表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/94

森の悪戯者

ハンター歴3年と少し

ようやくC級ゲートまで漕ぎ着けた。


「今回攻略班の指揮を務めるハンター統括支部所属、灰崎御影です。今回のダンジョンは魔力の観測値がCゲートの標準値を越えたため、攻略班と回収班の二手に別れてのダンジョン制覇となります。」


恐らくBゲート程ではないが上位のCゲートという位置付けなのだろう。


灰崎といったか、確か入院中に室伏の部下として来た人だったか


16人の攻略班と10人の回収班、総勢26名の大所帯なパーティーが集結された。俺は時成さんに作って貰った肘宛を付けて腰には雪陽花を携えて挑む。


「久し振り傑!ほんと俺たち良く会うな!」


「なんでだろうな、ははは」


隣にはピッケルを肩に担ぎ、俺に語り掛ける宇佐美秀信。彼とはサークルセネピード戦以来の再開になるが以前と装備を一新させている。どうやら彼もこの期間に数多のダンジョンをこなしてきたのだろう。


「俺は回収班の指揮を執る藤原政光、C級だ。Cゲートの経験は何回もあるし回収班の経験もある。分からないことがあれば俺に聞いてくれ。」


俺たちは攻略班に続いてゲートを潜っていく。


太陽の光が虫食いを作るように地面を照らす。樹海エリアに飛ばされた俺たちはその幻想的な景色に圧倒された。


15mほどの大木が俺たちを囲うように生えていて風が葉を揺らす音だけが森の隅々まで広がっていく


ハンター統括支部にゲートの受諾をして貰いその上でハンターを集めてゲートに潜る。 これが上位ゲートや大規模ゲートの鉄則だ。


基本的にゲートに1人で潜ったりハンター統括支部への連絡無しに潜ることは禁止されている。そのため俺たちは今初めてゲート内を知ることとなった。


「樹海エリアですか、この地帯では木上を活動拠点としている悪魔が多いんです。常に注意して進みましょう。」


灰崎は攻略班にそう注意喚起をして道なりに進む。


「私たちも後に続きましょう。回収班の基本は絶対に攻略班から離れないことです。少し先に資源が見えても1人で行動するようなことはしないでください。」


そう。回収班として集められたハンターは今回の適正等級に達していないものばかりなのだ。


そりゃ、選択自由なら誰だって報酬が多くて悪魔との戦闘でも素材を獲得できる。さらにダンジョン踏破の功績を貰える攻略班を選ぶだろう。


いざというときは各々も悪魔との戦うが余程のことがない限り攻略班の影で素材を回収するのが俺たちの仕事だ。


「樹海エリアでは、鉱石だけでなく茸も貴重な資源だ。見つけたら回収してくれ」


ダンジョン内の主な資源として鉱石があげられる。各地域にそれぞれの種類の鉱石が存在しており武器防具を作る際には、魔核と共に使用されることが多い。


樹海エリアに生える茸は状態以上武器の研究に役立っている。また、魔毒付与効果の武器などは毒を有する悪魔の核を使う他、有魔毒のキノコの成分を刀身に染み込ませることでもその効果を発揮する。


また茸は悪魔のミネラルでもある。昆虫型や、獣型などの悪魔が好んで食べるので、茸の成長具合はその森の悪魔の分布を示していることが多い。


「傑!見てみてこれっっっ!え!?」


「良く見ろ秀!これは茸に擬態した悪魔だ」


悪魔名

ポルカポチーニ

大きさ20cmほどの小型悪魔で茸に擬態して人間や、食べに来た他種族の悪魔を攻撃する。奴は自分が食べられること前提の生態行動を取る。


補食されたポルカポチーニは胃袋へは流れず、気道付近で根を張る。そこで胞子を飛ばし毒性と麻痺性によって息絶えた相手の栄養を搾り取って繁殖を始める。


あまりに危険なので日本への持ち込みは禁止になっているが、毎年ポルカポチーニによる死亡者数は一定数いるのだ。どこからか市場に紛れてしまっているようだ。


「大丈夫ですか!?噛みついたりはしてきませんが皮膚に触れると被れたり最悪の場合麻痺が残ることもあるので気を付けてください!」


藤原は回りのハンターにも聞こえるようにポルカポチーニの危険性を話す。


「ありがとうございます………回収班っていっても楽ではないんですね」


「もちろんです!しかしエリア別の重要事項をしっかり覚えさえすれば攻略班よりかは命の危険が少ない仕事に変わりますよ!」


何事も経験だ!と藤原は秀に対してアドバイスをする。俺も今日此処に来てよかった気がする。確かに藤原の言っていることは正しい。


どれだけ予備知識を蓄えたところでそれは一度の経験には及ばないだろう。実際に現地に足を運び危機的状況や予測不能な事態に直面することで、次に同じことが起きた時、迷い無く動き出すことが出来る。


しかし文献や映像を見返すだけでは、いざという時それは迷いに繋がってしまうのだ。


その時、突如として風の音が止み、辺りが静寂に包まれた。太陽は雲によって遮られ、樹海に闇が落とされる


「総員、警戒体勢に入れ!囲まれた!」


俺ですら分かるその気配。上空から何者かが俺たちを見ている。しかもその気配は1つだけではないようで複数の視線が俺達の背中を刺す。


「キッキキキキキキャッキキキ」


その静寂は悪魔によって上げられた奇声で壊された。木の上から大量の猿型の悪魔が降りてくる。


「キキの群れだ!舌と爪に気を付けろ!回収班も自衛してくれ、数が多すぎる!」


キキ


ハンターからは森の悪戯者と言われている。大きくてくりっとした目を持っており素早く木上を移動する。奴らは仲間と連携を取って攻撃を仕掛けてくる。


その性格は非常に攻撃的で何が相手でも多対一に持っていく。戦闘自体を楽しんでいるような悪魔だ


対象をいたぶるように攻撃し、苦痛に歪む相手の顔を見たときに発せられる楽しそうな鳴き声よりその名が付けられた。


確認できる限りでも大将のような一際デカイ奴が一体と通常のキキが25匹。しかも木上から包囲されているようで戦況的にも不利な状態だ。


「絶対に1人になるな!最低でも二人ずつで奴の対処に当たれ!」


俺も腰から雪陽花を抜き、戦闘に備える。それぞれが2人組から3人組の塊を作りキキを迎え撃つ。


しかし何故か全てのキキが灰崎率いる3人組の所目掛けて一斉に攻撃を開始する。


「コイツら!」


瞬時に敵の大将各を判断してそいつを叩く。その後大将が死んで統率の取れなくなった残りを叩く。こいつらは異常に連携の取れた手付きで灰崎率いる三人組を狙う。


「灰崎さん!いまたすけま」


「待て!」


しかしそれすらもブラフ、幾度と無く他種族の悪魔と戦ってきたキキ達は相手が一番油断する瞬間を熟知していた。





それは自分にヘイトが向いていないと思っている時である。





一斉に灰崎組に飛び掛かった筈のキキ達の首が"ギュイン"と捻られて奴らの口から舌が伸びる。灰崎のストップの声も虚しく、それは静野という男の左頬を掠めた。


奴らは非常に発達した爪の他に異常なまでに長い舌を持っている。しかも奴らの唾液には酸のように物質を溶かす性質がある。


効果も絶大で先ほどのポルカポチーニのようにはいかない。量にも因るが皮膚は溶かされ、目に触れれば失明の恐れもある。


「うぁぁぁぁぁぁ」


「落ち着け!かすっただけだ!」


キキはヒットアンドアウェイでいくのか直ぐに木上に登ろうとする。しかしそれを許す灰崎ではなかった。


『重加操術 二門』


重力操作魔術

4大魔術の内の1つでもある重加操術はその難度故、扱える者は日本でも片手で数えられるほどである。しかし灰崎が使っているのは二門。


この重加操術が本領を発揮するのは三門からからであり、二門では魔力を持たない対象、つまり自然のオブジェクトにしか効果を発揮できないのだ。悪魔に効果がない時点でこれはまだ未完成の技だ


恐らく灰崎はB級ハンターでその上のA級以上でないと三門以上は難しいだろう。見るからに室伏なんかはA級の域に達していそうだが………


キキ達が足場にしていた木の枝が耐えられなくなったようで全てのキキ達が落ちてくる。



「これで地の利は消えたぜ」




此処で始めて人間と猿が対等な目線で睨み合う

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ