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ブドウドラゴンは頭を掲げてこちらを見つめる。首元にたわわに実った紫色のボールたちが、きらきらと好戦的に点滅を繰り返す。
「なるほど! いいね! これでようやくオイラも本気を出せる!」
一つからくりを見破った。ブドウドラゴンはその事実を気に掛けることもなく、彼は楽しそうにマルメロの方を見つめている。
「こっからさきは手加減なし! オイラの振るう素敵な爆弾を、ひとつ残らず避けてみろ!」
身震いをした。ブドウドラゴンの足元に……ボトボトボトと、たくさんのボールが積み重なる! さっきより多い!
ぴかぴかぴかと、爆弾はやはり一つずつ点滅……ってああ! すべての点滅が終わる前に、ブドウドラゴンが体を一薙ぎ! 爆弾が部屋の中に散らばる!
「ご、ご主人さま!」
「任せて! 俺が全部見てる! マルメロはただ俺の指示を信じて避けて!」
「はい! 得意です!」
「右!」
マルメロが迷いなく右側に跳んだ。
「後ろ! 右!」
彼女の足元の爆弾が爆発する。右側の爆弾が、関係ない方向の爆弾が。
「右! 後ろ! 左側まで駆け抜けて!」
爆発、爆発! 再び爆発! あちこちで衝撃と音が鳴り、頭がくらくらとしてくる。
避ける間にドラゴンは首を揺らしてブドウを落とす! 体を回して尻尾を振りぬく! ふりまかれる無数の爆弾!
地面に、天井に、壁に、爆弾はころころと転がって光り、爆発を繰り返していく。俺はただ見ていた。見て、覚えて、爆発するルートを構築して、その指示をマルメロへと伝えるだけだ。
頭の酸素か栄養かが足りなくなってきた。ぼーっと見たままそれでも指示と思考は止めない。
そして、ブドウドラゴンが体の動きを止めた。止めた、いや、首のブドウがもうないのだ。俺は続くルートをただマルメロへと指示していく。爆弾はルール通りに順番に爆発していって。
やがて、音が鳴りやんだ。青い岩の洞窟はしかし欠けも崩れもしていない。丈夫な洞窟だなぁ……。
静かになった、緑の混じった青い岩肌の洞窟の小部屋で、すっきりとした紫色の、つるつるとしたトカゲがそこに佇んでいる。
「合格!」
ムラサキトカゲは、ひときわ大きく宣言した。
「ここに来て、寝て起きたら、入って来た穴が樹木で埋まっててよぉ。仕方ねーんでひたすら寝てたら、体が鈍って仕方ねーぜ。でもひと暴れしたら体がすっきりしたよ! ありがとな!」
もう、戦意はない? 近づいても大丈夫なのだろうか?
「そうだ! これだけすっきりしたなら、小さくなった元の穴でも潜り抜けて通れるかもしれないぜ!」
と、ドラゴンは体を動かして後ろを見る。そこには、たしかに穴がある。どこから伸びてきているのか、樹木の根っこが穴を狭くしているが、その穴は完全には塞がってはいない。
「オイラの憂さ晴らしに付き合ってくれてありがとうな! おかげで助かったぜ! お礼といっちゃなんだが、いくつかアイテムをくれてやるよ!」
ムラサキトカゲは体をふるふると振る。どういう原理か、ぽこぽこぽこと、トカゲの体からアイテムが生まれ、地面へと落ちていく。
「じゃ、俺はこれでおさらばだ!」
「トカゲさん、君が通った後のその穴は塞いでもいいかい? 俺たちは、ここの洞窟に現れてた魔物たちを、どうにかするように言われててね」
ふむ? と、ムラサキトカゲは俺の方に頭だけ向けている。
「魔物か? “フルーツゼリー”なら、たぶんオイラの匂いにつられて、こっちの穴に来てただろうから、オイラが帰ったなら勝手に居なくなると思うがな。ま、心配なら塞いだらいいんじゃないか?」
「そうなんだ。答えてくれてありがとう!」
「おう! じゃあな!」
と、ムラサキトカゲはその壁の下にある小さな穴に頭を付けて、するすると体を中に滑り込ませていく。両手両足を閉じたら蛇みたいだ。ブドウドラゴンは体をくねらせて、穴の奥へと消えていった。
俺は、小部屋の中に佇むカエル人ことマルメロの元へと駆け寄る。
「お疲れさま! よく頑張ったね!」
「ご主人さま! 素晴らしい指示でした!」
マルメロは、若干疲労が滲んでいるようだが、それでもまだ元気に振る舞って俺を振り返る。
「いやいや、俺なんて後ろで見てただけだし、頑張ったのはマルメロだよ」
「いえ! 私の腕っぷしだけでは敵う相手では無かったので……今回の勝利はご主人さまあっての勝利です!」
「そっか! じゃあ俺たち二人の勝利だね!」
俺は両腕を掲げると、マルメロは俺の意思を汲み取り、その両手を上げる。
ぺち、と、二つの手の平が合わさった。
「これで、洞窟の中の魔物のお掃除は、終わりかな? ドラゴンさんは何を落としてくれたんだろう?」
俺はそちらの地面を見ると……銃、銃がある。俺は歩み寄り、青い地面に落ちていたその銃を拾った。
ごてごてと大きめの、手の平に収まる程度の拳銃。茶色い木製の部分と、黄金色の金属製の部品とあり、側面から中の弾が見えている。アンティークで個性的な銃だ。
「武器だ! 使えるのかな?」
「ちょっと貸してもらってもいいですか?」
と、マルメロがペタペタと向こうから歩いてくる。俺が彼女にそれを見せると、マルメロは手の指先を銃に触れさせるだけだ。
「“ブドウドラゴン”の“おたから”、“爆弾銃”です! 引き金を引くと爆弾が射出され、一定時間の経過ののちに、爆発します! 弾は側面から見えている数だけ撃てて、時間経過で弾は復活します!」
すごい、そんなん分かるんだ。精霊の特権かなんかなのかな?
「敵の攻撃以外にも、厄介な障害物の破壊などにも使えそうですね。弾の回復速度にもよりますが、装填されてある弾の数に限りがある以上、その武器をメインに据えて戦うことは厳しいでしょうか。あくまで支援用の火力武器という感じですね」
「へー、いいもの貰っちゃったー。これで、少しはマルメロも楽になるね!」
「わ、私の方が強いですよ。可能性もあります」
自身の地位が脅かされると思ったのか、マルメロは慌てた様子で言ってくる。
「そうだね! あくまで要所に刺す的な使い方か……これからも頼りにしてるよ、マルメロ!」
「はい!」
マルメロは顔に満面の笑みを浮かべて返事をする。
俺たちは散らばったアイテムを回収し、青い洞窟を帰っていく。




