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「また来ます!」
落ちていたドロップ品を拾い、一息もつかぬうちに、また新手が現れる。
向こうから現れたのは……三体。三“体”?
三体の中心に居るのは、なんというか、車? 赤い透明な、それこそエビの殻で作ったような装甲車をまとって、中にエビが入ってこちらに近づいている。
その両脇には二匹のウサギ。ただのウサギじゃない、体を覆うように、灰色の、六角形のタイルが敷き詰められたようなベストを着ている。
「あ、良かったね。今回は爆破タイプじゃないよ」
「相手は三体……こちらも三人、ですね!」
「あれ? トリジくんも前に出て戦えるの?」
「戦えます!」
「無理です!」
「戦えます!」
「虚勢はっちゃだめだよ!」
どうやら、マルメロの発言が採用されたらしい。俺はおとなしくホラ貝を持ち上げる。
正面からわしゃわしゃとエビの多脚が動き、エビ殻戦車を背負って迫りくる。両側の二体は……左右に散開した。ウサギは戦車より機動力が高く、戦車がこちらに届く前にウサギたちと接触する。
「マルメロちゃんは右!」
「了解です!」
今回はポイズンアントとブルーバードは呼んでいない。ゴールデンちゃんもついでに置いてきたので、俺の身の回りを守る者も居ない。まぁ魔物シェルは手元にあり、呼べば来るだろうが、事前に呼ぶと言っていないのでよほどが起こらない限り呼ぶ気はない。
黒ムカデ人が右に、赤服の童女が左に構え、それぞれの方向から走ってくるウサギを待つ。
「ウサギは、特殊な能力はないけど重いし速いし硬いよ!」
「じゃあ得意です!」
アストラ先輩は銀槌を盾に構え、走りくるウサギの突進を防いだ。ホラ貝の音色が響き、二人に青いオーラが掛かる。マルメロは逆に、両手を広げ、突っ込んでくるウサギを体で受け止める。
「ぐっ!」
声を漏らし、マルメロは後退しつつよろける。アストラ先輩は、突進を防いで地面に落ちたウサギに、追撃を与えようとハンマーを振り、しかし素早い動きに避けられる。
「捕まえ……ましたよ!」
マルメロはしっかりと両腕でウサギを抱きかかえ、ウサギはマルメロの腕の中で暴れる。マルメロは逃すことなくその体を抱え続け……マルメロの体から降りる白い冷気が、ウサギの体を包み、その体表に霜を下ろしていく。
「アストラさん、後は頼みます!」
凍らせたウサギの体。あれは“凍結”という状態異常が掛かった状態。そこから派生するいくつかのコンボがあるが。
相性がいいのは、“凍結”状態へと与える“打撃”。衝撃に氷が割れ、同時に多大なダメージを相手に与える。
放られた凍ったウサギは、ボウリング玉みたいに地面を跳ね、アストラの方の足元に転がっていく。
「もう一匹も私が捕まえてきます!」
「お願い!」
ぐるん、ぐるんと二回し。アストラ先輩の銀の槌が天へと高く掲げられる。
「おらっ!」
落ちた質量、大地が揺れ、氷が砕け、白目を剥いたウサギの体が地面に横たわる。
そして、もうすぐエビ殻戦車が来る。
ウサギに対し、エビ戦車は鈍重な動きだ。張りぼての大殻を被ったエビは、一生懸命に脚を動かしてアストラ先輩へと近づいている。
ぐっ、と、赤服の童女は身を屈め、地を蹴った。ぎゃりぎゃりと銀槌が地面に引きずられ、連れられて。
そして、かち上げ。横薙ぎの強力な一撃に、エビ殻戦車がまくられ、浮き上がった。しかし思ったより丈夫だ、ハンマーの一撃に、エビ殻はたわむぐらいで破損の一つも見えない。
しかし……アストラ先輩の大槌が無軌道で、攻撃のタイミングが読めない。まぁ先輩には攻撃バフも要らないだろうけど。先輩クラスなら、倒すまでに必要な攻撃回数まで覚えているかもしれない。出来るなら合わせたいが、無理に合わせる必要はなさそう。
重いエビ殻戦車が浮き上がり、横倒しになる。中には、透け透けの殻の中に居た、一匹のエビ。
慌てたようにエビは脚を必死に動かしていたが、もう脚は地面に着いていない。追撃の一撃がエビの体に叩き込まれる。
「凍らせました!」
もう一方、左奥で声がする。黒ムカデ人の胸元には、凍った白い毛の肉塊が抱えられている。
「こっちに投げて!」
「了解です!」
ウサギの体は重く、投げられたウサギは、離れたアストラの元へは届かない。ごん、と痛そうな音を立てて岩の地面の上に凍った塊が落ち。
上から、銀色の大槌が振り下ろされる。
ハンマーをどかせば、気を失ったウサギの肉体が横たわっている。
「三体撃破! いったんクリアだね!」




