魔王視点
■商人少女、私、魔王じゃありません?
― 魔王側視点
魔王は、最近よく笑うようになった。
理由は単純だ。
「人間界が勝手に壊れていく」
だが、その原因は自分ではない。
■魔王城・軍議室
四天王の一人が報告する。
「勇者、動きが鈍いです」
魔王「疲れているのか?」
「いえ、“資金不足”です」
沈黙。
魔王「……戦ってる途中で?」
「はい」
別の四天王が続ける。
「補給線が機能していません」
「なぜだ」
「市場が……最適化されています」
魔王「誰がだ」
全員、同時に言った。
「商人少女です」
魔王は一瞬、言葉を失った。
■初耳の“敵”
魔王「勇者ではないのか?」
軍師「違います」
魔王「天界か?」
軍師「関与していますが、主導ではありません」
魔王「では魔族内部の裏切りか?」
軍師「それも違います」
魔王「では誰だ」
軍師、静かに答える。
「商人です」
魔王「……商人?」
その瞬間、魔王の中の“戦争の常識”が少し壊れた。
■戦略会議(混乱)
四天王A「物資価格が下がりすぎて兵站が逆に崩壊しています」
四天王B「敵軍の食料コストがゼロに近いです」
四天王C「こちらの攻撃より早く市場が修復されます」
魔王「意味が分からん」
軍師「経済です」
魔王「戦争だぞ」
軍師「経済です」
魔王「……」
■魔王の疑問
魔王は立ち上がる。
「その商人は何を望んでいる?」
軍師は答えに詰まる。
「……利益、です」
魔王「それだけか?」
「はい」
魔王「侵略でも支配でもなく?」
「結果としてそうなっているだけです」
魔王、頭を抱える。
「一番厄介なやつではないか」
■魔王の誤解修正
魔王はようやく理解する。
勇者は“戦う者”。
天界は“管理する者”。
そして──
商人少女は
“世界の流れを変えてしまう者”
魔王「倒せるのか?」
軍師、即答。
「無理です」
魔王「なぜだ」
軍師「倒す理由が存在しません」
魔王「存在しない?」
軍師「はい。敵対していないため」
■魔王の結論
魔王は静かに座り直す。
そして一言。
「……スカウトするか」
四天王「え?」
魔王「我が軍に入れれば戦争が終わる」
軍師「それはつまり世界征服です」
魔王「最初からそうだ」
■接触計画
魔王は決断する。
「商人少女と交渉する」
四天王「武力は?」
魔王「いらん」
軍師「護衛は?」
魔王「必要ない」
四天王「危険では?」
魔王、少し考えて言う。
「むしろ我々が危険だ」
■魔王の本音
魔王はふと呟く。
「勇者より怖い存在がいるとはな」
軍師「はい」
魔王「天界より厄介だ」
軍師「はい」
魔王「戦争を終わらせるのではなく、“意味を変える”」
軍師「はい」
魔王「……それはもう魔王ではないな」
軍師「では何ですか」
魔王、即答する。
「商人だ」
■エピローグ
魔王軍公式記録:
【警戒対象】 勇者:戦略級 天界:監視級 商人少女:分類不能(経済災害)
魔王は窓の外を見る。
「この世界、もう戦争じゃないのかもしれんな」
そして遠くで──
帳簿をめくる少女の影が、すべての勢力の“共通認識”になりつつあった。




