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灼熱の冬

どうやらこの道はあの火山に近付いているようだ。次第に地面の形状がゴツゴツし始め、大小様々な岩場となってきた。しかも所々にミニ火口のような吹き出し口がある。


「あづい…………」


吸い込む空気すら焼けるように暑い。防具を整える時間的かつ金銭的余裕がなかったとは言え、マグマのダンジョンに軽装できたのは間違いだった。


そんなことを考えながらも地面に注意しながら歩いていると、突然後ろのミニ火口からマグマが吹き荒れる。反射的に俺は振り向いた


「なっ…………………ビックリした」


「っ!!…………がはぁ!」


安心したのも束の間、なにもなかったはずの地面から足を掴まれたような感覚の直後、後頭部を地面へ叩きつけられた。


しかし足元には何もいない。


「ボボボボボボボボボボボボ」


又しても今度は進行方向の先のミニ火口からマグマが吹き出す。そして今回も反射的に振り返ってしまう。


「またかっ!」


今度はさっきと逆方向の地面に叩きつけられる。そしてようやくその正体に気づいた。そいつは常に俺の視界にいた。ただ認識できていなかったのだ。


俺は拳サイズの岩を拾い上げる。するとその周りの岩が芋づる式になって、大きな腕のような形状になっていた。


岩は持ち上げられる途端で隠すのを諦めたのか頭と腕の大きさの比率が1:8位の腕を俺の頭目掛けて振るう。


しかし俺はそれをかわして吹き荒れるマグマの中へ全力で投げた。


「ジュワッ」


それは何か声を上げることもなく溶かされて消えた。擬態する悪魔とはまたなんて厄介な奴を引いてしまったのだろうか



アーマードフォーチュレス


名前通り鉄壁の要塞である。岩を取り込むことで自身の腕や足を構築する。幼体は四肢が揃っていないが、成体になると四肢を持ち自らで歩行可能となる。強度はダイヤモンドを軽く凌駕するほどである。誰もアーマードフォーチュレスの笑った顔を見たことがなく、真顔の威圧感は凄まじい。








「ガゴゴガギギゴゴンギィギギギギ」


      「ゴギギギギゴガガン」

「ガガガ」


「ゴゴギガゴゴガギゴゴゴ」「ゴガガギン」


「ゴガガギギンゴガ」


「ギィギギギギゴゴンゴンゴン」


「ガーガガガガガガガッ」


      「ギョリギョリギョリギギギ」








「……………………………」


そのとき俺は後ろで何かが組上がる音を聞いた。とても歪でまるで岩同士がぶつかってひしめき合っているかのような



俺は恐る恐る後ろを振り返ると…………




俺をそのマグマの眼球で見つめる、それでいて広角がピクリとも上がっていない殺意満々のゴーレム達が俺を見ていた。







「………やぁ」


「………」


返答無し。返答代わりに強烈な右フックが返ってきた。すんでのところで仰け反るようにかわすが重心が後ろに残ってしまう。


その時、猛スピードで転がる巨体に吹き飛ばされた。


「がはぁ!…………………ちっ、9体か、多いな」


成体が3体、片腕型幼体が4体、球体型幼体が2体。球体の攻撃手段は転がりのようだ。


すぐさま体勢を整え、飛び込んできた2体の成体が同時にその巨腕を振り下ろす。避けれるが、敢えて腕でガードし、双剣の通り具合を確かめる。


「カカカカカ」


「やはり全然通らないか……………」


かなりの衝撃だがしっかりガードすれば問題ない。見た目通りの強度が俺の斬撃を阻む。恐らく正解はハンマーなどの打撃系武器での攻撃だ。そうなるとこの戦力差での長期戦は完全に悪手だ。


ジリジリと武器の耐久値が削られ、仲間も増え、囲まれて終わりだ。


「使うしかないか」


本当はボス戦まで取っておきたかったが致し方ない。此処で負ければ俺が死ぬだけでなくゲートブレイクを止めることも出来ない。


「魔操双術『死季 冬』」


魔操術発動により、雪陽花の白光る刀身が冷気を孕む。俺は前方の2体の成体に向けて駆け出し、奴らの振り下ろしを軌道ギリギリを沿うようにして避ける。


先ほどは通らなかった刃でそれぞれの喉元を切り裂く。岩の傷跡に霜が下り始め、傷口が"キリキリキリ"と軋む。



「バゴッ」



軋みは軋轢を生んだ。アーマードフォーチュレスのうなじから巨大な霜柱が形成され、頭が地面に落ちる。


霜は喉の継ぎ目の隙間から侵食し、その体積を急激に膨張させて霜柱となり、首を破壊したのだ。


崩れ落ちる成体達を振り返ること無く残りのアーマードフォーチュレスに接近する。ここで死角から2体の球体型幼体が挟み込むように俺に迫る。


しかし姿がなくてもその地面が削れるような喧しい爆音に気づかないわけがない。俺はその場で上に跳躍した。


真下では運動エネルギーの衝突が起こり、同族同士で互いの体を破壊し合った。


それぞれの欠けた部位に双剣を差し込むと一瞬にして霜が下りる。球体故に霜の侵食は均一に広がりを見せ、中心から爆ぜるに霜柱が現れる。


「残り5体」






そう………5体、9体中4体を倒したから残りは5体の筈だった。








「え…………それありかよ」


闘いの中で成長するのはどうやら俺だけではないようだ

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