するのはイビルフィッシュという悪魔だ。こいつはデカイ眼球が顔の正面に1つだけ付いているような見た目をしている。


俺は落ちたボーンフィッシュの骨格を拾い上げる。そして俺の疑惑は的中した。


「こいつらはボーンフィッシュじゃない。イビルフィッシュだ」


拾い上げた骨格は額に大きな穴がぽっかりと空いていた。その特徴は完全にイビルフィッシュのものだった。何度か遭遇したことがあるが今回のイビルフィッシュは動きが格段に遅くなっていた。


「確かにそうですね………でも何故ですかね」



俺の中では既に1つの仮説が立っていた。


十字架に括られた干からびたような死体

空気中に漂う魔力を殆ど感じないこと

肉の無いイビルフィッシュ


これらの事から導きだした仮説。



それはこのダンジョンのボスがエリア内の有機物、無機物問わず魔力を持つもの全てから魔力を吸い上げているということだ。




「桁違いのバケモンだな」

俺はこの先に待つ悪魔を思い、そう口にした

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