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■17話 もうすぐ夏休み

 期末試験が終わった。教室には、もうすぐ夏休みを迎える生徒たちの浮き立った空気が流れている。

 昼休みになると、アルビはいつものようにシーエたちの教室へやって来た。

 シーエとエムジの席にはヒデオも集まっており、四人は自然と輪になって他愛もない話を始める。


 試験勉強から解放されたせいだろう。今日のアルビは終始上機嫌で、弾んだ声が教室の賑わいに溶け込んでいた。




アルビ

「夏休み、何かしようよ!」


シーエ

「漠然としてるなー」


アルビ

「しっかりはしゃげる最後の夏休みになるかもしれないんだよ!? 何かしたいよ!」


エムジ

「最後ってどういうことだ? 夏休みは三年になってもあるだろ?」


アルビ

「いやだって来年は受験前でしょ!? 塾にも通ってるだろうし、夏期講習があるから遊べないと思うんだよ」




 アルビ達の通う学校はそこそこ偏差値も高く家庭も裕福。そのため大体の生徒が大学受験にむかう。アルビもまだ進路はしっかりと決めてはいないが、恐らく来年はそうなるのだろう。




シーエ

「へー?」




 シーエもエムジも上の空。これだから勉強出来る組は……!

 そういえばシーエはこの学校に塾とか行かないで入ったんだったとアルビは思い返す。今回も独学で行きたい大学行くんだろうか。さすがに次は、シーエがいるからって理由だけで進路を決めることは出来ない。




アルビ

「ヒデオはどうするのさ? 今年の夏休み」


ヒデオ

「僕はアルビちゃんに賛成だよー! 確かに来年は忙しくなるだろうし、そうでなくても僕はイベント事大好きだからねー」


エムジ

「イベント自体には俺も賛成だ」


シーエ

「ウチもウチも!」




 二人とも、受験に関してピンと来てなかっただけの様で、夏休みに何かしたいというアルビの意見には賛成の様だ。




シーエ

「ただ何するのさ? ウチは皆と一緒に居られれば何してても楽しいからアイデアとか全然無いよ?」


アルビ

「まーたそういう恥ずかしいセリフを堂々と言う」


シーエ

「いつ別れが来るかもしれないんだ。好意は全力で伝えておいた方が良い」


ヒデオ

「不吉な事言わないでよシーエちゃん」


シーエ

「事実じゃん? 今日交通事故に会うかもしれないよ?」


アルビ

「嫌すぎる。あーもう! これから夏休みなんだから楽しい事考えよう!」


ヒデオ

「賛成賛成! シーエちゃんのリアリストな話はナッシングで!」


シーエ

「えー?」




 シーエの思考はいつだって論理的で現実的だ。夏休みを楽しむ事と同時に、事故にあう可能性も並行処理する。




エムジ

「で、結局どうするんだ? 実現可能かどうかは置いておいて、やりたい事だけでも出していかないと話終わらないぜ?」


シーエ

「それはそう。ちなみにエムジは何か希望ある?」


エムジ

「俺もシーエと同じで、お前らといられれば何でもいいかな。あ、やっぱシーエはいらない」


シーエ

「なんでだよ!? 入れろよウチも!!」


ヒデオ

「はいはい! 僕は皆と旅行行きたいです!!」


アルビ

「旅行! 良いね! 皆のお金と空いてる日次第だけど……」


ヒデオ

「混浴宿が良いです!」


アルビ

「却下!」


ヒデオ

「えー?」


ミカド

「旅行とな!?」




 背後から声が聞こえ、四人は振り返る。そこには学食から帰ってきたミカドとササキの姿が。

 二人は話に合流する。と言うかミカドが突撃してくる。




アルビ

「あ、そうなんだよミカドさん」


アルビ

(まだボク、この子との距離感解らないんだよな……。知り合って間もないし。いつも昼休みに席譲ってくれてるし、悪い子じゃないんだろうけど)




 若干ぎこちなくなるアルビを見て、ササキはミカドを制した。




ササキ

「ミカドさん? いきなり話に割り込んではひんしゅくを買いますよ? 彼らは友人で居る期間が私達よりも長い。そんなご友人同士の旅行を気まずくさせてはいけません」


ミカド

「そ、そうじゃな……。済まぬ。許してくれ」


エムジ

「いやいや、別に気にしてねぇよ。少なくとも俺は。人数が多い方が盛り上がると思うしな」


シーエ

「ウチもー」




 シーエ達がお迎えOK状態になってる中、ヒデオがアルビに小声で耳打ちをした。




ヒデオ

「何かしたい。って発案したのはアルビちゃんだから、気まずかったら断っても良いよ。言いづらかったら僕の方から言ってあげるから遠慮しないでね」


アルビ

「ありがとうヒデオ。ううん、大丈夫。ちょっとビックリしただけ。友達は多くしておいたほうが楽しいもんね。ボクも浅い友達は多いけど深い友達は少ないから、この機にミカドさん達と仲良くなりたいな」




 これはアルビの嘘偽りのない本心だ。しかしそれとは別に、もう一つ思う所がアルビにはあった。




アルビ

(ミカドさんとエムジ、仲良さそう。ミカドさん、日本出身じゃないって聞くし、顔が凄く綺麗……。うー、エムジに新しい友達が出来ただけだって言うのに、この気持ちは良くないよー。バニ様もこないだの授業で依存や束縛はダメだって言ってたじゃん!)




 シーエ達のクラスとは別の日に、バニ様の授業はアルビ達のクラスでも行われた。グループディスカッションはヒデオと一緒になり、ヒデオの理想のパートナー像「エッチな人!」という意見で荒れに荒れた。




エムジ

「しかし人数が増えてくるとなると、全員での旅行は厳しくなるか……。アルビもまだミカド達と打ち解け切ってないし、旅行は俺ら四人で行って、それとは別に六人で集まるのとかはどうだ?」


ミカド

「ワラワと遊んでくれるのか!? 夏休みにわざわざ!?」


シーエ

「友人に飢えすぎでしょミカド」


アルビ

「いや何かそれも悪いなー」


ササキ

「いえいえ悪くないですよ。思い出は沢山あった方が良いでしょう? 旅行は元々皆さん四人が話していた事です。私達も参加するのは気が引けます」


ヒデオ

「気を遣わせちゃってごめんね? でも有難うササキくん! じゃあ旅行の件は後で話すとして、今折角六人いるんだから六人で出来る事考えようか」


アルビ

「ごめんね?」


ミカド

「良いのじゃ良いのじゃ! 遊んでくれるだけでワラワは嬉しいのじゃ!」


アルビ

(う……心が痛い……ミカドさん凄く良い子だ……)


ササキ

「私から提案ですが、この学校の近くで毎年夏休みに夏祭りが開催されてます。花火が上がるとかそういう大掛かりなイベントでは無いですが、ひと夏の思い出としては悪くないでしょう」


アルビ

「夏祭り……! 確かに楽しそう! 浴衣着たい!」


ヒデオ

「アルビちゃんの浴衣姿!?」




 アルビはヒデオに目つぶしをする。




ヒデオ

「ぎゃー!」


シーエ

「ヒデオ、ウチも浴衣着てくるからそれでも見ておけ」


ヒデオ

「えー?」


シーエ

「何でだよ!?」


エムジ

「目が腐る」


シーエ

「何で!!!?」


ミカド

「友達と……夏祭り……」


ササキ

「良かったですね、ミカドさん」


エムジ

「夏祭りの日程なら既に出てるし、参加できない奴はいないか?」




 一同、首を横に振る。




エムジ

「なら決定だな。旅行と違って金もかからないし、これは良いイベントになりそうだ」


ヒデオ

「つか夏祭りくらいなら受験真っただ中でも1日くらい行っても良いよね? 来年」


アルビ

「確かに。息抜きは必要だね。ありがとうササキくん!」


ササキ

「どういたしまして」


シーエ

「そういえばアルビは性欲が薄い男が好みだったよな? ササキもそのタイプだがアルビ的にどうなのよ?」


アルビ

「ちょっとシーエ! 何言ってるの!?」




 またシーエがそういう方向の話題を持ってくる。だいたいいつもシーエとヒデオがいるとこうなると、アルビは心の中でため息をついた。

 しかしそのため息もササキの発言で吹き飛ばされる。




ササキ

「いや私は性欲が無いわけではありませんよ?」


ミカド

「え!!??」




 アルビ以上にミカドが驚いている。そりゃ1年一緒にいたからね……




ササキ

「何を驚いているのですか。私の好みは可愛らしい人だと言ったじゃないですか」


ミカド

「そ、それはもっと純粋な心なのかと……」


ササキ

「純粋ですよ。純粋に、可愛らしい人に興奮するんですよ。私は」


シーエ

「おっとー!? ヤベーぞ。コイツめっちゃヤベーぞ!? え、ウチは? ウチには興奮しない??」


ササキ

「全く」


シーエ

「何でだー!!」


ヒデオ

「アルビちゃんはどう?」


アルビ

「何でヒデオはボクに振った!?」


ササキ

「そうですね。……とても、可愛らしいです」


アルビ

「うわー! やめろー!!」


ササキ

「安心して下さい。私は友人が嫌がることはしません」


アルビ

「ボクは性的な目で見られる事自体が嫌なんだ!!」


ササキ

「あ、そうでしたか。これはすみません。今後このような話題はアルビさんの前ではしない様にします」




 あ、ササキくん、かなり良い人だなとアルビは思う。




アルビ

「え、あ、そんな真剣に謝られると……。こっちこそごめんね? っていうか今のはヒデオが悪いよね??」


ヒデオ

「ごめーん」


アルビ

「反省してないだろ……」


ヒデオ

「でも僕は性的な目でアルビちゃんを見ていくよ!」


アルビ

「お前は! 本当に! 死ね!!」


シーエ

「ウチを生物のメスとして見てくれるオスを求むー」


ヒデオ

「いやその求め方じゃいくらスケベな僕でも引いちゃうからね」


シーエ

「ちくしょー!!」




 本日のシーエは割と振り回されていて、見てて楽しい。そう言えばいつだか、ヒデオとエムジにおぶさられてた時も楽しかったな。

 アルビは思う、シーエは理屈っぽくて話を聞かせる側に回ることが多いから、何か凄い強そうに感じてたけど、意外とそうでも無いのかもしれない。

 皆からいじられつつ、それでも笑顔のシーエが同い年の女子として新鮮に映った。




エムジ

「なぁコイツ、本当に多くの男と関係を持ってるのか?」


シーエ

「ひどいなエムジ! 事実は覆らないぞ!?」


ヒデオ

「顔だけは良いからね」


シーエ

「だけって何だ!?」


ミカド

「夏祭り……楽しみなのじゃ! 有難うな、アルビ殿」


アルビ

「ううん、ボクも楽しみ!」




 ともかく、夏休みの予定が一つ決まった。旅行の件はおいおいだが、賑やかで楽しい夏になりそうだとアルビは感じていた。

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