反撃の狼煙
時空とは縦、横、高さの3次元に時間という1次元を加えた4次元空間のことを指す。
そしてこのパラレルゲートはいわば4次元目の寿命が尽きた時空のことを指す。要するに時間的寿命が尽きたということだ。
元々パラレルゲートは1つのゲートとして存在していた。他ダンジョンと繋がることは無く独自の生態系を持っていた。
星に寿命が存在しているように時間にも寿命が存在している。そして幾星霜の時を懸けて時間に終わりが来たとき、その空間は永遠の時間的停滞を迎える。
それが何らかのアクシデントにより他時空と接触した場合に生じる歪み。これがパラレルゲートの正体である。
時間の死を迎えた時空は再び他時空の時間により動き出す。だからパラレルゲート内は他時空の景色をそのままに写し出すのだ。
そして「4次元目の死」はそれだけ生命が進化する時間が経ったことを意味する。バベルは進化を繰り返してこの時空の覇者となったのだ。
しかし新たに繋がった時空は余りに脆く、貧弱であった。いつしか奴は何かに期待することをやめ、虚空へと沈んだ
譲り受けの張り付けただけの景色の中を孤独に生き続けた。
だが、今バベルは己の拍動の高鳴りを感じていた。目の前の脅威との戦闘に対して…………
底知れぬ愉悦を感じていた
『死季 春』
眼前まで迫った槍が纏う魔力で俺の頬に一筋の傷が走る。触れていないにも関わらず魔力そのものが乱雑に暴れる。
しかし次の瞬間、紅に染まる雪陽花が槍に触れる。刃先から瞬間的に解放された魔力が空気を巻き込み大爆発を起こす。
軌道が頭1つ分横にずれて、死が横を通り過ぎる。槍は地面に刺さり、刺点を中心に半径5メートルの地面が陥没した。
槍を纏う魔力が回りの地面を溶かしたのだ。
俺はその光景を見て驚愕する。
明らかに今までのバベルとは別物。魔力量は俺の第二段階の『死季 春』の爆破が押し負けてしまうほどだ。
『死季 春』は溜めた魔力を刃先の一点に凝縮させ、瞬間的に放出する魔操双術だ。
第一段階の冬が継続的な火力型であるのに対して、こちらは瞬間的な超火力型なのだ。その瞬間火力はこの武器随一である。
それが力負けするほどの魔力。
しかも本来攻撃に使う筈だった切り札を防御として使わされた。事実戦況は好転したどころか本日最悪。強化されたバベルに打つ手なしだ。
奴の体から内包しきれなくなった禍々しい魔力が溢れだしている。その時、俺にはバベルの顔が破顔したように見えた。
奴の体がコウモリの群れに変わる。その群れはバベルの型を崩し、一瞬で俺の背後を取る。
俺が振り向いたときには既にバベルが顕現され、槍が俺を舐めとるような滑らかな軌道で振るわれる。先ほどまでと格段にスピードが上がっている。
しかし俺は奴とやり合う中で槍の癖を見抜いていた。滑らかに動く軌道は的確に頭や胴の中心、避けにくい足元を狙っている。
弱点を的確に狙ってくる奴の槍の型は脅威的だ。しかしそれは逆に言えば弱点を晒すことで攻撃を誘発することが出来るということ。
俺は奴との距離を詰め、あからさまな大降りで胴を晒す。腹に力をこめて思い切り雪陽花を振るう。
目論み通り奴の膨大な魔力の籠った槍突きが俺の溝内目掛けて飛んできた。俺はここに来てふと時成さんの話を思い出した。
「あんちゃん、そいつの能力だが1つ覚えていて欲しいことがあんだ」
「なんですか?」
「魔力注入時にスキル、いわゆる魔操術の発現に成功してよ」
「そうなんですか!」
「あぁ、でもこれがまた曲者でよぉ。分類的には魔操混術といったところか。使いこなせるか分かんねぇが一応伝えてはおくぜ」
「はい、お願いします!」
魔操術にはそれぞれ盾なら魔操盾術、双剣なら魔操双術、といった分類が存在する。
しかし稀に防具と武器、武器と武器など複数の媒体を介して発動させる魔操術が存在する。これを魔操混術という。
これは優れた鍛冶職人でも作ることが難しい技術である。
俺はその魔操混術について細かく教えられた。
第一に使用できる状況が限られていること
第二に成功すれば致命的なダメージを与えられる可能性を秘めていること
第三に失敗すると死ぬ可能性があること
特大ロマン砲だがそれだけリスクを追うことになるという訳だ。上等だ
飛んできた槍にガードすること無く俺は覚悟を決めて叫ぶ
『魔操混術リベリオン』
使用後、一時的にリベリオン発動に使用した武器防具共に魔力関与が不可になる。
そして外部からの魔力衝撃と同時に魔力媒体に接触することで魔力衝撃を2倍にして接触した魔力媒体にそのまま流し込むことが出来る。尚、作用点は使用者の身体全体である。
発動後、魔力衝撃のみを受け魔力媒体への接触が確認されなかった場合、魔力衝撃を2倍にしてリベリオン使用者に流し込む。
要約すると、リベリオン使用後は武器の魔操術が使えなくなり、防具は魔力の抜けた防具となる。
そして攻撃された時、同時に相手に攻撃すると2倍カウンターになると。魔力衝撃ということは物理攻撃は弾けないというわけだ。尚どこに攻撃されてもタイミングを会わせれば問題ない。
そして問題はここ。タイミングをミスれば2倍の威力になって俺に攻撃する。
まさしく諸刃の剣。
俺は幾度となく奴の槍がコウモリで顕現するのを見てきた。そして奴の槍が魔力で形成されていることに気が付いたのだ。
俺は思い切り腕を振り下ろし、意識を集中させる。ここまで来たら最早自分との戦いだ。どれだけタイミングを合わせられるか。
これでミスれば俺は胴に大穴を開けられて死ぬ。決まったとしてもバベルが死ななかった場合、俺の武器と防具は大幅な能力ダウンをくらい手詰まり。
どっちにしろリベリオンを使うならばバベルを倒しきらないと俺は死ぬのだ。
リベリオン
その名は反逆者を意味する。
俺は今からこの理不尽な化け物に下克上を起こす
リベリオンは雪陽花と肘宛てを媒介にした魔操混術です。




