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俺たちは坂道を上り、新たな広場へと辿り着く。振り返れば、標高はずいぶん高い。
坂道の上に現れたのは――
「あれ? 不在?」
「居ますよ、奥に」
言われて、青い岩肌の広場の奥に目を凝らせば……確かに、随分小さな何かが居る。白い、細い蛇? 宙を浮く、細長い何かの生き物だ。
「……ご主人さま、なにか、嫌な予感がします」
「……帰る? ずいぶん小さいけど」
「いえ、もうすでに……」
その時、落雷が一つ光った。
次の瞬間にはもう、空にそれが現れている。
「総員、戦闘開始!」
俺たちの頭上に、巨大な雷が現れていた。
それは、俺の瞬き一つを過ぎても、空から消えず。俺たちの真上に大きく残り続け、あるいは、白き雷の光の筋は、まるで意思を持つようにその体がうねり、動いている。
「あれは“幻霊”ですね! 強力な攻撃が降ってきますよ! 気を付けてください!」
空が光った。俺の体がガクンと揺れる。雷が俺に当たったわけじゃない、隣に居たマルメロが俺の体を抱え、落ちてくる雷を避けるようにその場から奪い去ったのだ。
「ブルーバード! ポイズンアント! 魔物シェルの中に戻れ!」
相手は不定形、飛行、遠距離攻撃持ち。彼女らが居てもただ的が増えるだけだ。俺はこれ以上下がれない、マルメロも、爆破が効かないなら“幻霊”相手には攻撃が通じないんじゃないか。
「どうしようマルメロ! どうやって倒すの!」
「相手は変身状態です! それは持ってるエネルギーを消費し続ける特殊な形態であり、また攻撃にもエネルギーを使うはず! 逃げ続けていれば、相手はそのうち力を使い果たすはずです!」
「なるほどね!」
俺はマルメロの肩に米俵のように体を担がれながら、空を見上げる。ぴかぴかと、俺たちの空の高いところに、一筋の大きな雷が、地面と水平に広がっている。
ポイズンアントを召喚して陰に隠れる……おそらく、今のを見るに受けちゃいけないダメージを受けてしまう。ポイズンアントは戦闘が終わるまで耐えきれない、つまり俺の生存のために呼んではいけない。
ブルーバードはブースタージャケットがあり、単独で今の攻撃を振り切れる速度を出せるだろうが、しかし彼女は俺を掴んで飛べるほどのパワーはない。せいぜい空を飛ばせて的が増えるくらいか。けれど空を飛んだら上の雷に近づき、被弾までの距離と時間が短くなる。
二人は呼べず、ゴールデンちゃんも今回はやる事がない。つまりは、
「マルメロ、頑張って避け続けるんだ!」
「なんだか懐かしいですね!」
「今回は荷物も居るぞ!」
「荷物なら大人しくしててください! 舌噛みますよ!」
ピカと光り、雷が地面に落ちた。予兆らしき予兆がなく、落ちるまでが一瞬。これは、今回は俺の役目もない。ただマルメロの反射神経に身を委ねるだけ。しかし、落とす雷を集めるには時間が掛かるみたいで、雷は連続して降ってこない。
体を投げ出し、俺たちは別れてごろごろと青い地面を転がる。マルメロが立ち上がる。
「ご主人さま! こちらに!」
「持ち方は!」
「じゃあおんぶで!」
俺は駆け出し、マルメロの背中に飛びつく。硬くてでかい背中だ。すぐに頭上でゴロゴロと音が鳴りだし、マルメロは狙いを定められないよう、俺を乗せて地面をジグザグに走り出す。
そのうち、ふっと光が消えた。奥に、白い空飛ぶ蛇のようなものがふわふわと浮いている。
「ブルーバード!」
俺がマルメロの背中で叫べば、瞬間、白煙を吐いて青い巨鳥が現れ、背中のロケットが火を噴く。
瞬く間に向こうの白い蛇の元まで、ブルーバードの体が辿り着き、鉄の付け爪が向こうの白蛇を切り裂いた。
白蛇の姿がかき消える。向こうには居ないが、空にも居ない。アイテムが虚空からぽぽぽと落ちてきたので、おそらくは倒せたのだろう。
「おつー、マルメロー」
俺はマルメロの背中を滑り降り、彼女の背中をポンポンと叩く。
「ご……ご無事で……何よりです……」
「大変そうだったねー」
「えぇ、あぁ、まぁ、はい……」
彼女は膝に手をつき息を整える。若干恨めし気な彼女の視線を浴びつつ、俺は向こうのブルーバードの元へと歩いていく。
「ブルーバードも、お疲れさまー!」




