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エリア5、二体目に現れたのは“蛇腹”と呼ばれる大きな魔物。簡単に言えば丸々と太った蛇であり、全長は短く横にでかく、太っている後ろ半分の胴体を地面に置き、前半分の体を持ち上げて、高い位置から見下ろしながら俺たちを待っていた。
ジャバラは特殊能力持ちで、周囲に茶色い沼を出現させたり、口から泥を吐いてきたりした。飛んできた泥などを食らうと体に泥がまとわりつき、一定時間体が重い状態になったり。さらには、毒を含んだ攻撃も持っていると来た。
しかし、今回のジャバラは、動きが鈍重であった。大きく移動する様子を見せず、使う能力は厄介であり、また、まだ頂上までにもまだ残りがあった。
マヒマヒソードを当てて動けない状態にし、“グリーンメテオ”のカードを発動させた。一撃粉砕! 少しは殴って削っていたが、おそらく、全快状態からでも一撃だった気がする。
戦闘が終わり、俺たちは広場の端にやってきて、腰を下ろす。視線を向ければ、足元の下り坂から広がっていく、山肌と、向こうの広い草原が見下ろせる。
「世界は広いねー」
マルメロもやって来て、同じように、隣に腰を下ろす。
「ご主人さまは、まだまだ見てないですよ。世界はもっと、もっともっと広いです」
風が吹く。遠くの緑の海原に、波が走っていく。
俺たちはただ、上へと続く坂道を登っていく。
広場の上に出た。標高が高く、横の景色がずいぶん高い。ここまで登ってくるのも面倒だが……まぁ、一日一体倒して、それくらいが限界かも。帰りにほかのエリアの魔物を倒していけばレッドパールが育ち、次の戦闘も楽になる。今日も、エリア5一体倒して撤退が賢いかな。
広場の奥に待っていたのは……ゴリラだ。これまた巨躯のゴリラであり、ブルーバードやポイズンアントよりも、一回り二回りでかい肉体。エリア5はでかいシリーズなのかも。あるいは、強くなるとでかくなるのか、単純にでかいやつは強いのか。
黒い体毛に、所々に、火の粉を散らしたような、オレンジや赤のペイントが入っている。黒い大きなゴリラは二本の足で立ち上がり、二つの拳を持ち上げて……振り下ろす。衝撃が音を鳴らし、地面を走って足元まで伝わってくる。
「パワー型かな。特殊能力は、無しか薄いか。力が強くてタフそう。長引きそうだし、引き返して、もう一つの道を見に行ってもいいけど……」
と、隣から、真っ黒な牛の魔人こと、マルメロが歩いて出てくる。
「楽しそうな相手、ですね」
そう言って、マルメロは肩を鳴らし、腕をぷらぷらと揺らしている。
「やる気だねぇ」
「今回は任せてください。私が勝ちますよ」
マルメロが、地面を軽く駆け出し、向こうのゴリラへと向かっていく。彼女の装備は、胴体にベスト、拳にナックル。爆破を伴った拳を繰り出す、近接タイプのアタッカーだ。
対して、向こうには巨大なゴリラが控える。マルメロは成人女性の体型であり、俺と比べれば大きく、シェル魔物たちと比べれば少し小さい。そして、そのシェル魔物よりも、あそこに居るゴリラはさらにでかい。
握った拳が、マルメロの胴体と並ぶくらいには、彼我の大きさに差がある。
しかし、力ならどうか。
デカゴリラは体を逸らし、拳を持ち上げて、迫り来るマルメロに大きな拳を振り下ろす。そのまま全身を叩き潰してしまえそうなほど大きな、その拳を。
マルメロは、避けなかった。
彼女の突き出した拳が、ゴリラの拳に合わさる。拳にはめた装備が起爆し、爆風がマルメロの肌を撫で、ゴリラの肌の表面を走っていく。
ゴリラの拳は無事で、それは押しのけられず、浮きすらせずにマルメロの拳と合わさっている。そしてマルメロの体も引かず、力負けせずに、地面で落ちてきた拳を自身の拳で抑えている。
マルメロが、にやりと笑ったのか。同時に、デカゴリラも笑みを見せた気がする。
ゴリラの腕が浮き、マルメロが浮き上がる。引いたそこで、二つの拳を合わせ、ばちばちと爆風を撒いて調子を整えている。
おそらく、ここからが本番なのだろう。
マルメロの体は、巨大なゴリラの足元で走り回り、ゴリラはそのでかい図体から、彼女を狙いにくいかに思えた。しかしゴリラの取る戦法は拳を振りまわす一つではなく。腕を広げて、地面すれすれをラリアットのように回ったり。地面を叩いて衝撃で怯ませようとしたり。
しかし、マルメロにはそれら小細工が通じない。小さな体で、二発目以降は敵の拳を避け、胴体に入り込み、空いた胴に拳を叩き込み、顎の下からアッパーを叩き込む。
それだけ近距離で戦えば、こちらの被弾もゼロとはいかない。マルメロの体は、時に相手の体に引っ掛かり、巨大な体がマルメロを吹っ飛ばす。
戦闘はマルメロが優位に続いた。やはり、彼女に装備した爆破の一撃一つ一つが、デカゴリラの体力を確実に削っていったか。
疲労が見え、ふらついてきたゴリラの背後に回り。後頭部に、彼女の拳が突き刺さる。
ぐらり、巨躯が傾き、前方にゴリラの体が倒れこむ。戦闘は、最後は静かに幕を閉じた。ゴリラはもう起き上がってくることはなく、終わりの合図のドロップ品が、ゴリラの体から飛び出した。
大きく息を吐いて、マルメロは構えを解いて体の力を抜く。それから、彼女はこちらを振り向いた。
「倒しましたよ! ご主人さま!」
「お疲れ! 良い戦いだった!」




