3-17
宿屋で一人。明かりを消せば、部屋は暗く、窓の外は星や月明かりに照らされ明るく見える。静かな今日の終わりのひと時。食事も湯浴みも済ませて。
と、黄緑色の光が近くに宿る。最近は、不規則に連絡が繋がらなくなるマルメロだ。まぁ、事前に申告があるので休み中は困ってはいないが。
何か言いたいことがありそうで、俺は寝間着でベッドを降りて、そっちに置いてあるポーチをあさる。ゴールデンちゃんならテーブルの上で平たくなっている。
カードを投げれば、そこに、白黒ワシ人のマルメロが現れる。
「夜分遅くですね。もうお休みになられますか?」
「少し眠いけど……今は、誰かと話していたい気分かな」
長期目標だった、レベルフロントの攻略が終わった。ここ最近の動機であった、ヴァンピの攻略も終わった。大きな目標がどちらも消えて、俺たちの予定は宙ぶらりんだ。まぁ、今はまだ休んで、暇に飽きない頃合いではあるが。
「ヴァンピのことは、マルメロ的には、もう終わったってことでいいの?」
俺はベッドに座って、椅子に座るマルメロと向かい合う。
「……まぁ」
「じゃあ、これからどうしようね。レベルフロントが終わったから、もうほかのフィールドにも行けるようになった……んだっけ? まだ、このエリアの端っこにぶつかるほど、動き回ってはいなかったけど」
「ご主人様」
と、マルメロは、柔らかそうな羽毛の太ももの上に両手を揃えて、背筋を立ててこちらに向いている。
「私から、大事な……お話がありまして」
前回の続きですかー? とか茶化せる雰囲気じゃなさそう。ちょっと楽しみにしてたのに。
「私は……一から九ぐらい伏せますが、とある理由で“カミカミ”という存在を追っています。広域への調査を掛けたところ……未特定の波源は、おそらく五種類であると推定されます。しかし、それらは広がり溶けきっていて……元の居所を、特定できない状態です。わかりやすく言えば、未管理のカミカミがあと五人居て、私はその居場所が分からず、それらを探しているということです」
ふーん。説明をされても、一から九が伏せられているので、ふわっとしか伝わってこないな。
「要するに、それを俺に手伝って欲しいってこと?」
「……私は、私だけでも、それをするつもりで居ます。もう、ご主人様にはヴァンピさんをお任せしているので」
「マルメロの願いなら、俺は力になる気で居るよ。いつもお世話になってるからね。一緒に居たいし」
俺がそう返せば、彼女は重々しく頭を下げる。
「……ありがとうございます。とは言ったものの、私も情報をほとんど掴めていないので……。まずは、世界を歩き、それらの情報を見つけるところから、始めることになると思います」
「それは楽しそうだね! 世界を回って冒険だ!」
正直、ヴァンピと同程度の力を持った存在が、この世界にほかにも居て。それがヴァンピのように未熟な存在でなかったとしたら。
俺が、俺たちが。俺たちの力だけで、どう立ち向かえばいいのか。分からないところもあるが……。
「あと……」
と、マルメロは続ける。
「もうすぐ、アーリーアクセスが開始されます。ゲーム内時間が現実時間に同期されますので、私も、今まで通りに常駐はできなくなるかと。出来る限り事前に予定を出すつもりではありますが、今後は、呼んでも居ない時間が出てくるので、どうかご容赦ください」




