ー2 トラップマップ
俺たちはひときわ広い空間に出てきた。
それはボックス状の一つの部屋。地面も壁も、相変わらず絡まった木の根で出来ているが、なんだかここは樹皮が若々しい、全体的に緑だ。
そして、立方体の大きな空間の真ん中に、マトリョーシカみたいに、天井からつり下がった、一回り小さな箱が一つ。
「あ、後ろ閉まりました」
マルメロの声に、振り返ってみれば、今来た通路の入り口が塞がって閉まっている。
「壁からモンスター出てきます!」
「マルメロ、来世でまた会おう」
「諦めないでください! ちゃんと逃げて!」
俺は爆弾銃を構え、マルメロの背後に。
視界の箱の右奥の上の隅、そこからモンスターがわらわらと湧いてくる。トカゲ型が、一、二、三……――
「えぇい、先手必勝!」
俺は湧いてくる穴へ向かって爆弾銃を構え、引き金を引く! 緩やかに放物線を描き、紫色の玉が飛んでいく。玉は奥の壁上方に当たった後、明滅して起爆!
爆風に、一気にトカゲがバタバタと落ちていく!
「ご主人さま、ナイスです!」
「マルメロ、あの数行ける!?」
「任せてください! 全員串焼きにしてやりますよ!」
「串は!?」
マルメロが鋭い爪を掲げて向こうへと走っていく。よって、俺はがら空きとなる。マルメロ……マルメロが二人居ればな……。仕方ない、爆弾銃で頑張って自衛しよう。
幸いにも、離れた俺を見つけてわざわざ寄ってくる個体は現れず、マルメロことライオン人が敵をひきつけ、その鋭い爪と牙で多数を相手に大暴れ!
いやー……マルメロちゃん強いなー……。徐々に、おなかを見せてひっくり返るオオトカゲが見えてくる。一匹が倒れた後はもう、なし崩し的に片付いていく。
合計八体が、マルメロの周りですべて倒れた。
「ご主人さま、やりました!」
「あっぱれ!」
と、壁が動いた。生き物じゃない、壁が動いたのだ。向こう側の壁が動き、長く太い緑色の蔓が、生き物のように壁の下から伸びてくる。
「マルメロ!」
「いいえ、大丈夫です!」
マルメロは引いたが、緑色の蔓が狙っていたのは、散らばったひっくりトカゲたち。太い蔓は、でかいトカゲの体をむんずと掴み、そのまま壁の向こうへと引きずり込んでいく。
なるほど。終わった子を回収するのね。
と、同時に。天井から釣り下がっていた、空間中央の巨大な立方体も、何やら動き始める。
箱の下の根がもぞもぞと動いている。引いていく、絡まった緑の根が縮んでいき、箱の底に穴が現れ、徐々に穴が大きく広がっていく。
箱の下面が解け、側面すらもほどけていく。中から現れたのは……一回り小さい、また同じ形の立方体だ。
「また来ます!」
「これを繰り返して、上の箱が最後まで無くなったら終わりかな!」
「なるほど!」
箱が何層重なっているかは分からない。が、おそらく倒していけば最後にはなくなるだろう。
次に開いたのは、視界左奥の壁の下。そこから……透明な、大きなカエルが現れてくる。
それはまるで透明な餅。色が透けて、歩くたびに体がぽよんぽよんと揺れている。体の中には、動かない泡が無数に浮かんでいる。
「マルメロ、おいで!」
「え!? あ、はい!」
俺は、懐から“センマイウロコのカード”を取り出す。センマイウロコは、黒くて薄い、硬い鱗を体にまとった、細く鋭い形のトカゲ。その鱗は逆向きに逆立って生えており、その体で体当たりするとまぁ痛い。
マルメロが珍しく苦戦したので、撮っておいたカードだ。
俺はカードをマルメロに投げ、白煙を吐いて彼女の姿が変わる。吐き出されたカードが、まるで俺の手元を目指すように飛んでくる。
そこには、マルメロ改め黒トカゲ人の姿が。全身が黒く、また細く引き締まっており、背中の下から細く長い尻尾が生えている。
「おお! カッコいい! じゃないや! 爪と牙じゃ難しそうだから、そっちの体で戦って!」
今回の相手は、おそらく不定形の、斬撃が無効なタイプ。マルメロ改め黒トカゲ人の、手の甲から腕の上側面にかけては、鱗が黒く逆立って生えており、その腕の装甲で擦るように殴れば、あの不定形の体を削れるダメージが入るだろう。
「了解です!」
マルメロが威勢よく、あっちの透明ガエルの群れに突っ込んでいく。透明な餅ガエルはぺったんぺったんと、のんきに気ままに跳ねている。
「倒しました!」
マルメロが、四体のカエルを行動不能にしてこちらに帰ってくる。
壁から蔓が生え、少し縮み、固まった透明なカエルの置物を回収していく。と同時に、頭上に浮かんだ立方体の箱が、下からほどけて解けていく。
中から、まだ一回り小さな箱が出てきた。戦いは続きそうだ。
「上ですね!」
見上げれば、そこに暗い穴が開いていた。何かがそこから飛び込んでくる。
それは、大きく青いカラス。小さく留まった姿でも、おそらくその頭は俺の身長を超えるだろう。
「マルメロ!」
「変えますか!」
俺は再び“ファイアライオンのカード”をマルメロに投げる。“センマイウロコ”は、その逆立った鱗を活かした擦過ダメージ。そこに羽毛のように体を覆うクッションがあれば、まともにダメージが通らない。だから、こっちは、ライオンの爪と牙。
大きな鳥が俺たちの頭上を飛んでいる。旋回して飛んでいる間に、マルメロの変身が地面で済む。




