大地よ吹き荒れろ
本来ならゲートから漏れ出る魔力は少しのもので、しかもゲート付近でないと感じることさえ出来ない。飢餓状態は体感した魔力量に関係するという仮説が間違っていたのか?
俺は周囲を見渡してみるが至って普通の廊下だ。人の気配もない。俺は近くのドアを片っ端から開いていく
「ここもないか………………………」
粗方見終わって後は一番奥の部屋だけ。見た感じ古い物置小屋のようで、その部屋の正面の蛍光灯だけ光が灯っておらず、此処へは普段誰も近付かないのだろう。
俺はドアを開ける
そして"それ"と目が合う
両者ともにその場で呆けてしまう。あまりに突然すぎる遭遇。
しかし俺の方が一足先に後ろの"それ"を見て事態を理解した。
「ゲートブレイクか!!」
貰ったばかりの双剣をまさかこんなに早く使うことになるとは思わなかった。
奴が構えを取るがもう遅い。俺の刃が奴の首元を切り裂く。"ドチュ"という音を立て、ゴブリンの頭が床に落ちた。
どうやらゲートブレイクにより外へ流れ出た魔力に俺の飢餓状態が反応したのだろう。仮説は間違っていなかったということだ。
俺は意を決してその熱風が吹き出しているゲートをくぐる。中は溶岩のようなダンジョンになっていて遠くに見える火山からマグマが流れ出ているのが見えた。
3年目だが他のE級ハンターよりもゲートの数はこなしてきたつもりだ。しかしこんな危険地帯に飛ばされたのは初めてだ。だから恐らくここはDゲート以上の難易度なんだろう。
「早速かよ…………………」
前方より現れたのは緑色のゴブリン5体とオーク2体。ゴブリン達はこん棒を握り、オークの片方は何も持っていないがもう片方はハンマーを持っている。
ゴブリンの4倍ほどの体躯を持つオークは歩みを止め、2体とも仁王立ちする。それが合図だったのか5体のゴブリンが一斉に飛びかかってくる。
横並びに来たのが幸いだった。俺は右端のゴブリンへと自ら距離を詰める。まさか自分からしかも自分の方に近付いてくるとは思わなかったようで、こん棒を振り下ろす手を上へ振り抜くように切断し、反対の手で喉元に刃を突き刺す。
慌てて左隣のゴブリンが俺の頭部目掛けてこん棒を振るうが、喉に突き刺さったままの剣を横に振り抜き刺さったままのゴブリンでガードする。
最初に振り抜いた剣を左隣の蟀谷に刺して、一撃で絶命させる。
残り3体のゴブリンが一斉に殴りかかってくるが、先ほどの教訓を得ること無く再び横並びで迫る。
どちらもゴブリンが突き刺さったままの双剣を放り、素手で両脇のゴブリンの頭を掴む。そして浮き上がった身体から強烈な膝蹴りを真ん中のゴブリンの顔面に叩き込む。
「お前らもなっ!」
前に乗り出した勢いのまま両手に掴んだままのゴブリンを地面に頭から叩きつける。地面が凹みゴブリンの手からこん棒がこぼれた。
双剣から2体のゴブリンを引き抜き、そこで黒かった刀身が白っぽくなっていることに気づく。
「この双剣の能力か」
段階的に変化するとは書いてあったが、やはり時間経過ではなく倒した敵の数に影響するか
どうやら子分がやられるまで待ってくれる優しい奴らのようだ。ようやく2体のオークが此方へ歩き出す。
先に飛び出してきたのは手ぶらの方で、奴の右の大振りが俺の頭の位置で空を切る。
懐に潜り込み腹部を横に切り裂く。しかしその表皮は固く傷は付いたものの奥まで届いた感触はない。だがオークに一瞬の硬直が入る
その隙に俺が奴の背後に回り込み、双剣刺そうとした時、視界の後ろからハンマー持ちのオークがその巨鎚を横に振りかぶる姿が見えた。
俺は咄嗟にしゃがんで回避した。しかし素手のオークは硬直が解けた直後、俺が回り込んだ背後に拳を振るう。
しかし又してもその拳は空を切り、代わりに横から振り抜かれた巨鎚が素手オークの顔面を叩く。余りに強い衝撃で素手オークの巨体が宙を舞う。
俺は振り向きざまに横からハンマーオークの右足の脛を踵で粉砕させる。
「フゥガァァァァァァァァ」
やはり悪魔も人間も弱点は同じようでハンマーオークが悲痛の叫びを上げる。
奴は膝から崩れ落ち、それでもまだ俺に牙を剥こうとする。奴の噛みつきを直上に回避し、俺の身体は重力を得てハンマーオークの後頭部へと帰ってくる。
先程までフガフガ言っていたがそれももう聞こえない。しかし素手オークはまだ微かに息があるようだ
「フッフガァァ……………………ガッ」
仰向けになり頑張って呼吸を整えようとしていた素手オークだったが、俺が介錯する。
「全部殺ったか……………」
その時、雪陽花の刀身に純白の光が灯る。恐らく第一段階が溜まったのだろう。しかしまだ序盤も序盤だ。終盤まで使わないで物理威力と切れ味を最大値まで持っていった時に使うのがベストだろう。
『グラ』
あぁ………力が漲るのを感じる。今までの疲れが癒され、内側が満たされる。
「先を急ぐか」
俺は戦地を後に道なりに進む。




