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ー4

 頭に金色を帯びたトカゲが、ぬるぬると地面の上を歩いて、向こうへ。間に、改めてポイズンアントが立ち、その向こうにマルメロも立っている。一人だと止められなかったが、二人同時なら止められるだろうか。


 まぁいい、本命はそっちじゃない。俺は横にずれて、歩いていくトカゲの姿を見送った。


 草原の上で、平たいトカゲが立ち止まる。にゅにゅにゅと、金色の餅がその頭から抜けてくる。青い鳥が飛び立ち、空を飛んでいく。


 染み出た金色の餅は、まだ頭にまとわりついて、その動きを拘束している。べちょ、と、ゴールデンちゃんがその体から飛び立った。


 金色の餅は地面を何度か跳ねて、大きく迂回して俺の元に戻ってくる。向こうで、トカゲは、自由になった体で体の向きを直し、こちらへと振り返る。


 頭上で大きな青い鳥が空を舞っている。きらきらと、何か綺麗な粉が舞い落ちてくる。




 先に仕掛けたのはブルーバード。空から大きな体が風に乗って降りてくる。銀色の付け爪が付いた黒い鳥足が、まっすぐ地上のトカゲを狙っている。


 トカゲが、降りてくる足をぬるりとすり抜けた。これまでの攻撃と比べても、それをよけるのに苦は無かっただろう。


 地面に、鳥の足が突き刺さる。土が抉れない。まるで、その足が地面をすり抜けたようだった。


 ずれて、音がする。トカゲの体がひしゃげて地面に押し付けられ、そこには四つに分かれた鳥の足跡。


 目を惑わす鱗粉の中から、大きな青い鳥の姿が現れる。


 それは位置の認識をずらす力を持つ鱗粉、それをまとう、蝶の魔物を倒して作った、特注のスカーフ。


 それは初見殺しで、何度も続ければ見破られ、効きづらくなるだろう。けど、この魔物にとってはまた初見で、そして、その初見で倒し切れば問題はない。


 大鳥は頭を振り上げて、クチバシをトカゲの体に振り下ろす。拘束されれば、それは脆い体だった。鳥足を押しのける力もなく、トカゲは地面に押し付けられたままクチバシによるつつきを食らい続け。


 やがて、色を失ってその場に横たわった。ぽん、と、手前で白煙を吐いてポイズンアントが人の姿に戻る。


「あ、あるじ様! すみません! 私が、私が止められなかったばっかりに!」


「大丈夫だよ、ポイズンアントー。今回はみんな難しかったねー。何より、ゴールデンちゃんが居てくれて良かったよ。助けてくれて、ありがとね」


 と、俺は頭の上を見上げる。俺の頭の上には、定位置とばかりに金色の餅がへばり付いて乗っている。寝ているんだか起きているんだか分からないが、いつもこうやって、俺の一番そばで、俺に迫る危険な魔物を見張ってくれていたのだ……と思う。


「ブルーバード! 良い感じだね!」


 と、俺は向こうの大鳥に声を掛ける。大きな鳥の頭がこちらを向いて、そして、白煙を吐いて人の姿に変わった。青いカッパの上に、大きすぎるまだらの緑のスカーフを首に巻いて、それから足から外れた付け爪を拾い、背中に後ろに付けて吊るしている。


 俺からそっちに歩いていく。ブルーバードはいつも通り、何の気もなさそうにこっちを見ていたが……。


 目が合えば、ふいと、少女は目を逸らした。


「どうしたの? ブルーバード」


「わたしも……止められなかった。ごめん」


「確かに。ちょっとひやっとしたねー」


 と、後ろから二人も近づいてくる。


「ご主人さま。その、さすがに……」


 と、黒牛の魔人ことマルメロが話しかけてくる。俺はそちらに振り返る。


「うん。……そろそろ、防具は更新した方が吉かなー」


 俺は、身にまとっている紫色のシャツを見下ろす。これは魔物の素材で作った防具。防具も武器も、耐久度が設定されており、それがゼロになるまでは壊れないが、ゼロになれば保護効果や能力を失う。


 どれくらい持つのかと、同じ防具を着続けていたが……作ったのは、結構前の、余りものの素材でだ。俺がこのチームの要となり、弱点となるからには、俺の防具も上等なものに揃えなければ。甘えと、仲間への信頼は違う。


「次は、最優先で俺の防具を作ろうか」


「……はい。私もそれが良いと思います」


 多分、マルメロとしては今から撤退してでも作って欲しい気持ちなのだろう。黒牛の表情の中にも、俺のことを心配する感情が現れている。


「心配かけてごめんね。俺としては、このまま今日でエリア3に行きたい所だけど……どうかな?」


 と、マルメロの視線は、俺の真上に上がる。


「……まぁ、ポイズンアントさんも居ますし。ゴールデンさんも居ますし。防衛の戦力が足りてないとは、私も思いませんけど」


 ポイズンアントも、今回相性が悪かっただけで、基本ほとんどの相手に有効だ。


「じゃあ、とりあえず今日はこのままで。帰ったら、最優先ね」


 マルメロも、ブルーバードもポイズンアントも、若干不服そうな雰囲気があったが、みんな頷いた。


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