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ゼリー人改めマルメロをいったん改めカエル人に戻し、俺たちは、青く暗い洞窟の中を進んでいく。道中で同じ魔物の色違いを何匹か見つけ、一匹ずつ倒していった。マルメロの実力からすると楽勝そうで、ここまで目立った疲労も彼女には見られない。
「あれ、行き止まりですかね?」
歩いていくと、俺たちは洞窟の行き止まりに行き着く。ここまで一本道であったし、出る魔物は全部倒せただろうか。
青くきらきらとした岩肌の洞窟。行き止まりの先には、そこに落ちたピッケルが置いてある。脇には、ちょうどいい感じの色の違う小さめの岩もある。
「使ってみて……いいのかな?」
「見つけたら拾っていいとは言ってましたね」
俺は、そこにあるピッケルを拾う。木製の長い持ち手と、その上部に付いた丸く曲がって尖った金属。
「飛び散る破片に気を付けてくださいね。本当は、ゴーグルとかマスクとかするんですよ」
「き、気を付けます」
俺は振り上げたピッケルを、恐る恐る岩の上に落とした。
と、妙な感じがする。ピッケルの鋭い切っ先は、小さな茶色の岩を叩いたが、砕けなかったし手ごたえもない。まるで砂袋でも突いたみたいに。代わりに、小さな岩は白い光を放ち始め……岩の部分がほどけていく。
ピッケルがすごいのかそういう岩なのか、岩は溶けて、中からいくつかの鉱石が現れた。黄色く半透明なサイコロ型の石。青く、薄く虹を帯びた真ん丸な石。
「取れた!」
「さすがです、ご主人さま!」
俺たちは、取れた石を懐にしまった。
俺たちは安心して道を戻り始めた。
「……待ってください。まだ、モンスターの気配がしますね」
「ほんと? どこかから入り込んで来たって言ってたし、どこかに通り道とかあるのかな?」
慎重に気配をたどって歩いていくマルメロ。俺はその背中を付いていく。やがて、マルメロは「あっ」と声を上げる。
「壁から出てきています!」
「なにっ!?」
見れば、確かに、今しがた魔物がそこから生まれ出てくる所だった。壁から、にゅーとゼリーの体が押し出されてくる。そういう生まれ方だったの!?
「とりあえずやっちゃいな!」
「あいあいさ!」
倒した。雑魚だった。
「いやー、それにして魔物ってのは不思議な生まれ方をするんだね。まさか地形から湧いて出てくるとは」
「そんなこと、ないと思いますよ?」
「……?」
なにげなく、さっきフルーツゼリーが湧いて出てきた所を見れば。
そこに穴がある。俺はそっちに近づく。
「なるほど、ここから侵入してきたんだね。穴をふさげば……今倒した魔物たちが帰れなくなるか。この向こうはどうなってるんだろう?」
俺が穴をのぞこうとすると手で制され、代わりにマルメロがその穴を覗いている。
「向こう側にも空間がありますね」
「ふーん?」
「壊しちゃいましょう」
「え? いいの?」
彼女は穴に指を入れ、ぺき、ぴきぺきとその穴を剥がして広げていく。
どうやら薄皮一枚で別の空洞と隣接していたようだ。洞窟の壁に、すっかり新しい道が出来ている。
「勝手に壊して……大丈夫だったかな?」
「考えてみてください、ご主人さま。私たちが請け負ったのはこの洞窟の安全です。脇に穴があり、すぐ壊せるような薄い壁の向こうに別の空間がある。報告に戻ったとして、じゃあ、依頼主が自分で調べる、穴を塞ぐ、あるいは放置するといった行動をとるでしょうか? 私たちの安全確保という仕事は、まだ完了していません」
そう……かも。一々確認を取るのも手間かなぁ? 勝手に壊しちゃったのは少し悪い気がするけど、まぁそうだな。その新しい道の安全確保も併せてやっちゃいえばいいのだ。もう壊しちゃったしな。
「なっとく! 進もうマルメロ!」
俺たちは洞窟の新しいわき道を進んでいく。雑魚ゼリーを何個か倒して。
「今度こそ……行き止まり、ですかね?」
洞窟は、奥で最後に小さな小部屋に繋がって終わっているようだった。ちょっと雰囲気が違う、湿っぽい空気がして、小部屋の手前から苔が生えたり、天井から緑のツタが垂れ下がったりしている。
「奥に何か居ますね」
「いわゆるボス……って奴なのかな?」
「挑戦しますか?」
「まー……見るだけ見ちゃおう。倒せなくても、強さの判定までは俺たちの仕事だ」
俺たちは、恐る恐る、苔の生えた青い岩の地面を中に進んでいく。
小部屋は、そこそこ広い空間。大体円形の行き止まり。壁や天井には緑色の苔やツタが付いている。
そして正面。小部屋の奥の壁には。
「……ドラゴン?」
というには少々小柄だったが、おおよそ俺3、4体分の図体の魔物が、そこに体を丸くして眠っていた。
紫色の、大まかには大型のトカゲのようにも見える。紫のトカゲだ。四足歩行の地を這う生き物。しかしその体表は、蛇の肌のようにつるつると光っており、何よりだ。
首に、たわわに実ったいくつもの、紫色の果実がなっている。トカゲの首の周りに、襟巻のように、あるはたてがみのようにまん丸粒々の何かが鳴っている。一粒一粒が、両手で持てるボールくらいある。
「手ごわそうだね……マルメロでも勝てるかな?」
「まだ戦ってみないことには……今まで遭遇した魔物より、一回り強い魔物であることは確かです」
マルメロの状態は健康良好。疲労の色も見えないし、戦うのなら出直す理由もない。
「じゃあとりあえず……起こしてみよう。敵じゃないかもだし」
「魔物は基本的に敵対です」
「そうなんだ。じゃあ倒せるなら倒そう。やばそうなら逃げよう。大丈夫、カエルの足は速い」
「私任せですね」
俺は小部屋の入り口に戻り、マルメロの様子を外から窺う。




