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明けましておめでとうございます!
本年も皆様に笑顔を届けられるよう頑張りますのでよろしくお願いしまああああす!!
「もう……こんなになって。時間を稼ぐだけって言ったじゃないですか」
つい文句を言いながらも、わたしはディーを抱き抱えて無事を確認する。
外傷はほとんど見当たらないけれど、息も絶え絶えな様子からして相当無茶をしたのだろう。
……もう少し早く駆けつけられたら良かったですね。
「そこまで本気出してないわよ……コホッ。あと言っとくけど、攻撃は範囲1発しか喰らってないから」
「その分なら命に別状はないですね。エコー君も大丈夫ですか?」
「はい! くそぅ、悔しいなあ」
地面に倒れたままのエコー君からも元気な声が聞こえてくる。
「いいんですよ。倒しちゃったら、わたしの出番が無くなっちゃいますからね」
2人が足止めして、わたしがとどめを刺す。
今回はそういうチームプレーなんですから。
「それ、報奨の魔剣でしょ。借りてきたの?」
「いえ、交渉して前払いしてもらいました。もうわたし達しか残っていないみたいですし」
「大丈夫なの? わかっちゃいたけど回復魔法も使うわよ、あいつ」
「問題ありません。でも……そうですね。ディー、良かったらそのダガーを貸してくれませんか?」
「別にワタシのじゃないからいいけど、どうするの」
「それはですね――」
言い終わる前に背後から殺気が迫る。
咄嗟に【ブラックディード】を振るって、わたしはディーへと突き出された槍を受け流した。
「へえ、よく止めたね」
「お陰さまで吹っ切れました」
「そう、じゃあもう1回地獄に落ちようか。お仲間が目の前で死ぬところを眺めながらさ」
「本当に陰湿ですね、あなた」
――プレイア。
この魔物がいなければ、わたしは心の声にも、自分のしていることもわからなかった。
その点には感謝しているけれど、やはり彼女のやったことは許せない。
「魔剣――動きは早くても形が変わるだけで総面積も強度も変わらないんでしょ? 私の装甲まで破れるとは思えない。ましてや非力な貴女に」
「そうですね。……思えば《セルフヒール》もそうです。全ての魔法が使えるあなたからすれば、わたしもこのスキルも、取るに足らない存在なのかもしれません」
「わかってるじゃない、弱小が思い上がるな。世界の蟫は大人しく消えて」
「……それでも」
わたしは、空いたほうの手でディーから受け取ったダガーの刃を握り締めた。
鋭利な刃はあっさりと皮膚を通過し毒を充満させていくけれど、人間には効かないのか体調の変化は感じない。
次に、魔剣の刃を湾曲させ、同じように自身へと突き刺す。
後は心で思えばいい。
魔剣と毒との、“同化”を。
「弱いものが……ずっと弱いままでいるとは思わないで!」
スキルの力で同時に同化しておけるのは、10個まで。
新しく取り込んでしまうと、古い順から消滅していく。
最初に同化した大切な形見が、ヴィクト君の剣とカーナの杖が、わたしの中から消えていく。
(ありがとう……今までわたしを守ってくれて)
手放したら今度こそ2人がいなくなってしまうような気がして、わたしは迷っていた。
でも、新しい友達が教えてくれた。
2人の心はずっと、わたしの中で一緒に生きていると。
「……!?」
やがて目の前で血に染まっていく【ブラックディード】。
命を吸って樹木の枝のように分裂した刃身が、火花を散らしてプレイアの槍を弾く。
「は!?」
動揺するプレイアに追撃、本体に刃を振るう。
魔剣から分裂した刃が樹木のように展開して魔物へ向かい、その体を切り裂いた。
「なっ……どうして……!」
超級スキルによる再生効果から魔物の傷はすぐに修復するものの、目の前で起きた異様な事態にプレイアは大きく身を引いた。
「わたしが取り込んだ剣もわたしの一部。たとえ魔剣の容量を超えて刃が崩壊しても、その都度再生します」
無限に回復する生命力のもと、わたしの意思で形状を自在に変え、相手を捉える血の刃。
それがわたしと同化した魔剣の力。
「離れたつもりですか、それで」
わたしはもう片方の手にも魔剣を創出すると、刃身を伸ばし2本の得物を鞭のようにしならせてプレイアへと波状攻撃を仕掛けた。
相手がどれだけ俊敏性を増していても、思い描いた通りに形を変える魔剣は分裂と増殖を繰り返して頭上、側面、背後から不規則な攻撃を繰り出して追い詰める。
やがて魔物が刃に触れると、支援魔法の強化などお構いなしにその表面を削り取った。
「……ぐっ! 斬ってもないのに何で私の体に傷がつけられるの!? 防御は圧倒的にこちらが上なのに!」
「よく見てください。刃に鋸状の細かい歯を配置しています。それを高速回転させてあなたの外皮を挽いているんです」
強度で勝っていても魔剣の硬度は並みの鉄材より上。
刃こぼれしても再生し、瞬間的に数百回という回転を繰り返して何度でも相手を削り取る。少しでも接触すると火花が散るのはそのためだ。
「そんな緻密なことまでできるの……!? ああああ、忌々しい……! 《聖者ノ神鎚》!」
それでもプレイアは攻めの姿勢を崩さずに魔術を発動、上空からまだ満足に動けない2人を目がけて光の柱を落下させる。
「2人には指一本触れさせない。“血の樹海”」
けれど、エコー君達の回りにはすでに結界を張り巡らせている。
枝分かれした刃の1つを石畳の下に潜り込ませて増殖。瞬く間に芽吹いた天を突く血の大樹が魔力の波動を受け止める。
「この――!!」
プレイアは諦めずに翼を広げて地を滑空すると、わたしの傍を素通りして直接2人を仕留めにかかった。
その姿はある種の執念まで感じるけれど、慌てずにわたしは剣を床に突き立てる。
「“血の処女”」
「今度こそもらっ――ぐべっ!?」
魔物の進路上にある石畳が膨れ上がって刃で構成された血の壁がせり上がる。
突然のことに速度を殺すこともできず、プレイアは顔面から衝突して動きを止めた。
手を緩めず追撃。
反対側にも壁を出現させて挟み込み、前と後ろから圧し潰す。さらに壁の表面には魔剣と同じく小さな刃をびっしり配備した。
「うぐっ……! ま、まさか……やめっ!」
わたしが念じると刃が壁の表面を上から下へ高速回転。
間に挟まれた魔物の体を強引にこそぎ落とす。
ガリガリガリガリガリガリガリガリ――
「あぎゃあああああああああああ!!??」
肉片と血しぶきの代わりに火の粉をまき散らしながら悲鳴を上げるプレイア。
再生効果のお陰か体はそれ以上縮まなかったものの、体を削り卸されて銀色の破片が雪のように宙を舞った。
「ふ……ざけるなあああああああああ!!」
するとプレイアの翼が展開して強引に壁を押し広げた。
前も後ろもずたずたになりながらどうにか抜け出すと、すっかり形の変わった顔に憎悪を浮かべてわたしを凝視した。
「キサマぁ、どこまで不敬を……!」
「……仮にあなたを造ったのが神様でも、あなた自身は敬えないですよ」
わたしは彼女が回復してしまうのを承知で攻撃の手を止める。
神の代弁者を名乗る彼女に、どうしても言いたいことがあった。
「人を生んだのがあなたの崇める神様だとしても、わたし達は今を精一杯生きているんです。わたし達が先へ進むことの何がいけないんですか」
「おまえらの幸福をおまえらが決めるな……そんなもの望む権利を与えた覚えはない。あの御方のために生きてあの御方のために死ぬことを、なぜ幸福と思えない!」
「幸せの形は人の数だけあります。人の生き死にを決められるほど偉いなら、どこがどう偉いのか説明してください」
「うるさい! 取るに足らない存在が知恵を働かせるな!」
プレイアの翼が輝いて光の奔流が更なる魔力を生む。
続いて羽が2枚抜け落ちたかと思うと地面に刺さり、2対の白く透き通る剣となった。
「聖剣【ファムファタール】。これだけは使いたくなかったけど――ごほっ」
「…………」
「この剣で斬られたものは、げほっ、斬ったものの魔力をそのまま……ごふっ! 内部への損傷へと変換――げほごほっ……! かはっ! な、何……?」
ごぽり、とプレイアがその口から大量の血液を吐き出す。
外見は人間離れしているけれど、彼女も赤い血が流れているらしい。
「げほっ……おえ……っ! 何これ……! 《世界に祝福あれ》の再生効果は続いているのに……! こ、この症状は…………あ――?」
異変に気付いたプレイアがこちらを見る。
「回復が間に合わないくらい毒が行き届いたみたいですね。……わたしの攻撃は毒も含んでいます」
ディーの毒を取り込んだのはそのためだ。
攻撃があたった時も、“血の処女”で体をずたずたに削った時も、わたしは同時に大量の毒を注入していた。
「もう終わりにしましょう、プレイア」




