表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/94

悪魔以上の悪魔

「そろそろいいだろ、ちょっと見てこい」


徳仁は仲間の1人に扉の中を確認するように命令した。


E級とヒーラーの2人では10分が限界だろうと踏んで、多めに20分待つ予定だったが、途中から室内から戦闘音が聞こえなくなった。


恐らく中の二人が殺されたのだろう。ヒーラーがいなくても相手は悪魔一体だけ。まず俺達が敗けることはない。 このままボスを倒して大量のマテライト鉱石と2人の遺品を回収する計画だ。


ヒーラーは黒薔薇ギルドでは貴重な人材だが清水レベルならすぐに見つかるだろう。





「ぎゃっ」


そんなことを考えていた矢先、扉の方から短い悲鳴が聞こえた。


「どうした桜井…………………………………」


どれだけ待っても返事がない。


「まさか!お前らいくぞ!」


アイテムで閉じていたボス部屋の扉が開いた可能性が高い。ここら一帯の悪魔は全て狩り尽くしたはずだ。


俺達は急いで扉の方まで駆けるが、扉に近づく程にその足取りは重くなっていく。まるで身体が近付くことを拒否しているようだ。


曲がり角を曲がった時、柔らかい何かを踏んだ感触を靴裏に感じる


「んだよ!………………………え」


桜井の頭だった。

首から下はなく瞳孔が開いたまま此方を見ていた。一瞬にして背筋が凍るような恐怖が足から頭に駆けた。それでも声を絞り出す。


「………ぉまえら!近くにボスがいるぞ!扉をこじ開けやがった!」


男達の面がみるみる畏怖に染め上げられる。しかし徳仁だけは違った。数多の修羅場を潜ってきた奴にとってこんなのは問題の内に入らない。


戦力差は圧倒的。数で捻伏せれば何ら問題ない。先程の動揺は既になく、それどころかこの先に広がる宝の山を想像し、笑みが零れていた。




その時、洞窟の奥から足音が聞こえてくる。徳仁の指示で男達は隊列を組み、悪魔が姿を現すのを待つ。次第に足音は大きくなっていった。


「……………………………………は?」


徳仁な前に現れたのは悪魔ではなく、2人の人間だった。いや、悪魔以上の悪魔であることを見抜く術が徳仁に無かっただけだ。


「クククク…………ハハハハハハハハ」


堪えられなくなり徳仁は腹を押さえて笑いだす。閉じ込められて奇跡的に助かった筈なのに自ら死にに来てくれた。


徳仁には呆れや同情を通り越して最早面白くて仕方がなかった。


「悪い悪い、面白すぎてつい笑っちまったよ。どうやってボスを倒したかは知らんがわざわざそっちから来てくれるなんて手間が省けて助かるなぁ」


徳仁は俺達を嘲笑うように語り掛ける。最早本性を隠すつもりはないのか殺気を撒き散らしながら男達は武器を構える。


「俺達を裏切った理由は何だ。報酬か?」


「これから死ぬんだ、最後に教えてやるよ!その通りだ、お前を殺してお前の取り分と清水の取り分を頂く。この量のマテライト鉱石があれば当分楽して暮らせるぜ。あとお前が持ってるその収納アイテムも大事に使わせて貰おうか」


「それだけのために俺達を殺そうとしたのか」


「フフフ………ああ、それだけだ!それだけのためにお前達は死………………」


俺は徳仁の話を遮るように徳仁の真横に立つ男の首を魔力で撥ね飛ばす。一瞬時が止まったように誰一人動かない。 いや、動けない。


徳仁の頬に何かが付着したが指で拭き取って初めてそれが血であることを理解した。男達はここで初めて狩る側でなく狩られる側であることに気付いたようだ。


一人の男が千鳥足で出口へ駆け出すがここから生きて返すつもりは毛頭ない。魔力を身体に纏わせ、一瞬で逃げる男の眼前に現れる。雪陽花を抜く勢いそのままに両腕を切断する。


俺は叫び散らす男を足で踏みつけ残りの男達に告げる。


「お前達は俺を殺そうとしたんだ。勿論殺される覚悟はできてるんだろうな」


靴の裏で喚き散らす耳障りな男の頭をそのまま踏み潰す。頭蓋の陥没した音が洞窟内に響き、男の声で煩かった洞窟内は静寂に包まれた。


仲間二人が死んだことで殺る気になったようで、11人の男達は2人と9人に別れて清水と俺に迫る。


30体の屍を使えば一瞬で片付くが敢えて俺自身の手で殺す。清水にあれだけ言っておいて自分は何もしません、何てどの口が言えるだろうか。


そして何より俺を殺そうとした奴をみすみす譲るつもりはない。この憤りと胸の高鳴りはこいつらを己の手で葬ることでしか治めることができそうにない。


飛びかかってくる9人の中に徳仁の姿はない。どうやら清水のほうに行ったようだ。正面と左右から囲むように3人が俺を捉える。残りの6人は周りで俺の次の一手に備えて武器を構えていた。


俺は正面の男のがら空きの腹部に蹴りを叩き込み、怯んだところで顔面に頭突きを食らわす。勿論魔力を纏わせたので俺は無傷だが、奴の頭は鼻を中心に陥没していた。


左右の男達の双剣が俺に触れる前に両腕を左右へ伸ばし魔力で2人の動きを封じる。直接的な接触がないのに動きを封じられていることに驚いているようで、必死に手足を動かそうとする。


しかし他の6人がリカバリーに入る前に俺は2人を魔力で捻り上げる。肋骨の折れる音が連続で鳴り、二枚の絞り雑巾が地面に落ちた。その時、リカバリーに入ろうとした男達の足が止まる。


「わ、悪かったよ!今回の報酬は全部譲るから許してくれ!」


1人の男がそう言ったのを皮切りに6人全員が俺に土下座し始めた。


「興が削がれる、やめてくれ」


憤りを通り越して呆れてしまう。どうやらこいつらの中では命と端金は同値のようだ。


最早殺す価値すら無いんではないかと思えてきた。完全に興醒めした俺は一降りで6人全員を死地へ送る。


清水を殺すべく向かった残りの2人を追うと、未だ清水と交戦中だった。







「おい明日香、俺達の味方をするなら生かしてやるぜ。戦闘能力の無いお前には選ぶ権利はないんだよ」


徳仁が清水に交渉を持ちかける。しかし清水からの返事はなく代わりに清水が詠唱を始めた。それをNOと捉えた徳仁の蹴りが詠唱中だった清水を吹き飛ばす。


「桜井、とどめさせ」


徳仁が吹き飛ばされた清水にトドメを刺すように命じる。桜井の表情が歪み、辿々しい足取りで清水に迫り刃先を向ける。


『万象グログラン』


しかし、吹き飛ばされても尚清水は詠唱を続けていた。


万象グログラン

万物を象るこの魔術は対象の形を変形することができる。魔力を持つ物体には直接作用しないため使いどころは限られるが、天井の低いこの洞窟との相性は最高であった。


桜井がいる地面が突如波打ちだし、地面が一瞬にして隆起して桜井が天井と地面に挟まれ潰された。もう桜井は原型をとどめておらず、生々しい血が辺りを赤く染める。


「フフフ………想い人に殺されるって………面白すぎるだろ!なぁ清水!」


本日一番の笑みを浮かべる徳仁は清水の顔面に跳び膝蹴りを叩き込む。咄嗟にヒールを自分にかけ始めるが、続けざまに2発目の蹴りが蟀谷に命中する。


徳仁は女だろうと関係なく顔面に蹴りを入れる。何発も繰り出される蹴りはとうとう清水の意識を刈り取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ