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2話
颯介が到着すると、むつはコーヒーをいれなおしてソファーに座った。
「で、話しておかなきゃいけないんだけどね…菜々からの仕事の事ね」
仕事の話だと分かると、流石の山上も表情を引き締めた。むつはコーヒーを一口飲んでマグカップをテーブルに戻した。
「学園は出たり入ったりが簡単には出来ないから…転入生になる事になりました」
むつが簡潔に言うと、冬四郎と山上はきょとんとした顔をしている。颯介もすぐには言葉が出ない様子で、むつをしげしげと眺めていた。
「…えっと?むっちゃんが?」
「そう」
「学生になるって事?制服着るの?」
「そういう事。だから、しばらく出社は出来なくなるし、しろーちゃん。保護者として転入初日は付き添いお願いね」
「待て待て、むつが…?学生?」
山上は目頭を揉むようにして、ぐりぐりと押さえている。むつの言ってる事が分かっても、ついていけないという感じだった。
「俺が保護者?親にしては歳が…」
「兄としてで良いでしょ?もう転入資料はでっちあげて貰ってあるから大丈夫」
むつは立ち上がり、机の上から朋枝学園と印刷の入った封筒を持ってくると冬四郎に渡した。




