12話 リプレイの能力はずるい
遅くなってすいません。
やっと書きあがりました。
1章 魔物生活
12話 リプレイの能力はずるい
「もう一度言おうか?どこへ行こうというのかね?」
ヴェンデッタは内心ノリノリだ。
ビリーは冷や汗を流しながら、ゆっくりと振り向く。
まず目に入るのは矢に貫かれたギリアーだ。ついで見えるのは少年だ。フードを被っており、下半身はない。空中にふわふわと浮いている。
「しゃべれるのか。おまえは一体なんなんだ?」
「普通は名前から聞こうとしない?」
「名前!?あるのか?」
「失敬な。これでも知性があるのでね。僕はヴェンデッタという。まぁ自称だし、覚えてもらってもいいし、忘れてもいい」
「ヴェンデッタ・・・名前持ちの魔物」
「名前持ち。ふーん。そういう区分があるんだ。聞いても?」
「あ、ああ。名前を持つ知性のある魔物は上級より上の天災級や破滅級になる」
「そうなんだ。それで。そういう魔物と出会ったら?どう行動する?」
「・・・・・・」
「ふーん。沈黙。んー。逃げの一手かな。町まで走り続けれれば3日。追いかけっこする?諦める?」
「逃がしては・・・くれないだろうし。逃げるつもりは・・・ない!」
「戦う気はあるみたいだね」
「当然だ!ギリアーの仇は討たせてもらう!」
「1人で?舐められたもんだね」
「と思うだろ?」
ビリーは右手を見せ付けると指輪が光っていた。
「もうじき仲間がやってくる。それとギルドからも援軍がやってくるようになったいる」
「準備がいいね」
「ギルド支部長に感謝だな。みんながくるまでの間、金持ちの冒険者の力を味わってもらおうか」
ビリーは短槍を構え盾を前面に押し出す。ヴェンデッタは両手に拳銃を実体化しながら、聞こえないようにつぶやいてニヤリと笑った。
「怖い怖い。でも援軍は早々にはやってこないだろうし。仲間・・・戻れるといいね」
一方、マルトーは黒い人影を追いかける速度が落ちていないものの疲れてきていた。
「はぁはぁ。なんつー足が速いんだよ。しかも、後ろ向いたまま」
「かなりのツワモノ。後ろ向いたまま走って後ろの木を避けてる」
「はへぇ。うへぇ。もういい加減休みたいんだけどぉお!」
ルイーズは一番へばっていた。体力はパーティーの中で一番ない上に、黒い人影の挙動と足元や周囲に注意を払っているのだ。精神的な疲れが体力をより奪っている。
黒い人影は突然速度を上げて、木を蹴り跳ねながら進みだす。そして、しばらく追いかけっこが続くが、限界が訪れた。
「だぁーっ!なんつー移動だよ!」
「むー。やりおる」
「はへあぁ。うへあぁ。も、もうムリぃー」
転ぶようにルイーズは倒れこんだ。ジェニファーも転んだルイーズに気づいて速度を落として彼女の介抱へ向かう。マルトーは追いつけないことを悟ってゆっくりと止まり、近くの木を殴りつける。
「あへあー。むりー。走るのー。むりー」
「これも飲めるなら飲んで。ゆっくりと呼吸して」
「んぐんぐんぐ。ぷふー。やぁっと落ちついたぁ。ありがとね、ジェニファー」
彼女達の下へ歩いてマルトーが向かう。近くに着くと、苛立ちをぶつけ始めた。
「ちくしょう。なんなんだよ、あいつはよっ!」
「わからない。でも、かなり強い。あんな魔物は聞いたことないし。隣国の手だれの可能性が高い」
「だったら、なんで俺を殺せたのに殺さないんだよ!」
「そんなの向こうに聞いて。というかいい加減煩い」
「んだとっ!おまえはやられてないからそう言えんだよっ!」
「小さいこととぐちぐちと」
「てめぇっ!殴らべっ!ごへっ!」
ゴチンッ!バキッ!
いい音をさせて頭に石をぶつけられたマルトーは、ジェニファーに掴みかかろうとしていたため、体が前のめりになる。それを迎撃するように拳をジェニファーが出したため、マルトーは殴られた。
「痛ぇえええっ!なんで殴るんだよ!」
「ごめん。思わず。それよりまた石」
「またかよ!」
「ん?奥にいるのが見える。立って、こっちを見てるみたいだよ」
「立ってる?誘い罠?」
「わかんないけど。それはあるかも」
「んなこと言ってても埒があかねぇよ。いくぞ。慎重にな。特に投石に注意だ」
「あいよー」
「わかった」
マルトー達はゆっくりと草木を掻き分けて近付いていく。
そして、森の少し開けた場所に出ると黒い人影はいた。マルトー達は武器を構えて、ゆっくりと散開する。じっくりと観察すると人影は文字通り、上から下まで真っ黒な姿の人の形をした塊だ。目もない。口だけあり、ニコニコしている。
「あれなんだろ。人なの?気持ち悪くない?」
「あんなのにやられたのかよ」
「油断しない。あれは強い」
「わかってるよ。もう好きにはやらせねぇよ」
「了解だよ」
ある程度近付いてから、代表してルイーズが声をかける。マルトーは喧嘩腰だし、ジェニファーは言葉が断片的になりがちだから順当といえる。
「ねぇ。あなたは誰?どこの人?」
黒い人影はルイーズの声に反応せず、ニコニコするのみだ。それに苛立ち、マルトーが声をあげる。
「おい!てめぇ!聞こえてるんだろ!しゃべりやがれ!」
しかし、黒い人影は反応せずに、ニコニコ佇むのみだ。
「もうやろう。ぶっ飛ばそうぜ」
「同意。手早く」
「ふぅ。仕方ないね。捕縛前提で、命第一」
ルイーズの言葉に2人が頷いて同意し、包囲を狭め始める。
ある程度近付いたとき、黒い人影が石をマルトーへ向かって指で弾き飛ばす。それをマルトーが篭手で弾いている間にジェニファーに投石をし、ルイーズに飛び掛った。
それに対して、待ち構えていたルイーズは持っているショートソードではなく、投擲用の短剣を投げて牽制する。それを黒い人影は手で短剣の側面を打ち据えて弾き、そのままルイーズの懐へ入る。ルイーズはショートソードを振り抜いて黒い人影を突き放そうとするも、先に黒い人影からの拳が腹部へ先にめり込む。
「がはっ」
矢継ぎ早に膝蹴りを叩き込んで、ルイーズを吹き飛ばす。そこに投石を避けて間合いを詰めて来たジェニファーは剣を横薙ぎにする。それを黒い人影を背面飛びで避ける。そこからジェニファーが連続して斬撃を繰り出し、黒い人影はそれを避け続ける。斬撃が鋭いため、避けることしかできていない。
「うおらぁっ!」
そこに吹き飛ばしたルイーズを受け止めたマルトーが参戦。戦鎚を振り下ろす。あっさりと避けて、戦鎚はドガンッと地面を砕くだけの結果になる。
だが、そのおかげで黒い人影は体勢を崩してしまう。ジェニファーの斬撃を避けられなくなって右腕を切り飛ばされる。そこでマルトーとジェニファーは距離をとって観察する。
「げほっ。ふーふー。なんで血がでてないの?」
「あれが生き物じゃねぇのは確かだな。でも、まじでわかんねぇことばっかりだな」
「動きからは手練れだとわかる。でも血がでないから魔術で作った人形?」
「それにしては動きが人らしすぎるだろ。昔戦った人形は人らしくなかったしよ」
「人形なら作り手。かなりの熟練」
「ふぅううう!よし。でも、それなら隣国のスパイの可能性が大きくなったね」
「うん。もうやることは人形を破壊。痕跡を持ち帰る」
「そうだなって、斬り飛ばした腕がねぇぞ?」
「消えた?嘘っ!?腕が治ってる!?」
「なるほど。修復もできる手練れの人形。仕掛けはわからない。けど、素手っていうことだけが救い」
油断なく包囲しながら、また戦闘を再開した。
パンッ!パパンッ!
ヴェンデッタは両手の拳銃を撃ちつつも距離を保持するように動くが、ビリーは銃撃を盾で防ぎながら距離をあっという間に詰めてくる。そこを再度銃撃して足止めをしている状態だった。
(失敗したっ!初見のうちに搦手で倒すべきだった。格好つけて頬に傷をつけるとかやったら、ちゃんと対応してくるじゃん。これが金クラスの冒険者の強さ!じゃなく、俺が間抜けすぎだよね)
「くっ!仕組みはよくわからないが、金属を撃ち出しているんだな。わかれば、対応できなくはない。俺1人ででも押さえ込ませてもらう」
「やめてほしいよね!性質が悪い!なんで1人で対応できるの!」
「経験、だっ!」
「危なっ!」
間合いを詰めると同時に繰り出される短槍を、仰け反りながら吹き飛ぶように下がってヴェンデッタが避ける。そこに追撃をしようと盾を構えながらビリーが迫る。
「これで終わりだ」
「そうです・・・かっ!」
ドガンッ!
「うぉっ!?」
「もう一発!」
ドガンッ!
ヴェンデッタが両手の一方の拳銃を対ゾンビ映画御用達のショットガンに変えて撃ちこみ、ビリーの足を止める。そこにもう一方をダーディな刑事愛用の大口径のマグナムに変えて、あえて盾へ向かって撃ち込んだ。
金属の塊は音速の速度で放たれ盾を貫通し、ビリーの肩を吹き飛ばす。
「があっ!」
左肩に大きな風穴を空けられ左手を吹き飛ばされたビリーは、その勢いのまま後方へ飛んで地面を転がる。痛みに耐えてすぐに体を起こそうと顔を上げるとそこに転がる黒い丸まった物体。それを目にしたビリーはそれが何かと訝しがる瞬間。
ドガンッ!
黒い丸まった物体、手榴弾はビリーの傍で爆発をして再度吹き飛ばした。
その様子にふぅと息を吐いて、ヴェンデッタは気持ちを落ち着けた。倒れたビリーに歩み寄っていく。
「流石に焦ったけど、やっぱり近代兵器はすごい。というかずるい。ちょっと賭けではあったけど盾を撃ち抜けてよかった」
「ぐっ。がはっ」
「・・・・・・まだ生きているこの世界の人の頑丈さのほうがすごいわ。この世界では近代兵器はぼちぼちなのかもしれないなぁ」
速攻で掌を返したヴェンデッタ。ビリーの顔を覗きこむと話しかけた。
「まだ生きてる?」
「・・・殺ぜ」
「経験が足りなかったね。死ぬ前に依頼内容いう気は?」
「言わだい」
「言うなら他の仲間は殺さないと言ったら?」
「ふっ、ふは。信じでもらえる仲だっだか?」
「そうだった」
ヴェンデッタは銃を構え、ビリーの頭に狙いを定める。
(みんな。すまない)
パンッ
「そうだよなー。言ってる内容が信じれるかってのあるし。向こうも終わらせるかな」
容赦なくビリーを撃ち倒したヴェンデッタは、マルトー達のほうへ向かっていった。
黒い人影とマルトー達の戦いも一進一退だ。
マルトー達が黒い人影へ何度となく斬撃を加えているが、すぐに元通りに戻ってしまう。
一方、黒い人影の打撃も幾度も当たっているが、他の人がフォローして追撃を防いでいるために決定的なダメージにはなっていない。
「このままだとジリ貧」
「本当!もうね、体力少ない私からリタイアしそう」
「首跳ねても殺せねぇってのは面倒だ。消し飛ばすだけの火力は俺らにはねぇしよ」
「ギリアーがいれば」
「呼んでくる?私が本気で走れば」
「無理。そうするとこっちがもたない」
「んー!弱点がわかればなー」
「俺、気づいたぜ!」
「どこ?」
「あいつ、胸のあたり、心臓を守ってるんだよ。そこだけはどんな攻撃をしても避けてるんだ」
このパーティーで一番短気ではあるが、一番観察の目を持っているマルトーがずっと見ていた黒い人影の弱点らしい場所を告げる。
それを聞いて、3人が目を合わせると頷き一つで動き出す。
会話中も続いていた戦闘だが、マルトー達の動きが変わる。いままでは、マルトーが前衛、ジェニファーが中衛、ルイーズが遊撃。それがジェニファーが前衛になって、黒い人影の攻撃をさせないように斬撃で体を削っていく。ルイーズはショートソードで斬撃の合間を埋める。
「「はぁあああああっ!」」
黒い人影が切り刻まれつつも心臓の位置だけは体捌きや手足を犠牲にして避けていく。もちろん、傷は瞬時に回復させている。
「うおりゃあ!」
そこにマルトーが黒い人影の足元へ戦鎚を打ち下ろす。戦鎚によって地面が抉れて、そこで黒い人影が足を取られて転ぶ。
「今!」
そこにジェニファーが腹部を突き刺して地面に縫いつる。
「くたばれっ!」
戦鎚を投げ捨てたマルトーが顔面を盾で打ち付けて空いた手で右手を押さえる。
「これで!」
そして、ルイーズが左手をショートソードで縫い付けると予備のショートソードで心臓の当たりの胸を突き刺した。
彼らはこれで黒い人影を討伐できたと少し安堵する。
黒い人影は胸を刺されてビクッと震えると動かなくなり、次の瞬間に大爆発した。
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