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第八話、ダンジョンで遊ぼう!II

 俺たちはカミカミ・“ヴァンピ”の元を訪れたが、その強大な気配により一時退いた。今俺たちがすべきは、彼女を超える戦力を整えること。


 具体的には、何をするかというと――




「さぁ、今日も歩きましょう!」


 俺たちの前に広がる層状の樹海。そこは見慣れたダンジョン[層樹林]。


 俺はマルメロが歩くまま後ろを付いて歩いていく。



「あれ? こんなところに道なんてありましたっけ?」


 マルメロに言われて、俺はそちらを見る。


 この迷宮の地形は、平らな地面と天井、そして足元から生える幹や、樹木が絡まって出来た壁などで構成されている。


 俺たちが立ち止まったのは、マルメロが歩いていた壁の近く。一見分かりづらいが、よく見てみればそこに、人一人が通れるような隙間が空いている。


 ダンジョンの地形は数日や一週間ほど経つと変わっている所を見かけるが、ここに前から、この隙間が空いていたかは分からない。


「とりあえず……行ってみる?」


 絡みあった太い枝、乾いた樹皮の間を、体を横にして隙間にねじ込ませる。


 隙間の向こうは、長い廊下のように、両側を壁に囲まれてまっすぐ続いている。


「おもしろーい、まるで隠し通路みたいだねー」


 と、隣に居るマルメロを見上げれば、同時に、視界に入った変化に気づいた。


 俺はそのまま後ろを振り向いた。隙間が、今に埋まっていっている。俺が手を伸ばす暇もなく、俺たちが今入ってきた隙間は、周りの壁と同じように変化してしまった。


「おわた。帰れない」


「え? あ!! す、すみません! わ、私がこんなもの見つけなければ……」


 ライオン人ことマルメロは、背後の埋まってしまった壁を見つめておろおろとうろたえている。


「ダンジョンは、人を飲み込んで消化するみたいな趣味はあるの?」


「いえ……ダンジョンは絶えず変化していますが、人が居る場所を完全な閉鎖空間にすることはないはずです。私たちは今背中を塞がれましたが、進んでいけば、どこかに出られるルートがある……それか、そうですね」


 マルメロは俯いていた顔を廊下の前方へと向けた。


「ここがいわゆる“トラップマップ”である可能性もありますね」


「トラップマップ?」


「はい。内部で、何かしらの課題や条件が設定されており、それをクリアすると解放される、特殊なエリアのことです」


「ふーん」


 俺たちは廊下の先を見つめる。


「一応……中で条件をクリアすれば、特殊な報酬やお宝を手に入れられることがあります」


「ほう、そいつは楽しみだね」


 まぁ、とりあえず出来るのは進むしかない。最近は、携帯食料などの備えも用意し始めている。少しは耐久出来るだろうか。




 カサカサと素早いトカゲが、天井や壁を駆け回る。


「ま、待ちなさい!」


 マルメロは、土気色のトカゲを追い、ぴょんぴょんと跳んでいる。彼女には、そこそこの跳躍力があり、鋭い爪で壁に引っかかることも出来るが、あのトカゲがやっているように天井の裏を走ることはできない。ただ彼女は地上から、走り回るそれを跳ねて追うしかない。


「マルメロ止まって!」


 俺は爆弾銃を構え、ブドウ型の爆弾を撃った。それは天井へと当たり、粘着性のある爆弾は天井に付いた。


 かさかさと天井を這い回るトカゲの、進行先にそれはある。トカゲは、目の前に現れた紫の球に、迂回しようとするが――


 紫色の球は明滅し、そして爆発した。爆風が天井を揺らし、そして、天井に張り付いていたトカゲが地面に落ちてくる。


「今です!」


 マルメロが飛び掛かり、鋭い爪で、ひっくり返ったトカゲのお腹を引っ搔いた。トカゲの表面には、土気色の、六角形の鱗のような装甲が覆っていたが、お腹はその鱗もなく真っ白だ。


 きゅうと、トカゲは両手両足を伸ばして気絶した。色が薄くなり、若干体が縮んでいく。ぽぽぽと、アイテムを吐き出した。 


「やりました、ご主人さま!」


「俺たちの勝利だね!」



 この迷宮の構造は、基本平たく広がった、樹木の層、それが何個も折り重なって縦に積まれている。層と層の間に、下から上まで繋がる幹、また壁状の層もあるが、基本は水平にマップが広がっている。


 だが、俺たちが今入っている特殊構造の内部は、基本、マス目に沿って線を引いたような通路である。左右が同じ幅の道が、まっすぐ伸びたり、折れ曲がったりして続いていく。


「上へと続くみたいですね」


 歩いて行った先に、坂状の構造があった。俺たちは、茶色の幹が絡まって出来た地面をギシギシ言わせながら登っていく。


「さっきから……明るさが均一だね?」


 ダンジョン[層樹林]は、上に行くほど、あるいは外側に行くほど、見える光が多くなる。しかしどうだろう、この場所は、さきほどから、まるで通路の少し外からぼんやりと光源で照らされているかのように、前に行っても後ろに行っても明るさが変わらない。


 また、そこそこの距離をまっすぐ進めているが、であるならば、俺の持っている地図とかなり地形が変わっている。


「特殊ダンジョンのようですね」


「特殊ダンジョン?」


 俺の先を歩くライオン人ことマルメロが、俺を振り返って答えてくれる。


「出入口が一つ、あるいは複数あり、内部に立ち入ると、そこは小さな別空間が広がっています。入口の裏に、その先がある訳ではなく、別の小空間へと繋がっている。そんな奴です」


 なるほど。異空間な小空間。


「なるほど。トラップマップ? だったから、ここはインスタントなエリアである可能性があるわけだ」


 じゃあ、メモしているマップを、いつもの探索用とは別にしなければ。道理で合わないと思った。


「そう言えば、トラップマップを出るための条件って、こっちに明示されたりしないの?」


「どうでしょうね? でもまぁ、難易度的な度合いじゃなく、出られないような構造になっているとは聞いたことがないので。明示されてなくても、探しつくしたら順当に出られるとは思いますよ」


「ふーん」




 そこは、光に照らされた樹木の籠の中。床も天井も壁も、枝や根っこが絡み合って出来ており、その向こうから、柔らかく温かい光を感じている。


「ここでは珍しい魔物も多いねー」


 俺たちは、分岐する道を一つずつ調べながら進んでいく。ぱっと見の袋小路を潰していくと、ここの“道”は、どうやら進路は一本のようであった。分岐路から進んで、続いていそうであれば、先に選ばなかった方の道を探索していく。


「そうですねー」


 マルメロは疲れも見せず、俺の隣を歩いている。出てくる魔物すべて彼女が倒してくれる。ありがてぇ。


 連日の狩りで、“透明なカード”の手持ちはそこそこある。しかし、今のマルメロの主兵装“ファイアライオンのカード”は、アストラにキャリーされて行けた場所で得られたカードだ。俺たちが行ける範囲だと、それを超える魔物はなかなか出ない。


 コレクター的にカードを集めて行ってもいいのだが……中々よさそうな魔物が見当たらず、貧乏性も発動してか、なかなか撮影の手が伸びなかった。


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