勇者視点
■商人少女、私、魔王じゃありません?
― 勇者側視点
勇者は、最近まともに飯を食べていない。
理由は単純だ。
「金がない」
いや、正確には──
“世界の物価が壊れている”
■勇者パーティ・臨時会議
戦士「また宿代上がってるぞ」
僧侶「昨日の三倍です」
魔法使い「インフレってレベルじゃない」
勇者「……原因は?」
沈黙。
そして、誰かが小さく言った。
「例の“商人少女”です」
勇者は頭を抱える。
「魔王じゃないんだよな……?」
「違います」
「でも世界壊れてない?」
「壊れてます」
即答。
■被害報告書
ギルドから届いた資料はこうだった。
食料:地域ごとに価格が最適化されすぎて逆に輸送不能
武器:原価崩壊で鍛冶屋が廃業寸前
ポーション:大量流通で“回復が安すぎる社会”へ移行
勇者「これ戦う意味ある?」
僧侶「ありませんね」
■勇者の誤解
勇者は最初、こう思っていた。
「裏で魔王が経済戦争してるんだろう」
だが調査結果は違った。
魔王軍の報告書:
「あの商人、こっちの補給線も最適化してきます」
魔族の軍師:
「敵ではない。インフラだ」
勇者「インフラ?」
■初接触記録
勇者はついに商人少女と遭遇する。
場所:中立市場
勇者「君が……その……噂の?」
少女「えっと、ただの商人です」
勇者(嘘だろ)
横にいる影獣(仲魔)と魔狼が普通に立っている。
勇者パーティ全員、警戒MAX。
■勇者の交渉
勇者「なぜ市場をここまで変えた?」
少女「効率的だからです」
勇者「効率?」
少女「必要な人に必要な物が届くようにしただけです」
勇者「それで国が崩れかけてるんだが」
少女「……え?」
本気で知らなかった顔。
僧侶が呟く。
「この人、善意で世界動かしてるタイプだ……」
魔法使い「一番厄介なやつ」
■勇者の気づき
勇者は理解する。
この少女は敵ではない。
魔王でもない。
だが──
“戦争より強い影響力を持つ存在”
勇者「どうすればいいと思う?」
戦士「倒す?」
僧侶「無理です」
魔法使い「経済で負けてます」
勇者「じゃあ何だよ」
僧侶、静かに言う。
「共存です」
■勇者の決断
勇者は商人少女に言う。
「頼む、少しだけ速度を落としてくれ」
少女「速度?」
勇者「世界が追いついてない」
少女「……追いつくまで待つべきでは?」
勇者「その間に文明が変わる」
少女「もう変わってます」
勇者「だよな」
■勇者の胃が死ぬ日
帰り道。
勇者「俺たち何と戦ってるんだ?」
戦士「魔王じゃないです」
僧侶「商人です」
魔法使い「経済です」
勇者「一番嫌なやつだ」
ギルド掲示板更新:
【勇者パーティ評価】 “魔王討伐可能” “ただし商人少女は別枠”
勇者は空を見上げる。
「魔王より怖いのって、いるんだな……」
そして遠くで──
帳簿をめくる少女の姿が、世界のルールを書き換えていた。




