↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
71/126

ー5

 俺たちは、店の前へと出てくる。二階の外廊下。少し高い足場から、木々の町の広がる景色と青空、町を取り囲む高い樹木の壁が見えている。


「とりあえず、防具はダメそうだね」


 俺は後ろを付いてくる、ポイズンアントの少女に呼びかける。


「聞きたいですか? ヒント」


 と、浮かぶ黄緑の火の玉が、投げかけてくる。


「いい感じの塩梅(あんばい)で教えてくれたまえ、マルメロ」


「“素材進化”という強化があります。これもまた、休憩洞窟で使える機能ですね」


「それは、本来はどういう経路で得られる情報なの?」


 うーん、と光の玉は唸っている。


「口コミ?」


 口コミ? 同業者とかだろうか。そういえば、他のソーシャはまだ一人も見ていないな。まぁ、今この町に滞在している感じ、この場所は大分閉鎖したコミュニティというか、立地がだいぶ僻地な可能性がある。


「俺は“素材進化”についての更なる情報を求めるよ」


「教えましょう。“素材進化”の要素は簡単です。一つのレッドパール、一つの魔物素材を消費して、レッドパールの経験値の溜まり具合に応じた強化と、魔物素材の特徴を引き継いだ変化が可能です」


 素材……進化。素材の特徴を引き継いだ進化。例えば、防御がさらに欲しいポイズンアントに、さらに防御力の高そうな素材を使って強化すれば、俺の求めているものが簡単に手に入るのかも。準備に必要な素材も少ない。


「一度消費したレッドパールは、なくなる?」


「アイテムとしては消失して、取り出せません。退化はいつでも可能ですが、消費したアイテムは戻りません」


「それは、普通にレッドパールを装備した状態よりも、強い状態になれる?」


「そうですね。せこせこ経験値を溜めるより、強力な倍率が掛かります」


「素材進化の状態で、ドロップに影響は?」


「ないです。“レッドパール装備状態”扱いではありません」


 なるほど。しかし不可逆要素か。経験値を溜めるのは大変で……いや、けど敵が強くなれば獲得経験値は上がっていく。一時的に強くなって、さらに経験値を集めやすく。そうしたら、投資した分のレッドパールもすぐに作り直せる……か?


「あの……ですね。そもそもの話、になるんですけど」


 と、空をぷかぷか浮かぶ黄緑色の光の玉が、歯切れ悪く切り出してくる。ここは外廊下の空の下。風が吹けば、俺たちの服を揺らし、頬を撫でていく。


「シェル魔物というのは、結構乗り捨てが想定されている要素……と、言いますか」


「乗り捨て?」


「あ! 違いますよ! 個体を大事にしないということではなくでですねあくまでその強さを頼る戦闘力的な船としての乗り捨てでして、それ以外の、例えば魔物を愛でる部分も多分に用意されてあるので決して魔物を大事にしないということでは……」


 マルメロは一息に言って、一度息を切らす。


「その……強いシェル魔物を手に入れて、ある程度使って先に進んで、また強いシェル魔物を手に入れて、型落ち……いえ、強さの進行に付いていけなくなった魔物は、休憩洞窟などに置いておく。そういう……奴でして」


 光の玉に顔は見えないが、マルメロは俺の顔色を窺っている。


「レッドパールは?」


「はい。レッドパールは、一つの魔物を使い続けるために用意された手段です。ですが、お気付きですよね? レッドパールを付けていれば、素材の収集に制限が掛かる。最初は頼もしくて、しかし共に進み続けるなら、あくまで賑やかしの戦力なんです。そのために、シェル魔物は、獲得できる時点で、手の届く範囲の中では強力に頼れる戦闘手段となっている」


 俺がブルーバードやポイズンアントを手に入れた時点で、今でもそうだが、二人は俺の戦力の中では頼れる仲間となっている。しかし、エリアを進めるごとに、彼女らの成長は緩やかな一方、マルメロは手に入れたカードを入れ替えるだけで強くなる。


 俺の歩みが今、遅くなっている? それは、ブルーバードやポイズンアントを使い続けようとしているから?


「レッドパールの装備で、魔物シェルのドロップのロックって掛かったっけ」


「いいえ」


 じゃあ、最近手に入らないのはたまたまか。確か、強さの彼我の実力差でドロップ確率が決まる。だから、もっと弱い、例えば今、層樹林の中で無双したりすれば、案外簡単に手に入ったりするのかも。

まぁ、それで手に入れても、ブルーバードやポイズンアントより強い魔物が手に入るかは分からないが。それとも、もしかしたら、二人は野生では元々そんなに強い種じゃない可能性もあるか。“シェル魔物”になった時点で、二人は強化されてるとか。


 ま、なんにせよ、魔物シェルのドロップは通常ごく低確率で、視野には入れておくが、あてにするようなものではない。


「まぁ、ブルーバードさんもポイズンアントさんもまだ出会ったばかりなので、現地適性もありますし、まだ防具や衣装卵などの強化要素が通じる段階と思いますけど。その……ですね。例えば、手持ちがだぶ付いて来た時に、育成の枠が増えすぎて、進めなくなったとしましょう。そういう時に」


 光の玉は、空の下、木製の欄干の隣でふわふわと浮いている。


「“これで育成終わり”と。区切るための要素としては、いいんじゃないですかね。強い少数に育成リソースを注いだ方が、早く先に進めます。やり方は、ご主人様の自由です。別に、今使って、新しいレッドパールの育成を始めてもいいと思いますよ。自由なので」


 ふーん。手持ちのシェル魔物の乗り換え、か。


 ま、今は選ぶほどシェル魔物を抱えているわけではない。先に進むなら、ただ手元に居る仲間を大事にしながら、一歩ずつ積み上げるだけだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。