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ー10

 休憩洞窟にて。俺は召喚したホワイトボードをずりずりと引きずり、みんなが座る前に持ってくる。


「それでは、今日は今後の強化方針について。みんなで会議を行おうと思うよー」


 俺は、洞窟内の岩の地面に座っている、みんなの顔を見渡す。ムカデ人ことマルメロ、ブルーバード、ポイズンアント、ゴールデンちゃん、ヴァンピ、そして俺。よし、全員居るな。




 俺は、現在の手持ちの装備やスキル情報を、それぞれの仲間の隣に書いていく。


「エリア3までは、それぞれの弱点を補うように強化していったと思うんだけど、すると今回は威力というか、全体的な火力が足りなくなって来てるよね。みんなの全部を強化できたら良いんだけど、それをするには手持ちの資源に限りがあるし、前もってどこを強くしていこうか、みんなで話し合っていきたいなって」


 はい、と、そこで膝を抱えて体育座りしている、小さな赤い、二本の曲がり角が付いた、白髪の少女が手を挙げる。


「お、いいねー。はいヴァンピちゃん」


「一番強いやつを強くすればいいんじゃないかしら」


 俺は、ホワイトボードの右側に空いているスペースに、ヴァンピちゃんからの意見を書き込む。


「良い意見だね。ただ、この中で一番強いというと、今はポイズンアントになってしまうけど」


 と、俺は、そこに座っている黒髪の少女の方に目をやる。俺の陣営からだとあんまり出ないだろう、率直な意見。貴重だ。


「ポイズンアントは、“俺の護衛”という役割をあげているから、攻撃性能を上げても、他と比べると活躍する機会は少ないかもねー」


 最終的には、みんなの火力を上げなきゃだけど。優先度的には劣っている。


「……? ポイズンアントを前に出せば良いんじゃないの?」


 と、ヴァンピちゃんから、当然といえば当然の意見が返ってくる。俺は、ヴァンピちゃんからの疑問に答える。


「ポイズンアントの性格的には、それは向いてないねー」


「適性があるものを適性がある場所に配置するのが、あなたの仕事じゃないの?」


 俺の仕事か。俺のやるべき仕事。それは確かに言えてる。


「確かに。それをすると、今は楽になる。短期的には、全体的な結果が上がるかも」


「“今は”?」


「希望通りの場所に配置したなら、本人の望む能力が伸びやすいからね。今後を考えれば、安定した結果に繋がる」


 黒シャツに白髪の少女は、さらに首を傾げる。


「必ずしも成長できるとは、限らないんじゃないの?」


「かもね」


「それは、非効率じゃないかしら」


「望む方向に積み上げた能力は、後になっても腐ったりしないさ。結果にならなくてもね」


 ふーん、と、ヴァンピは分かったような分かってないような返事をする。


「それが、あなたの育成方針なのね」


「そうとも言える」


「甘いと思うわ」


「かもね。でも、強く結果を求めているわけでもないし」


 俺がそう言えば、ヴァンピは、口をもごもごとさせる。彼女は岩の床の上に体育座り。立てた膝の下、下には黒のエナメル質なホットパンツを履いており、そこから伸びる、細く白い太ももが眩しい。俺は変なところに目が行かないように、ヴァンピの顔に目を向ける。


「君のことを忘れてるわけじゃないよ、ヴァンピちゃん。あくまで、手持ちの仲間を大事にしながら行きたいなーって話」


 俺がそう言えば、ヴァンピは、つん、と小さく口を尖らせる。


「べつに、私は忘れてもらっても構わないけど」


 と、マルメロから声が上がる。


「ご主人さま。全方位に甘い顔をしているのは非効率的だと思います」


「じゃあ話を戻そうか」




 俺は、戦闘中のよくある図を描いていく。俺が居て、俺のそばにゴールデンちゃんとポイズンアントが、敵の近くに、マルメロとブルーバードが。


「実際に攻撃する機会が多いのは、マルメロとブルーバードが多いから、やっぱり攻撃を強化するならそっちかな」


 ポイズンアントは、本人の希望通りなら装甲や防御力系を上げていった方が良いんじゃないか。


 と、はい、と青いカッパを羽織った少女も手を挙げる。


「はいブルーバードちゃん」


「わたしをメインのアタッカーに据えられても困る」


 ブルーバードは現在、空中に逃げ、隠れながら、打点を稼ぐ役割を担っている。確かに、ブルーバードを強くしすぎると、ヘイトが完全にブルーバードに向く。ブルーバードは飛行駒であるから、狙われたとしてめったに攻撃は当てられないだろうが。注意されれば、ブルーバードの攻撃の成功率が下がるかも。


「確かに。じゃあまぁ、攻撃を高めるなら」


 と、俺はムカデ人こと、マルメロの方に目を向ける。ほか三人が少女型なのに対して、マルメロは成人の体系に近い。背は高いし肩もでかい、ふともももでかい。彼女は正座で座っているが、そこにみなを並べれば一人だけでかく、ひときわ目を引く。


「メイン戦力である所の、マルメロになるのかな」


「私としては、まぁ、異論はありませんが」




 じゃあ、次はマルメロの強化方法について。


「今持ってる“黒牛魔のカード”は、苦労して、強力な助っ人に手伝ってもらってゲットした超強力なカード。多分、エリア5に到達したとしても、そこで出会える魔物からのカードの更新は無いと思ってる」


 “黒牛魔のカード”。特殊な能力は持たないものの、基礎性能がめっぽう高く、拳だけでやっていけている現状。まぁ、今まさに足りなくなって来ている所だが。


「だから、マルメロの強化について、装備カードの変更はないかな」


 ホワイトボードに“マルメロの強化”という枠を作って、箇条書きで“装備カード”と書き加え、傍線で消す。


 と、マルメロが手を挙げる。


「はいマルメロちゃん」


「……。現在、手の届く範囲のもので、手に入ったカードを私が装備するより、手に入る魔物シェルの方が、戦力としては強力です。強みを高めるならやはり、私ではなく、魔物シェルに強みを重ねることを考えた方がよろしいのではないでしょうか」


 まぁ……それは確かに。“黒牛魔”は、遠征で苦労して手に入れたカード。一方、ブルーバードやポイズンアントは、その辺で手に入った魔物シェルだ。であるのに、マルメロと肩を並べるか、それ以上か、している。


「この前手に入った、“毒薔薇の騎士の魔物シェル”を呼び出すというのは……」


 すっ、とみんなの雰囲気が冷たくなった。


「無しにしてもー」


 無しにすると、今の手持ちの魔物シェルは、ブルーバードとポイズンアントだけ。よしんば、ゴールデンちゃんが突然魔物シェルをくれたとしても、ゴールデンちゃんがやる気を出して戦ってくれる未来が見えない。今も、寝ているのか、黄金の餅は地面で平べったくなっている。


 ポイズンアントは護衛がしたい。ブルーバードはヘイトを稼ぎたくない。マルメロは、精霊より魔物シェルに強化すべきだと思っている。


 うーん……、


「……じゃあ、俺か……?」


「違うと思いますけど」




 うーん、と俺はさらに考える。


「あー……じゃあ、逆に考えるか」


「逆に……と言うと?」


 と、そこに座るムカデ人ことマルメロが聞いてくる。


「俺たちが手に入れられる中で、強力そうな、使えそうなものを作る。それをみんなに分配して、合う人に装備させる、使用させる。そうやって強化していく」


 誰をどう強化するとかは考えず、とりあえずコスパの良い装備を獲得していく方向。


「なるほど。人じゃなく、場所的に効率の良いやり方を選んでいこう、という訳ですね」


 マルメロがまとめてくれた。


「そーゆーこと」


 さすがまるめろりかいがはやい。


「じゃあこの会議の意味は……あんまり、じゃないですか?」


「結論が出たから、そうなるね。みんなで現状を共有することには意味があった」


 と、俺はホワイトボードをガラガラと横にしまっていく。


「ま、そうと決まれば、情報収集だ」


 行き先は、商店か、鍛造屋さんか、仕立て屋さんか。長老さんに聞いても、面白いものがあるかもしれない。前までは聞けなかったことも、強くなった今なら教えてくれることとか。



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