11話 連携を阻止しよう
遅くなりました
1章 魔物生活
11話 連携を阻止しよう
日も高くなったころ、トレインが好きだった果実を頬張りながら日向ぼっこをしているヴェンデッタ。
「もぐもぐ。んー。気持ちいいなー。ぽかぽかで溶けそうだぁ」
ぼけーっとしているヴェンデッタが急に険しい顔になる。
「なんだ?5つ?まとまって。大きめの魔力。冒険者?前の連中の捜索かな?・・・・・・ありえる」
とりあえず相手の観察をしようとヴェンデッタは早速動くことにした。
森を歩く一組の集団。5人組の冒険者だ。身のこなしは軽く、所持する武器も使い込まれており、練達している印象を受ける。
短く刈り込んだ茶髪で戦鎚をもつ巨体の男、マルトーがだるそうに周囲へ声をかける。
「なぁ。腹減ったわ。飯にしようぜ」
「ああ。もう日が高いな。昼にするか」
答えたのは、天然パーマの茶髪で盾と短槍をもつ男、ビリーが全員へ昼食の準備を指示出し始めた。
「結構森の奥へ来たよね。今回の目標はいるのかな」
「私達。それ探すのが仕事」
「そうなんだけどねー。冒険者とその相手。どっちも見つかるのかなーって」
「それができる。金マイナス冒険者の私達」
「ぬふふ。そうだね。がんばろ」
昼食の準備をしながら、金髪ショートカットの斥候装備で細目の女性、ルイーズと黒髪前髪ぱっつんボブカットの剣士で美少女、ジェニファーが会話しだす。美少女のほうはなぜか独特の話し方をしている。
「仲良きことはいいことですな」
側頭部を刈り上げ頭頂部を後ろに撫で付けた恰幅のよい大剣の男、ギリアーは、魔術で鍋に水を出しながらパーティーの様子を眺めている。
「しかし、今回の相手側は正体が全く見えません。他国の侵入者、魔物、同業者、殺人鬼。どれも可能性があります」
「だよねー。相手がわからないのは怖いよね」
「見逃さねぇようにだけ注意してりゃあ。なんとかなるだろ」
「敵は斬る。いつもどおり」
「そうだ。いつもどおりやるだけだ。慎重に索敵をすればいい」
「ですな。ささ。スープもできましたし、食べましょう」
ギリアーの声がけでみんなが鍋に直接コップを突っ込んで掬い、前日に作った戻した干し肉を挟んだパンを食べつつ雑談をし始める。
その様子を木の上からヘッドセットを装着し集音マイクを向け、双眼鏡を覗き込んで見聞きしている者、ヴェンデッタがうんざりした顔でいた。
「うへー。完全に狙いは僕ですか。冒険者に手を出したからにはあるだろうなと思っていたけど。あの魔力量。金クラスかな」
感じた相手の魔力量から全員がオーガ並みだろうことは推測できる。強さも同じと仮定したら、5人が連携した場合に強さはそれ以上だろう。1人ずつなら負ける気は全くない。だから連携だけは阻止しないと討伐されてしまうだろうと予測している。
「うし。今回の作戦の基本は連携阻止かな。さぁ何を使ってどうやってやろうか」
ヴェンデッタは作戦を考えつつ見張りを続けた。とはいえ、大した作戦は浮かんでこなかったが。
昼食を終えた冒険者達は、森の探索を続けていた。周囲を慎重に確認しつつ、たまに襲ってくる魔物を軽くあしらう。軽くあしらうだけの実力があるのだ。
注目すべきは推測どおり連携だ。特にジェニファーという女性の剣は転生の才能がある。戦闘中の絶妙なここでというタイミングでところで繰り出されており、素晴らしい連携になっていた。あれなら、上級が群れていても討伐できるだろう。
そんな調査の日々が2日ほど続いた明け方近く。彼らは森の中で野宿をしており、交代で就寝する。魔物が蠢く森の中なので当然の警戒である。
そして、朝日が昇る1時間ほど前に彼らに急変が襲い掛かる。
「ん?んん?」
「んだよ、ジェニファー」
夜中に交代し明け方まで起きているジェニファーは周囲の異変を感じ取った。マルトーはジェニファーの周囲を伺う様子から察して同様に警戒をし始める。
ジェニファーが感じたもの。それは霧だ。朝霧にしていは濃過ぎるのだ。しかも、霧に微量だが魔力を感じていた。
「みんな!起きろ!」
ジェニファーが声をかけ、マルトーはより警戒を深める。
「霧濃過ぎ。魔術の可能性大。敵の可能性大」
「ああ。周りが見えねぇ。そこのテントもギリギリだな」
「私警戒する。マルトー。テントを」
「わかった。俺がみんなを直接起こすから」
カンッ
マルトーがテントへ向かいながら話しているとジェニファーが突然剣を振り抜いた。するとマルトーの傍で甲高い音がして、矢が落ちた。マルトーは即座に身を屈めて周囲を見る。ジェニファーが剣で矢を切り落としたようだ。
「くそっ!ジェニファー、どっからだ!」
「わからない。音で判断した」
「おまえと当番で助かったわ」
「感謝ならあと。みんな起こす」
「わかってるよ!」
マルトーがテントに入ろうとしたときに3人が飛び出してくる。ビリーが状況を確認する。
「すまん!どうした!」
「敵。攻撃あった」
「全員!円陣を組んで周囲警戒!適時対応!」
「「「「了解!」」」」
全員が気合を入れて、返事を返すとすばやく円陣を組む。そして、周囲への警戒を強めた時。
「うおっ!?」
マルトーが声を上げて、円陣から飛び出し転んでいた。他のメンバーがバッとマルトーの背後へ目を向けるとそこには黒い人型の何かが片足を上げていた。マルトーの尻を蹴り上げて転がしたのがわかる。
「くっそっ!なんだっ!?ぐえっ!」
黒い人型は駆け出すとマルトーの頭を踏んで霧の中へ消えていった。
「いってぇーな!」
すぐさま体を起こすマルトーだが、既に霧の中へ入って姿はなかったため苛立つ。
「ちくしょう!あいつ、次はぶっ殺してやる!」
「落ち着いてください。マルトー。全員で対処しましょう」
「わかってるよぼっ!ぐぅぅぅ」
マルトーが苛立ちつつも前に集中しようとしたときに石が投げられ、顔に命中する。
「でてきやがれっ!ぶった斬ってやる!」
「マルトーを怒らすのが目的。全員でマルトーフォローするべき」
「マルトー中心にするぞ。いいな」
「くそったれめ」
マルトーを中心に円陣を組みなおしてしばらくするとまたマルトーの背後に黒い人型が現れて、尻を蹴っ飛ばす。次はマルトーの目の前にルイーズがいて、下半身に抱きつく形になってしまう。正確にいえば、マルトーの顔がルイーズのお尻に突撃した形だ。
案の定、ルイーズの悲鳴と共に繰り出されたビンタを受けるマルトー。黒い人影のほうは蹴った直後には、円陣を飛び越えて霧の中に消えてしまう。
二度目も蹴られたマルトーもバカではないので、異常に背後へ警戒することになる。頬に作った赤い手形が少しは冷静にしたのかもしれない。
周りの仲間もより警戒しようとするがマルトーが背後に集中すると外から矢や石が飛んでくる。外側に気が向き出すとマルトーの背後に黒い人影が突然現れだす。
流石に蹴られることはないが、外から内からと攻められて、全員が流石に苛立つ。なによりマルトーの苛立ちは限界にきている。
「どうなってんだ!マジで!真っ黒っ!出てきやがれ!」
「これは撤退も考えるべきだな」
「そうだよね。霧も深いままだし。マルトー、何か悪いことした?」
「してねぇよ!あんなのに!」
「もしあれが魔物だとして。魔物にしてはいたずらだけ。矢はうちこんでくるけど。魔力も気配もない。何者?」
「本当に。私も感知できません。なんでしょうね。姿を突然現せることができるならいつでも殺せるのにどうしてやらないのでしょうか」
すると霧の中から黒い人型がでてくる。かかってこいよとアピールして少しずつ下がっていく。普通なら乗らないがマルトーは頭に血が上り過ぎて判断を誤った。
「ぶっ殺す!」
マルトーが黒い人型に突っ込んでいく。かなり早い動きだが、黒い人型も同じような速度で下がっていった。
「マルトー!待って!罠かもしれないし!」
「聞こえてない。追いかける」
「仕方ない。行くぞ」
そこで反対側から連続で矢が何度も撃ちこまれ出す。
「くっ!このタイミングでか!」
「私。追う」
「私も行く!罠の可能性が高いし。私なら罠を察知もできるよ」
「わかった!俺とギリアーで矢のほうを相手する。ルイーズとジェニファーはマルトーを追ってくれ」
「「了解」」
急いで、マルトーを追うルイーズとジェニファー。その間もビリーとギリアーで矢に対処した。
その様子を見ながら矢を打ち込み続けるヴェンデッタはほくそ笑んだ。さきほどから黒い人影であるリプレイ・ドールをマルトーの背後に出したり消したりしていたのはヴェンデッタだ。
(よし。誘導成功。しかし、飛んでくる矢を音だけで打ち落とすとか。すごいな。まぁいいか。次は完全に分断)
ヴェンデッタは再度魔術を行使して霧を濃くする。続いてランタンを出すと紫の炎が地を這う蛇のようにビリーとギリアーに向かっていく。
「重き炎よ。蛇の如く、敵へ絡みつけ」
ヴェンデッタの呟きのように接近していく。すぐさま、ヴェンデッタは矢をさきほどより素早く連射して打ち出し始める。
ビリーとギリアーは飛んでくる数が増えた矢を盾で防ぎ、大剣で打ち落として対処していた。しかし、突然足が重くなる。
「なんだ!?足が燃えてる!熱くないが重いっ!」
「これは!もしかしたら、ジャック・オー・ランタン?」
「どうしたらいいんだ!?」
「お待ちを。------------------。私たちごと吹き飛ばします。対応を」
「わかった!やってくれ!」
「エアボム!」
ボンッ!
足元へ放たれた魔術は、地面に触れると圧縮した空気を開放して爆発した。爆発でビリーとギリアーは吹き飛ばされるが、上手く地面を転がって勢いを殺し、そのまま立ち上がって油断なく構え、いまだ放たれ続ける矢へ対処する。
「それで?」
「ジャック・オー・ランタンですな。やつの炎は様々な効果を持つといわれております。実際に会ったことはありませんが、やつの炎は紫色であると資料に載っておりましたよ」
「じゃあ、この霧も?」
「わかりかねますね。魔術でも同じことができますし。魔物の能力かもしれません」
「そうか。このまま遅滞戦闘をして、ルイーズ達に合流するか」
「それがよさそうですね。まさかと思いますが、分断を狙われたのかも」
「それが本当なら頭が回るな。厄介だ。誰かが魔物を使役しているかもしれないな」
「そのようなことができるので?」
「そういう魔術があるらしいぞ。話はあとだな。みんなに合流だ」
「わかりました」
矢をさばきつつ、2人はルイーズ達が進んだであろう方向へ後退し始める。
(うっそ!重き炎を魔術で吹き飛ばす?あんな対処するの?怖いわー。怖いことを平気でやれるっていうのがねー。やっぱり金クラス?あまり時間をかけすぎて分断した向こうが引き返してくるのは面倒だし。1人削っておくかな)
実体化していた弓を消して、別の弓をだす。ある時代劇の映画で使われた和弓だ。そして、通常の矢より鏃が大きめの矢も実体化する。その威力は人を10数メートル吹き飛ばせるぐらいある設定のものだ。
まずは、魔術アップパワーで力を上昇させる。それからもう一度ランタンの炎を、今度は上から同じ重くなる炎を降らせるのと下からヌルヌルすべる炎を向かわせる。弓をギリギリと引き絞っていく。
(おっもい!力強化はしているけど、ぎりぎりじゃんか。くぅーっ!)
矢に対処しつつ後退していたビリーとギリアー。そこに上から紫の炎の雨が降ってくる。
「くっ!今度は上だ!気をつけろ」
「多芸ですねー。---ーーー。ウィンドウォール」
ギリアーが上に大剣を翳し魔術を使用している間、矢はビリーが対処する。ギリアーの大剣より魔術陣が構築されて、その先から風が渦巻いて壁を作り出す。
「これでしばらくは大丈夫ですよ」
「助かったよぉおっ!?」
「どうしっ!?」
ずしゃっと転んでしまう二人。ヌルヌルとする手を見ると紫の炎がゆらゆらと燃えていた。また下からも紫の炎がきていた。
「下からも!今度はヌルヌルするぞ!?」
「くおっ!?滑ってしまってまともに立てませんよ。またエアボムで」
ズドンッ!
「ぐふっ。こ、これは。矢?」
「ギリアー!大丈夫か!?」
「ぐっ。ま、まずい。体が縫い付けらましたっ!?」
「待て!いま矢を抜くから!耐えるんだ!」
「ビ、ビリー。みんなの・・・元へ」
「お前を残していけるわけないだろ!」
「ダメです。次が来る前に早く」
「く・・・・・・わかった」
「・・・・・・武運を」
ビリーはギリアーを置いて這いずり転がって紫の炎を地面へ擦り付ける。すると後方でまたズドンという音がした。ビリーは振り向かずに紫の炎がない場所まで移動しきり、駆けて行こうとした。
「どこへ行こうというのかね」
そこに後ろから声がかけられる。少年のような声だが。そこに含まれる感情は冷たく感じる。ヴェンデッタがビリーの元へ出て行ったのだ。
ちなみに、ヴェンデッタは満のときに見た好きな映画のセリフを言えて内心は感無量という感じだったりする。
読んでいただき、ありがとうございます。
連載って中々に大変ですね。




