3話
「最初に誘ったのは…って、宮前さんの前でそんな話しても良いんですか?」
西原が気遣うように、冬四郎を見ると冬四郎はタバコを吸いながら気にするなと手を振った。西原は、何だかんだ冬四郎もむつの事は気にしてるんだなと思っていた。
「最初はむつですよ。1件目行った帰りに休憩するか2件目行くかって聞いてきて…踏ん切りつかなくて2件目行って、べろべろだったんでタクシーに押し込もうとしたら泊まるって言い出したんで、付き添って一緒に部屋に入ったんです…けど、むつは化粧落として全裸で寝ちゃったんで、俺はソファーで」
「で?…ん?お前、むつが起きた時に何もなかったって話をしなかったのか?」
お湯で割りもせず、山上は焼酎をぐいぐい呑んでいる。冬四郎もそこは、気になったようで西原の方を見ていた。先輩方の視線を向けられた西原は、ははっと笑った。
「言わなかったんだな…何でだ?言ってたらむつも気にする事もなかっただろうに」
「言わない方が…俺の事を意識するかなって思っちゃったんですよね」
「お前、狡くないか?」
冷めてしまったホッケの身をほじって山上は口に入れると、責めるような目を西原に向けていた。
「狡いですよね。やっぱり、そうですよね。けど、むつが見てる人は俺じゃないんで…そうでもして、こっちを見てくれたら可能性が少しでも出るかなって思ったんですよ」
正直に西原が言うと、山上は同情するような目を西原に向けた。そして、困ったような顔をして、ちらっと冬四郎を見た。冬四郎は知らん顔しているようで、しっかりと聞いている。




