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終わり無き夢に終わり無き死を

正直に言おう。最初リベリオンの能力を聞いた時、絶対に使うことはないだろうと思っていた。


理由は2つ

1つは使用できる場面が限定的すぎる。まず敵の攻撃が命中するときにこちらも接触していなければならないということだが、要するに互いに近距離の戦闘中なのだ。


遠距離の攻撃を弾けるならまだしも近距離なら如何様にも対処の方法はある。そんな中であえて自損の可能性があるリベリオンを使うことの必要性。そこが1つだ。


そして2つ目

それは余りに失敗時のリスクが高すぎることだ。成功時の威力2倍と失敗時の威力2倍は決して釣り合うものではない。


成功しても敵の残り体力頼り。失敗したら問答無用でほぼ確で死。


一ヶ月前の俺ならばこんなものを手にいれたら即刻売って換金していただろう。だが俺はこの短い期間に幾度となく死の縁を歩いてきた。


そのなかには本当に死んだやつがひとつあったくらいだ。


だから今は断言できる。




今使わなかったら確実に死ぬ。


今使ったら半々で死ぬ。



確率は体感的に半々だ!いける!いくぞ!


俺の右手の雪陽花がバベルの首もとに届く。そしてその瞬間、溝内の辺りから右腕にかけて凄まじい勢いで魔力が流れた。


胸から右腕にかけて巨大な生き物が俺の体内を駆け巡った感覚がした直後、右手の刃よりドス黒い魔力が爆ぜた。


雪陽花はバベルの首をしかと捉え、奴の巨体を左へと吹き飛ばす。


俺の身体も反動で右へ吹き飛び、衝撃で雪が宙を舞い悪魔の姿を隠す。


あの魔力量を倍にして返したんだ、最低致命傷くらいは負ってもらわないと困る。俺は視界が晴れるのを待った。





「カン……シャ…スルゾ………ニンゲン」


バベルの辿々しい声と共に奴の姿が朧気に透かされる。白銀の舞った世界が闇に呑まれた。奴の纏う魔力は更に濃くなり、重い足取りで歩いてくる。


「…………50%引いて更に50%引いたってところか」


どうやら俺はここ一番で25%を引き当ててしまったようだ。リベリオンは成功したが奴の体力を削り切れなかった。


雪陽花の白みがかっていた刀身が黒に戻り、肘宛の漆黒の照りが消えた。タイムリミットだ。


だが俺だってここで素直に自分の死を受け入れられるほど肝は座っちゃいない。俺は奴に詰めより、軽さだけが取り柄になった雪陽花を振り抜く。


魔力関与が無くなっただけで武器本体の使用が禁じられたわけではない。しかし物理威力と切れ味のバフが消えたのも地味に大きい。


バベルはリベリオン時に消失した槍をその手に再び顕現させた。俺の振りは全て弾かれる。こちらから攻めた筈なのにいつの間にか俺が守りに入らされていた。


「くそっ!」


一発一発が凄まじく重い。奴の突きをモロに腹に受けた俺は後方に吹き飛ばされる。次に俺が顔をあげると今にもその振りかぶられた腕から放たれようとしている槍が目に入る。




咄嗟に回避するが…………

その槍は俺の右腕を吹き飛ばした。ここまで四肢の喪失は何とか堪えてきたがそれもここまで。


「うぅぅがあぁぁぁあぁぁあ」


俺は赤子のように醜く喚き散らす。千切れた腕の断面を見て更に痛みが増す。呼吸が激しくなり目眩を起こし始める。


「ツヨキ…モノ…ヨ……ウツクシ…キ……サイゴヲ……クレヨウ……ゾ」


バベルは胸に左手を当てて軽くお辞儀をした


その時、一瞬にして空が大量の黒い魔法陣で埋め尽くされた。まるで最大級のおもてなしであるかのように俺の死を綺麗に飾らんとする。


魔方陣から槍が顕現し、全ての刃先が俺を捉える。俺は最後まで足掻こうと身体を振るわせるが何も起こらない。




そのとき、奴のお辞儀が終わる。


それと同時に全ての槍が俺目掛けて空を翔る。


止まった時の中で今、俺の時が止まろうとしていた。


バベル

間違いなく今まで戦った悪魔の中で圧倒的な強さを誇っていた。奴にとって俺は単なる暇潰し、娯楽の1つでしかなかった訳だが。


俺は瞬き1つせず、バベルを見据える。最後まで俺の心は折れていなかった。最後まで生を渇望した。














その時俺の視界が黒く染め上げられた。まるで底知れぬ闇に呑まれたように

















『不快な目覚めだ』


俺の身体に今まさしく触れようとしていた全ての槍がボロボロと霧消していく。意識は有るのに身体が動かせない。


『汝よ、今すぐ失せろ』


失われた右手が切断部から再生されていき、その腕はバベルにかざされる。


「ニン…ゲン…ヨ……オマエニ…オワリヲ」








『そうか』


奴にかざした右手に力が籠められる。その途端、バベルの巨体が独りでに上空へ昇りながら自分の首を両手で押さえ苦しみだした。


まるで念力でも使っているかのように俺の手にバベルの動きが重なる。


「ニン…ゲンノ……マリョ…ク…デハ…ナ………ガハァッ」



俺はその手を徐々に強く握りしめていく。俺は両目で奴をじっと睨み続ける。その顔には哀れみや憤怒の意が込められていた。






『ゴギッ』






その時、バベルの首が根本から真横に折れる。もがいていた手足はぶらんと垂れ下がり空中で伸びきる。


そこには先程まで身体から漲る魔力を纏いながら圧倒的威圧感を放つバベルの姿はなかった。


バベルの夢無き夢に終焉が告げられた


俺は意識の中で自分に起きたことをまじまじと見ていることしか出来なかったが、しかし分かったことがある。


どうやら病院で見た夢と同じ現象がリアルで起こっているようだ。俺に何者かが憑依して、敵を蹂躙する。その光景はまるであの時のまんまだ。





【2度目の呪縛反故を確認】



『邪魔だ』



【エラー発生…………】


【エラー発生…………】


【エラー発生…………】


【エラー発生…………】


【エラー発生…………】





【呪縛の強制施行を開始します】


突如、俺の脳内にそんな音声が流れてくると同時に俺の意識が身体に戻る。どうやら身体が俺の制限下に戻ったようだ。


全身に流れる血液は、手を握り締めたときの感触は、息をしているという事実全てが俺に生を実感させた。不意に涙が零れる。身体と心が完全に解離してしまったようだ。


全く損傷の無い身体は未だ死を実感していない。だが俺の心だけは迫り来る死を確かに感じていた。


「また助かったのか」


何者かの憑依で2度も命拾いした。しかし生きている喜びよりも得体の知れない現象に命を救われたという事実が何よりも恐ろしかった。


しかしもう受け身で真実を待つのはやめよう。自分の身体に起こっていることを理解しないとこの先取り返しの付かないことになる、そんな気がしたからだ。















【身体適正値の規定値突破を確認】


【只今より追憶のゲート零門が開かれます】





そしてその時は唐突に訪れた

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲート内での戦闘は迫力がありますね。 今回のバベルとの戦いも、興味深いものでした。 ハンターとして、今後どのような活躍をしていくのか楽しみです。 [一言] 更新頑張ってください!
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