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48・東部戦線異常あり!

 1944(昭和19)年12月、ヴォロネジ


「敵だ!」


 ドイツ軍がカフカス戦線に集中してめっきり守勢に転じた東部戦線であったが、真冬だと言うのに東からやって来る軍勢に声を張り上げたソ連兵。


「おい待て、アレ、友軍じゃないのか?戦車を見てみろ」


 別の兵士がそう声を出す。


「いや、あの旗は何だ?黄と青の二色旗だぞ」


 前線でそう言い合う所へと射撃命令が届く。


「撃て!撃つんだ!」


 めっきり戦闘が減ったが、その分補給も減って毎日の食事も粗末になるばかりな彼らは、そこで思考を放棄して引き金を引いた。


「クソ、弾かれた!」


 見るからにT34な戦車だが、その防御力は彼らが教えられたソレより高い。

 自慢の対戦車砲弾が弾かれてしまった。


「撃て!撃てる奴は撃て!」


 単調な命令に従って撃ち続けていると上空から飛翔体が落下して辺りで爆発していく。


 堪らず伏せている間に敵がみるみる近づき、戦車の後に隠れていたのだろう装甲車が機関銃を乱射しながら陣地へと突っ込み、歩兵を吐き出していく。


「クソ!死んでたまるか!」


 兵士はがむしゃらに撃ちまくるが敵は怯むどころかこちらを認めて突撃をはじめている。


「あそこだ!あそこに敵が居るぞ、ぶち殺せ!長年の恨みを晴らせ!!」


 その声を理解した兵士はより必死に乱射した。


 敵も撃ち返して来るが、死にたくない兵士は何も考えず撃ち返す。


 そのうち周りが倒され、どんどん敵が迫り、しっかり顔が見える様になると、服装こそドイツ軍だが、顔は違った。


 噂に聞いた占領地民の軍勢であろうと察し


「この裏切り者が!」


 兵士はそう叫ぶ。

 

「裏切り者だと?そう思うなら餓死した兄貴を返しやがれ!!」


 相手にも言葉が通じ、会話も成立した。


「ナターシャの仇!」


 別の敵がそう叫んで手榴弾を投げてきた。


 ハッと伏せたが、手榴弾は塹壕へと転がり込んで兵士の意識を永遠に奪うのだった。



 この日、停滞していたヴォロネジ周辺で攻勢に出たのはドイツ軍でも、ルーマニア軍でも、ハンガリー軍でもなかった。

 イタリア軍は既にアルジェリアに這い寄るアメリカ軍を排除する為に帰って久しく、スペイン義勇軍はレニングラード周辺に固まっている。


 ヒトラーは日本に倣う様に占領地域に独立運動を組織し、ウクライナでは自発的に参加者が増え、戦線を任せる程に膨れ上がっていた。


 そんな状況になっていたが、ドイツ国内での生産はもはや手いっぱいであった。


 そこでドイツは同盟各国の戦車開発を促していく、そうして生まれた戦車が、ハンガリーの44Mタシュであったり、チェコにおいて欧州共通戦車として開発されたレオパルトである。

 その両方ともに共通する点はドイツ本国に先駆けてSla16エンジンを採用した事だった。


 Sla16は1942(昭和17)年夏にスエズ運河を制圧した後、日本から天然ゴムと共にもたらされた技術資料に在ったエンジンを見たヒトラーが開発を命じたものである。

 その概要は直列四気筒をX型に配した16気筒エンジンであり、排気量は36.6ℓになる。このエンジンは当時日本が運用していた戦車用エンジン同様に空冷式であり、二基の大型ファンによる冷却気によってシリンダーを冷やすようになっていた。


 当時、戦車用の新型エンジンを模索していたHWAもその考えに賛同し、オーストリアにあるSGP社へと開発を依頼し、空冷エンジンの経験があるポルシェと協力して開発を開始した。

 折しもイギリスが停戦に応じた事によって希少金属の使用制限が大幅に緩和され、それら金属を用いる事で開発は加速、1943(昭和18)年10月には単気筒試験機が作動し、1944(昭和19)年8月にはSla16の耐久試験を成功裏に終了している。

 当初計画ではエンジン単体出力750馬力、ファン駆動などのロスを含めた軸出力は685馬力とされていたが、希少金属の制限が緩和されたことで過給圧を上げる事の不安が減少し、計画より120馬力の出力向上を達成することが出来た。

 こうして量産型Sla16は単体出力870馬力、軸出力805馬力を誇る事になる。


 このエンジンを搭載できるようにハンガリーにおいて開発された44Mタシュ重戦車はパンターと同じKwK4475ミリ戦車砲を装備している。


 シュコダにおいてパンターとは別に同盟国での生産を前提にした欧州共通戦車が開発されたが、これはパンターと争ったダイムラー製VK30.01(D)をベースに開発され、砲塔はシュマルトゥルムなので、一見してT34に似通って見える。さらにドイツ製戦車が重量化していくのに対し、同盟国での量産性を考慮して40t程度と言う重量制限も課せられていた。


 こうして完成した欧州共通戦車レオパルトだったが、1944(昭和19)年時点で生産できる工場が存在しなかった。


 その事実に怒りを覚えたヒトラーは自ら陣頭指揮を執ってハリコフトラクター工場を再建し、一大生産拠点とすることを宣言した。


 こうして、1944(昭和19)年12月1日に独立を宣言したウクライナ共和国は誕生と共にレオパルトによって編成された機甲師団を手に、ソ連への復讐を開始する事となったのである。

 ウクライナはドン川を国境線とする事を宣言し、マンシュタインの作戦計画をもとに攻勢作戦を開始していた。


 同じ日に独立を宣言したリトアニアも600年前の領土の一部とレオパルトを手にソ連への復讐を始める事になる。


 ただ、この2カ国とロシア解放軍から独立国家となった自由ロシア共和国の関係は良いとは言えず、以後東欧における火種となるのだが、それこそがヒトラーの狙いであったとも言われている。

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― 新着の感想 ―
東方生存圏に独立国が出来ることはナチスの理論的に大丈夫なのでしょうか?
欧州ロシアはもうちょい分裂して欲しいなぁ。 北からポモール、ノヴゴロド、モスコビア、コサッキア。ついでに各民族共和国も独立させれば丁度いいかな。
ウクライナの恨みは根深そう。 餓死者が出るほど小麦輸出させたから、食い物の恨みですね。 アメリカもやばいがソ連もやばい。 原爆が開発されれば逆転できるけど、この世界だとどうなるのか、続きが楽しみです…
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