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ー18

 さて。俺たちは、また見慣れた草原を歩き、これまた見慣れた山肌を見上げる。下半分は赤茶けた、上半分は青い岩肌の山。下半分が、今攻略中のエリア4。



 前回のレベルフロント攻略時から、実力不足を感じ、俺たちはいろいろ装備を引っ提げて、またこの場所へと帰ってきた。


 前回からの変更点は、ほぼ主にマルメロの装備だ。それらは[爆弾の岩庭]で集めた素材で作成したものなど。


 一つは、“爆裂ナックル”。爆発系の魔物素材を使用して作成。マルメロの拳に装備する防具。殴ると、衝撃で拳が爆発する。なお、この爆発自体は装備者本人にも効くので、耐性が無ければ殴るたびに自分の体力も削れていく。防具なので、使えば消耗していき、いつかは壊れる。


 一つは、“耐爆ベスト”。上半身に上から着る、ごてごてとしたベストの形の防具だ。同狩場において、“爆破”属性に優秀な耐性を持つ魔物たちの素材を使用して作成。この装備により、“爆破”属性に対して大きく有利な耐性を得られる。相手からの攻撃に発動する頻度は少ない。が、“爆裂ナックル”の起爆による反動も、ほぼ無いものに出来る。


 一つは“爆撃激昂の珠”。これは“爆破”属性の攻撃を受けると、次の攻撃が大きく強化される状態を得られるという、装備式のお守り。自身の攻撃によるものも発動条件に含まれるため、“爆裂ナックル”と合わせると、爆破で殴りながら次の攻撃を強化し続けられる。一応、次の使用までには5秒ほどのクールダウンがある。


 それから、一つは“共力の珠”。これは、商店を通して取り寄せたもの。今の段階では、みんなはそれぞれ一つずつしか“珠”のお守りの装備できない。しかし、“共力の珠”は、“甲”と“乙”の、二種類一セットであり、このうち“乙”が本体扱いで、“甲”は、マルメロの“爆撃激昂”と同時に装備できる。


 効果は、“乙”装備者の自分の腕力を、“甲”装備者の相手に上乗せするというもの。“乙”装備者自身の腕力が減ることはない。怪力を持つポイズンアントに“乙”を装備させ、マルメロに“甲”を装備することで、マルメロの腕力を底上げしている。



 坂道を登り終わり、そこの広場には、同じ、潰れたきなこ餅みたいな重いカエルが待っていた。あるいは、エリア4では、同じ広場には同じ魔物が待っているのかもしれない。


 “黒牛魔”形態の、ベストを羽織り、拳にナックルを付けたマルメロがまっすぐ向こうのデカガエルへと向かっていく。難なく伸びる舌を避け、くぐり体の側面に回り込む。拳の一撃がカエルの側面に突き刺さり、爆発が起きた。


 重いカエルの体が浮き上がる。立て続けに、マルメロはもう片方の拳をカエルの体へと叩き込む。“爆裂ナックル”の起爆にはクールダウンがなく、殴れば殴るだけ連続して爆発が起きる。


 重い音がカエルの体を動かし続け、やがてひっくり返った。カエルは白目を剥いて動かなくなっている。


 つよ。倒し終えるまで、ほぼこちらの一ターンだ。


「マルメロ! お疲れさま!」


 感激したような表情で、黒い牛の魔人がこちらを振り返り、腕を振っている。



 *



 俺たちは、草原から山の山頂を見上げる。


 先日、装備を更新してエリア4に挑戦。バカ強くなったマルメロが魔物相手に無双し、エリア4ならほぼマルメロ単体で倒せるようになった。


 エリア4を攻略すれば、レベルフロントも、残すはエリア5のみ。俺たちの上には、高く伸びていく山の上の青空が見えている。




 レベルフロントは、全五層からなる、それぞれ違う段階の強さの魔物たちが集まる特殊な場所。エリア1から5まであり、特徴として、一つ上のレベルの魔物が落とす素材を持っていれば、例えばエリア2のアイテムがあれば、エリア1で魔物に絡まれることがない。


 ここのレベルフロントの最上層はエリア5であり、エリア5の魔物を倒せば、エリア1から4までの魔物にわざわざ絡まれる必要はなくなる。


 レベルフロントは、エリア1は広がる草原、川と橋を挟んで、エリア2はその奥に広がる草原。草原は、奥に進むにつれて緩やかに下がっていき、また、草原の周りを囲むように、円弧上に連山がある。草原と連山との間の溝がエリア3。


 そして、奥の連山は、下半分は、赤茶けた色をした地形である。そして水平に区切るように、山の上半分には、青い岩肌の山が見えている。


 エリア4とエリア5の構造は大まかに一緒だ。山の下から上まで、登山道が迷路のように、別れたり合流したりしながら、頂上へと続いていく。登山道の合間には広場があり、それぞれの広場では、ある程度定まった種類の魔物たちが待ち受けている。


 そして、エリア5の登山道を登って行った先。山の頂上には、連山の各所に銀色の旗が置いてある。その“シルバーフラッグ”を手で握れば、ソーシャの手の平に攻略者の証が刻まれる。証は刻まれた後見えなくなるが。


 この“レベルフロント攻略の証”があれば、さまざまな他エリアへの通行が可能になる。



 マルメロがエリア4の魔物をさくさくと倒して、俺たちは赤茶けた登山道を上へと登っていく。エリア4の相手は、やけに硬くてしぶといが、意表を突いた戦法は取ってくる相手は少ない。殴っていれば基本的に勝てる。


「今日は、エリア5の魔物を、最低でも一体倒すことを目標にするよ」


 レベルフロントのエリア5。それはこの場所の、最高難所。


 エリア5は、青い岩肌を上に続いていく登山道と、合間の広場で構成されている。


 ちなみに、エリア5に関しては、出現のための個体数が少なく、それぞれの広場で待つ魔物は同じ個体である。一度倒してしまえば、こちらから挑まない限り再戦して通る必要はない。


 エリア5の魔物を倒して素材を得られれば、次から道中のエリア4の戦闘をスキップできるようになる。エリア4であれば落ちる報酬も美味しいし、今のマルメロなら楽々倒すことができるが、エリア5の魔物に挑戦することを考えると、出来るだけ道中の消耗なくエリア5まで辿り着きたい。


 背後を見れば、景色の高さが上がってきた。坂の斜面を見て登っていれば、一歩ずつの変わらない景色だが、ふと後ろを見れば、遠く下に広がる草原の風景。


「前見て歩かないとつまづくよ」


「あぁ、ごめん。そうだね」


 聞きなれたみんなの足音が聞こえる。もうすぐ、山肌の色が移り変わる。


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