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「ふーん。強い装備が欲しいの?」
木々の町の中を歩いていれば、俺たちは知っている顔に出会った。
彼女は冒険者。真っ赤な服を着た、銀色の輝かしい大槌を掲げる少女。バリバリに動き回る割に下がスカートなのは、下に履いている真っ白なカボチャパンツが、見えていいものだからなのか。
彼女はアストラ。木々の町の住民たちと違って、ここが拠点ではないようで、以前顔を見かけてからは、しばらく町の中で出会えていなかったのだが。
赤服の童女先輩は、変わらない親切さで俺たちに呼びかけてくれる。
「じゃあ、私が連れて行ってあげようか!」
直進する、宙に浮くパネルバイクに二人乗り。収まり的に俺が前に乗り、背中にアストラ先輩が乗って、先輩が俺の体に腕を回してしがみついている。背中に触れる確かな重み、確かな温もり。
風を切って、青空の下、草原の上を駆け抜けていく。たまに、ポツンと生えた緑の木や、地面に溜まった池を横目に、通り過ぎて。
しばらくして、世界に異物が見える。透明で大きな筒。中では視界がギュン! と、なるので、俺たちは一度バイクを降り、歩きながら筒の中を進んでいく。
普通に歩いているだけで、大きな透明な筒の外の景色が、まるで光のように前から後ろに通り過ぎていく。
そして、出てきたのはダンジョン[岩屋根]。“岩突進”のスキルカードを作成した時にも通った狩場だ。だが、今回の目的地はまだここじゃない。
俺たちは、奥に見えている、岩が天を覆う屋根の先の、光の世界へと進んでいく。
やがて、視界が開けた。
俺たちの前にあったのは、たくさんの大岩が地面からタケノコみたいに生え、長く、細く立ち上がり、それぞれが天を目指すように屹立している。くすんだ灰色の、水気のない、噴火後の溶岩みたいな味気ない岩の群れ。曇天みたいな暗い地形。
「ここは[爆弾の岩庭]。ちょっと、手ごわい魔物たちがここでは出てくるよ! トリジくんたちは、付いて来れるかな?」
俺たちは今、向こうに広がる地面よりもかなり高い位置の岩場の上に出ているようだ。崖際の景色を背景に、赤服の先輩が振り返り、聞いてくる。
「任せてください! あの時に比べれば、俺……は、大して変わってないですけど。でも、仲間はいっぱい強くなったんで!」
「ここ[爆弾の岩庭]ではね、敵の倒しやすさのわりに、装備に使うと強い素材がたくさん落ちるの! まー、その分こっちも倒されやすいんだけどね。私も気を配るけど、トリジくんも、マルメロちゃんも、気を抜かないようにね」
「これ持ってて」
と、アストラ先輩が何かを放り投げてくる。なんだろう、小袋に包まれた何か。
俺たちは崖の上を降り、岩の柱の太い根っこがそこかしこから生えている、地表付近を歩いている。俺は、アストラ先輩から受け取ったそれを見下ろす。
「なんです? これ」
「それはね、お守りだよ。詳しいことは分かんないけど、それを持ってると“透明なカード”が落ちるはずの所が、別の特殊なアイテムが落ちるようになるの」
へー、ドロップアイテム枠に干渉するアイテムか。
今日は、アストラ先輩の連れということで、素材集めということもあり。レッドパールを装備できない中で強い、ムカデ人のマルメロだけが、俺の隣に連れて歩いている。
ポイズンアントもブルーバードも、パール付け無しでもそれなりにやれるだろうが、今回はあまりかさ張らずに、アストラ先輩を頼った方がいいだろう。
「来た」
と、赤服の童女先輩は、背中の銀色のハンマーの柄を掴み……そのまま振り上げる。
それは遠くから、一直線に俺たちの元へと飛んできた。吹き出す青白い火の残像が、俺の視界に焼き付いて残っていく。
アストラ先輩は強く地面を踏み込み、飛んできたそれを下から思いっきりかち上げる。
銀色が一閃。鈍い音がして、何かの肉の塊が高々と打ちあがり、落ちてきた。地面に落ちたバッタの体はもう動かない。
「“ロケットバッタ”だね! この子はべつに硬くは無いんだけど、遠くからすごいスピードで近づいて突っ込んでくるから。このエリアにいる間は、常にこれが飛んで来ないかを見といてね!」




