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片手に山、片手に草原が見えるU字型の地形の溝。魔物を求めて、俺たちは幅の広い道を歩いていく。
「魔物の気配がします」
マルメロの警告に俺たちは立ち止まり、周りを見渡してその影を探す。
魔物の到来を待った。魔物は、俺たちの気配を見つけるとこちらに向かって寄ってくる。寄ってくる魔物は基本的に好戦的だが、そこらに居る魔物すべてが好戦的というわけではなく、俺たちを見つけて近づくような魔物が好戦的というだけだ。
音を聞き、風に耳を傾ける。空は快晴、大きな綿雲がゆっくりと空を流れていく。
来ないな。
「マルメロ?」
「詳しくはわからないです」
マルメロの魔物気配察知。どういう原理かは知らないが、近くに近づいてくる魔物が居るとマルメロが事前に教えてくれる。知らせる魔物は、接近中の敵性個体に限る。精霊としての機能なのだろうか。今のところ、その的中率は100パーセント。
つまり、この近くに居るのだ。俺たちがまだ気づいていないだけで。
見えてないなら、地中か、空中か……幻覚?
「ブルーバード、空を飛んで高くから知らせて。ポイズンアント、先に魔物形態で迎撃準備。マルメロはまだ俺の近くに」
白煙が上がり、青い巨鳥が風を巻かせて地面を飛び立つ。目の前にオオアリの巨体が立ち上がり、横たわる。この間、まだ俺たちへの接触はない。
「……迎撃型か?」
単純に、どこか見えない所で魔物が待っている可能性もある。見えない所と言っても、後ろは今来たばかりの道、前方は、徐々に曲がっていく溝の道。エリア3の魔物は基本エリア3から大きく逸脱はしない、戦闘中でないなら特にだ。
前に進めば、その姿が見つかるかもしれない。
「マルメロ、ポイズンアント、前進するよ」
俺たちは慎重に足を進めていく。
と、分かった。そこに居た。
「なんか居ますね」
それは視界の滲み。赤茶けた地面の上、山肌を後ろにして、何か視界を滲ませているものがそこに佇んでいる。それは大きめの塊……高さは、ポイズンアントを超えている。
その輪郭に目を凝らせば……それは透明で、地面に根っこのようなものを下ろし、そこから植物のように茎が立ち上がって上に体を伸ばしている。
「植物……かな。透明迷彩」
「透明は迷彩なんですか?」
「知らない」
立ち上がった茎の上に、葉っぱのようなものが付いている。葉っぱ……二枚重ねの葉っぱ、縦でなく、横に広がる楕円の葉っぱ。
「透明な体で隠れて、獲物が近づいたら襲うタイプかな。自分では動けないのかも」
「どうやってここまで来たんでしょうかね?」
「誰かに運んでもらったんじゃない?」
俺は少しだけ警戒を解いて、ポイズンアントの後ろから体を出して観察する。おそらく、上からでは見えていないだろう、俺は空に腕を振って、ブルーバードに発見を伝える。
大きな青い翼が下降し、体が降りてくる。
「……誰が行こうか?」
大きな、おそらく食虫……食肉? の、植物だ。大きな二枚合わせの口は、マルメロの頭から肩まで噛み付けそうで。つまりポイズンアントの巨体なら口に入らない。いつもなら適当にマルメロを投げる所だが、ここはポイズンアントだろうか? しかし、虫特効みたいな能力を持っていたらどうしよう。
情報が足りず、出す手がわからない。
後ろで、ブルーバードが片足を地面から上げ、足踏みをする。
「ブルーバード、行ってくれる?」
青い巨鳥は頭をうなずかせ、そして飛び立つ。風を撒いて、ポイズンアントの背中を乗り越え、滑空してそのまま向こうの透明な“何か”のもとへ。
おそらくは、音にも反応していた。透明な中で、ブルーバードの接近に、食肉植物は一斉に茎の上の口を開き、ブルーバードへと構えた。
しかし、ブルーバードはお構いなく体を突っ込ませ、強靭な足を入れて、その四つ足で茎を掴んで引き上げる。
大した抵抗もなく、植物の塊が浮き上がった。全部だ。ブルーバードは道の上を過ぎ去り、大きな翼をはばたかせ、旋回しつつ徐々に上へと飛び上がっていく。
高く、真上で彼女はそれを手放した。青い空に滲んだ何かは、風を切って落ちてきて。
ぐしゃと、地面に落ちた。
「ポイズンアント、追撃」
淡い、白い光が弾けるようにポイズンアントから生まれ、ポイズンアントは突進を始める。硬化した巨体で、地に落ちた塊をポイズンアントが跳ね飛ばした。
がしゃがしゃと足を動かして、ポイズンアントが勢いを止める。頭を動かして、はねて飛ばした先のその塊を見つめる。
それは本来透明な物質ではなく、何かしらの力を発動して“透明”になっていたのだろう。地面の上に、青々とした緑の植物の束が現れた。間もなく、しなしなと水分を失ったように萎れ、それは力なく地面に横たわった。
ぽぽぽと、アイテムがその体から排出される。




