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■14話 虫と恋

 昼休みの教室。アルビはいつも通りシーエ達の教室に足を運んでいた。本日はヒデオは来てない様で、三人での昼食が始まる。

 と、何やらシーエがいつもの弁当とは別に、小さな容器を持って来ているのをアルビは見た。



アルビ

「ん? シーエ、何それ?」


シーエ

「お? あぁこれか。昼めし後のおやつだな。中身は……じゃーん!」


エムジ

「あ?」


アルビ

「ひぃ!」




 机に広げられたのは様々な虫の死体。これが……おやつ!? アルビは戦慄しながらシーエを見る。




シーエ

「特別追加メニュー! 虫! 具体的にはコオロギ、ミルワーム、セミの幼虫。全部ちゃんとamazonで買った食用のヤツ」


アルビ

「そんなの売ってるの!?」


シーエ

「売ってる」


アルビ

「なんでそんな物買うかな……しかも学校に持ってくるかな」


エムジ

「へえ、面白い。味はどうなんだ?」


アルビ

「エムジ!?」




 ドン引きするアルビに対し、エムジは興味津々といった具合だ。




シーエ

「結構美味いぞ。特にセミは香ばしくて癖になる」




 シーエは躊躇なくセミを口に放り込む。カリッと音を立てて咀嚼する姿を見て、アルビはさらに顔をしかめた。




アルビ

「うわぁ……キモい……。どうしてそんなもの食べられるの?」


シーエ

「キモいのが良いんじゃないか! 虫が生きてる時の姿を想像して食べる。木にとまって鳴いてる姿、集団で蠢く姿、交尾する姿、産卵する姿……それらを想像しながら口内で磨り潰し、胃に流し込む。最高にキモくて興奮するだろ?」


アルビ

「ひぃぃぃぃ! やめて想像させないで! 食欲無くなる! あーもうそうだったよ、シーエは気持ち悪いのが好きだったんだよ!」


シーエ

「それにタンパク質も豊富だし、地球の資源問題解決にも繋がるとか言われてるぞ。良い事だらけだ」


エムジ

「……俺も一つ貰っていいか?」


アルビ

「エムジまで!?」




 エムジは少し迷った後、ミルワームを口に運ぶ。よりによって一番見た目がキモいそれに行くのか、とアルビは思ったが、エムジの感想はどうもアルビとは違う。




エムジ

「あー、意外と普通の味だな。美味い」


シーエ

「だろ? こいつらは虫食初心者にもオススメ出来る美味さだ。エムジは虫食に興味あるのか?」


エムジ

「気持ち悪いとは思うが……性欲よりは受け入れやすい。生物の観察自体は好きだから、食べてみるのも経験として有りだと思った。俺は俺で、世の中の気持ち悪いと思う現象に慣れて行きたいと思ってるし、虫食は有りだな」


シーエ

「おー、乗り気で嬉しいよ。じゃあ今度別の美味い虫も持ってくるよ。あ、不味い虫もいるから自分で買う場合は要注意な」


エムジ

「どんなのが不味いんだ?」


シーエ

「ウチが食べた中だと、ゲンゴロウとカブトムシは不味かったな。ゲンゴロウはひたすら苦く、カブトムシは土臭かった。まぁ不味い虫を食べるのもウチ的にはキモさ倍増で好きだったけどあんまオススメはしないな」


エムジ

「そうなのか。ただそれはそれで一度は食べてみたいな。経験として」


シーエ

「お、その気持ちは解る。経験は大事だよな。じゃあ今度持ってきてやるよ」


エムジ

「是非頼む。金は払う」


シーエ

「良いよ良いよ、ウチが好きで食べさせたいだけだから。まぁエムジがお金払いたくて仕方がないってのならその意思を尊重するけど、大した額でも無い。おやつもらう感覚でもらっておいてくれ」


エムジ

「なら言葉に甘えさせてもらおうかな」


シーエ

「うむうむ。せっかくだから今日持って来た他の虫、コウロギとセミも食べていけ」


エムジ

「あぁ、是非頂く」




 二人がキャッキャと盛り上がる様子を、アルビは黙って見つめていた。胸の奥が少しざわつく。




アルビ

(……なんでボク、こんなにモヤモヤしてるんだろう。エムジがシーエと楽しそうに話してるだけなのに……)




 自分が付いていけない話題で友達同士が盛り上がってるのが悔しいのか……。いや違う。この気持ちには、少し前から前兆があった。

 アルビは自分の気持ちに気づき、顔を赤らめる。


 そして、意を決して虫に手を伸ばす。シーエに追いつくために。




アルビ

「ボクも……食べてみる!」




 ……が、セミの幼虫を口に近づけた瞬間、アルビは顔をしかめて手を止めた。




アルビ

「やっぱキモいー!! 無理、無理無理!」


シーエ

「キモいから良いのにー」


エムジ

「まぁ、無理に食べるもんでも無ぇだろ」


アルビ

(……ちくしょー)

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