↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/126

ー4

 ブドウドラゴンは頭を掲げてこちらを見つめる。首元にたわわに実った紫色のボールたちが、きらきらと好戦的に点滅を繰り返す。


「なるほど! いいね! これでようやくオイラも本気を出せる!」


 一つからくりを見破った。ブドウドラゴンはその事実を気に掛けることもなく、彼は楽しそうにマルメロの方を見つめている。


「こっからさきは手加減なし! オイラの振るう素敵な爆弾を、ひとつ残らず避けてみろ!」


 身震いをした。ブドウドラゴンの足元に……ボトボトボトと、たくさんのボールが積み重なる! さっきより多い!


 ぴかぴかぴかと、爆弾はやはり一つずつ点滅……ってああ! すべての点滅が終わる前に、ブドウドラゴンが体を一薙ぎ! 爆弾が部屋の中に散らばる!


「ご、ご主人さま!」


「任せて! 俺が全部見てる! マルメロはただ俺の指示を信じて避けて!」


「はい! 得意です!」


「右!」


 マルメロが迷いなく右側に跳んだ。


「後ろ! 右!」


 彼女の足元の爆弾が爆発する。右側の爆弾が、関係ない方向の爆弾が。


「右! 後ろ! 左側まで駆け抜けて!」


 爆発、爆発! 再び爆発! あちこちで衝撃と音が鳴り、頭がくらくらとしてくる。


 避ける間にドラゴンは首を揺らしてブドウを落とす! 体を回して尻尾を振りぬく! ふりまかれる無数の爆弾! 


 地面に、天井に、壁に、爆弾はころころと転がって光り、爆発を繰り返していく。俺はただ見ていた。見て、覚えて、爆発するルートを構築して、その指示をマルメロへと伝えるだけだ。


 頭の酸素か栄養かが足りなくなってきた。ぼーっと見たままそれでも指示と思考は止めない。


 そして、ブドウドラゴンが体の動きを止めた。止めた、いや、首のブドウがもうないのだ。俺は続くルートをただマルメロへと指示していく。爆弾はルール通りに順番に爆発していって。


 やがて、音が鳴りやんだ。青い岩の洞窟はしかし欠けも崩れもしていない。丈夫な洞窟だなぁ……。



 静かになった、緑の混じった青い岩肌の洞窟の小部屋で、すっきりとした紫色の、つるつるとしたトカゲがそこに佇んでいる。


「合格!」


 ムラサキトカゲは、ひときわ大きく宣言した。


「ここに来て、寝て起きたら、入って来た穴が樹木で埋まっててよぉ。仕方ねーんでひたすら寝てたら、体が鈍って仕方ねーぜ。でもひと暴れしたら体がすっきりしたよ! ありがとな!」


 もう、戦意はない? 近づいても大丈夫なのだろうか?


「そうだ! これだけすっきりしたなら、小さくなった元の穴でも潜り抜けて通れるかもしれないぜ!」


 と、ドラゴンは体を動かして後ろを見る。そこには、たしかに穴がある。どこから伸びてきているのか、樹木の根っこが穴を狭くしているが、その穴は完全には塞がってはいない。


「オイラの憂さ晴らしに付き合ってくれてありがとうな! おかげで助かったぜ! お礼といっちゃなんだが、いくつかアイテムをくれてやるよ!」


 ムラサキトカゲは体をふるふると振る。どういう原理か、ぽこぽこぽこと、トカゲの体からアイテムが生まれ、地面へと落ちていく。


「じゃ、俺はこれでおさらばだ!」


「トカゲさん、君が通った後のその穴は塞いでもいいかい? 俺たちは、ここの洞窟に現れてた魔物たちを、どうにかするように言われててね」


 ふむ? と、ムラサキトカゲは俺の方に頭だけ向けている。


「魔物か? “フルーツゼリー”なら、たぶんオイラの匂いにつられて、こっちの穴に来てただろうから、オイラが帰ったなら勝手に居なくなると思うがな。ま、心配なら塞いだらいいんじゃないか?」


「そうなんだ。答えてくれてありがとう!」


「おう! じゃあな!」


 と、ムラサキトカゲはその壁の下にある小さな穴に頭を付けて、するすると体を中に滑り込ませていく。両手両足を閉じたら蛇みたいだ。ブドウドラゴンは体をくねらせて、穴の奥へと消えていった。



 俺は、小部屋の中に佇むカエル人ことマルメロの元へと駆け寄る。


「お疲れさま! よく頑張ったね!」


「ご主人さま! 素晴らしい指示でした!」


 マルメロは、若干疲労が滲んでいるようだが、それでもまだ元気に振る舞って俺を振り返る。


「いやいや、俺なんて後ろで見てただけだし、頑張ったのはマルメロだよ」


「いえ! 私の腕っぷしだけでは敵う相手では無かったので……今回の勝利はご主人さまあっての勝利です!」


「そっか! じゃあ俺たち二人の勝利だね!」


 俺は両腕を掲げると、マルメロは俺の意思を汲み取り、その両手を上げる。


 ぺち、と、二つの手の平が合わさった。




「これで、洞窟の中の魔物のお掃除は、終わりかな? ドラゴンさんは何を落としてくれたんだろう?」


 俺はそちらの地面を見ると……銃、銃がある。俺は歩み寄り、青い地面に落ちていたその銃を拾った。


 ごてごてと大きめの、手の平に収まる程度の拳銃。茶色い木製の部分と、黄金色の金属製の部品とあり、側面から中の弾が見えている。アンティークで個性的な銃だ。


「武器だ! 使えるのかな?」


「ちょっと貸してもらってもいいですか?」


 と、マルメロがペタペタと向こうから歩いてくる。俺が彼女にそれを見せると、マルメロは手の指先を銃に触れさせるだけだ。


「“ブドウドラゴン”の“おたから”、“爆弾銃”です! 引き金を引くと爆弾が射出され、一定時間の経過ののちに、爆発します! 弾は側面から見えている数だけ撃てて、時間経過で弾は復活します!」


 すごい、そんなん分かるんだ。精霊の特権かなんかなのかな?


「敵の攻撃以外にも、厄介な障害物の破壊などにも使えそうですね。弾の回復速度にもよりますが、装填されてある弾の数に限りがある以上、その武器をメインに据えて戦うことは厳しいでしょうか。あくまで支援用の火力武器という感じですね」


「へー、いいもの貰っちゃったー。これで、少しはマルメロも楽になるね!」


「わ、私の方が強いですよ。可能性もあります」


 自身の地位が脅かされると思ったのか、マルメロは慌てた様子で言ってくる。


「そうだね! あくまで要所に刺す的な使い方か……これからも頼りにしてるよ、マルメロ!」


「はい!」


 マルメロは顔に満面の笑みを浮かべて返事をする。


 俺たちは散らばったアイテムを回収し、青い洞窟を帰っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。