117 君も俺の
しばらくセインくんをからかって遊び、彼もいつもの調子を取り戻してきた頃、ようやく俺はセインくん解放した。ついさっきセインくんの心臓を突き刺したばかりの短剣──魔力貯蔵庫も兼ねる扇を開き、口元を隠す。
「もう大丈夫?」
「え?」
「忘れているかもしれないけど、俺は君の心臓を刺したんだからね。怒りたいなら付き合ってあげるけど、その前に痛みが残っていたり枷が付けられている感覚はない?」
「あ……はい、綺麗に治癒してくださいましたので大丈夫です。エリオットに蹴られたところはまだ痛みますが」
それは仕方ない。自業自得でしかないし、俺が治癒するのは刺したところだけだと決めていたから、自然に治癒するまでせいぜい苦しんでほしい。
「不快感が無くなったので、枷もしっかり壊されていると思います。それと、僕はナギサ様に怒りをぶつけられる立場ではありませんよ。裏切りは……時と場合にもよりますが、基本は大罪ですからね。そうでなくとも友人を裏切りました。許してほしいとは絶対に言いません。むしろ怒られるべきは僕の方です」
罰だってまだ受けていません、と続けるセインくん。
たしかに許してはいない。わざわざ聞いたりはしないけれど、ランの件にも関わっていたかもしれないし。だけど僅かに残る怒りの感情は自分の中に閉じ込めておくよ。だって……
「俺は身内を傷付けたくない。どうしても罰するしかない時もあるけどさ、今回は君が黒幕側だったことを知る人の方が少ない。わざわざ公にする必要もない。──セインくん、君も俺の大切な人なんだよ。もう簡単に切り捨てられる存在じゃない。君は巻き込まれた上に家族を人質に取られ、友人を裏切り、敵に手を貸し……でも全部、セインくんの性格からして心を痛めることしかしてないんじゃない? 裏切ったことについて、その罪悪感が充分な罰だよ」
さっきはセインくんの珍しい顔を見させてもらったし? 心身共に傷は付けられているし? これ以上俺がすることもできることもない。
「君さえよければ、今まで通り友人でいられたらなって思うんだけど」
「……僕なんかを傍において、また何かされるとは思わないのですか?」
「別に。俺は大切な人さえ守れたら、その他の人にはそんなに興味がないから。あーでも、そうだったね。セインくんってヘタレなんだった」
「……はい?」
「イレーナちゃんとの関係でうじうじ悩んでたし、結構自己完結しちゃうところもあるみたいだし」
良くも悪くも、ね。短所と長所は表裏一体だから。俺のようにもっと図太くなればいいのに。
「俺がセインくんに怒ればいい?」
「え……あ、は、はい……?」
混乱してるようだけど、それはまあ無視する。しっかり怒ってあげよ。怒る……より、叱るという表現の方が正しいかもしれないけど。
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