4話人攫い前編
「皆さんに集まってもらったのは、いま付近の村や街で起きている誘拐事件の話をする為です」
なんだかんだあって今、俺たちはひとつの机を囲むように座りルイの話に耳を傾けている。
ルイの話によると、付近の村や街で頻繁に起きている老若男女関係なしの誘拐事件の話だ。特に若い女と子供が狙われているらしく、たった半年で50人近くが行方不明となっている。
国家警備隊がその事件に当たっていたようだが手に負えないらしく、俺たち正教会に泣きついてきたって訳だ。
それに国民たちの非難が凄く早急に解決して欲しいとの事。
国家と正教会はほぼ同等の立場であるが為に仲がとても悪く対立しあっていたが、俺たちと同じ魔力を持つ者は居ないため解決は困難だから嫌いな俺たちにでも頼るって感じか。
「なんであんなヤツらの為に俺たちが動かないといけねーんだよ。勝手にくたばれくそ貴族共」
「ギル、そう言わないの。それでどうするつもり?私たちはガイアに従う」
横に座っているギルの手を握りしめながら俺はガイアを見る。
誰よりも貴族、王族を嫌っているギルは乗り気では無いだろう。昔何かあったみたいだ。ゲームにもそれはほんの少ししか触れられなかったから詳しいことを分からないし、かと言ってギルが話すまでは聞くつもりも無い。
「悔しいが、今回私は動くことが出来ません。なのでギルレイラ、お姉様、おふたりにお任せてしたいと思っております。お姉様にはお願いをしておりますがギルレイラ、貴方には命令しています。この意味、お分かりですよね?」
「チッ、、、わーったよ!!尻拭いしてくればいいんだろ!!!!おら、そら!行くぞ!!」
にっこり、と擬音が付きそうなくらい笑顔のガイアには誰も何も言えない。何言っても無駄だしな。
不機嫌そうなギルに手を掴まれ、俺とギルはそのまま正教会から出ることになった。
一瞬だけ見えた皆のあの顔。無表情なくせにその瞳だけは怒りに燃え上がっていたあの顔。絶対夢に出てくるわこれ。
「なぁ、そら。おまえなんでいつも無表情なんだ?」
周りはとても綺麗な草原が広がり、動物たちが静かに餌をむしゃむしゃして食べてる平和な光景が広がる中、俺とギルはゆっくりと歩いていた。
その時はふとギルに問い掛けられた質問。
「私は闇魔力が強い。だから悲しくても笑いたくても表情は動かない。だから常に無表情なのだよ」
「あ?じゃーあれか、逆にアイツは光が強いから常にクソみたいにわらってるってことか?」
「そうだね。あの子は表情豊かで常に笑顔を浮かべている。だからみんなあの子について行くのだろう。誰も無表情で何考えてるか分からない私のところには来たくないさ」
そう言うと珍しく静かになるギル。不思議に思い隣にいるギルを見ると、何故か自分の事かのようにとても辛そうな表情をしていた。
口が悪く、いつもそこら中に敵を作って、恨まれて、憎まれて、光魔力を所有しているのにも関わらず扱いは闇魔力を所有しているルカと同様。
けどそれは表向きな性格。本来のギルは心優しく、泣き虫で臆病な小さい子供のような人間だ。この性格はゲームと同じ、、という事で良いのであろうか。
「でも私は幸せものだよ」
「幸せもの?ゴミ共は全員お前を神聖なる聖女様として讃えているが誰もお前自身を見ようとしない。無表情で無口、まるで人形のようなお前しか求めていないゴミがいるのになんで幸せなんだ?」
ゴミってあれか?信徒のことを言ってるのか?それとも村人たちのことを言っているのか?
先程までの表情から一変して、ギルの今の表情はもうそのゴミとやらに軽蔑しきってる顔つきだ。たまにルイがルカにするような表情と似ている。
「私には可愛い双子の弟がいるし、自分を慕って何処までもついてきてくれるルカがいる。お姉さんのように接してくれるアリア、少し過保護だけど優しく見守ってくれるルイ。そして誰よりも私の気持ちの表現を汲み取って、私よりも傷つき心配してくれる心優しいギル。だから私は幸せものなんだよ」
俺が言うとギルは黙り込んでしまった。
先程とは打って変わって無言で歩く俺たち。すると1つの村にたどり着いた。今回あった誘拐事件の被害者がいちばん多いとされている村。
俺はギルと顔を見合せ活気のない寂れた村へと入っていく。




