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俺は……判断を誤ったのか? 今さっき、あそこで彼女を見逃してはいけなかったのか? 俺は調子に乗っていて、勝てる見込みのない再チャレンジを相手に許した? 俺はあそこで――
いや。それじゃ意味がない。頭を押さえつけて、無理やり腕を引っ張って。それじゃ意味ないんだ。
俺がここに来た目的を考えろ。もう一度踏ん張って、戦略を練り直せ。
そして第一優先は、ヴァンピを圧倒する力だ。切れる手札は。
俺は、懐に入れていたカードの入ったケースを取り出し、入り口をひっくり返す。手の上に、中に入っていたカードの束が落ちてくる。それは透明なカードに写された、数々のモンスターたちのカード。
カードホルダーと、マルメロに装備している魔物カード。その二つを除いて、俺の手元に手持ちのすべてのカードが揃っている。それらは、俺やマルメロが使うために揃えていたカードだ。そして。
「マルメロ」
俺は、俺の身長より高い、横たわった太い糸を挟んで向こうに呼びかける。
「なんでしょう!」
「良い作戦を思いついた」
「ほ、本当ですか!」
「あぁ。あの“ジャイアントクイーンスパイダー”は、マルメロが倒す。俺はヴァンピを倒す。お互い善処しよう」
「えぇ!? 私が一人であの巨大種を!? というかご主人さまがヴァンピさんを!?」
「餞別は、とびっきりのをくれてあげるよ」
俺の手の中に束ねられた、無数の魔物カードたちが。
発火する。赤い、オーラのような炎を放ち、そのカードの形を溶けていく。俺の手は、赤い炎にあおられても熱くはない。やがてすべての炎が溶け落ち、赤い炎は俺の手を離れ。
糸の向こう側の、マルメロの方へと飛んでいく。
「これは……“カードブースト”、ですか」
「全部使った。いけるか?」
少しの静寂。あちらは、二人を落としてとりあえず余裕が出たのか、白髪の少女は遠く向こうで、高みからこちらを見下ろし、俺たちの様子を窺っているようだ。
「……私も訳あって、あの子が、こちら側に欲しいんですよ」
「理由は言わないんだな」
「秘密はお互い様でしょう」
ポーチの中をのぞけば、ついでに二人のアイテム類が戻って来ている。ブルーバードのブースタージャケットとレッドパールを再び拝借して、自分の体に身に着ける。
「ヴァンピさんは、そっちに任せればいいんですね?」
「あのでかいシロクモは、マルメロに任せていいんだな?」
俺の見上げる先には、白いクモの上に浮かんだ、翼の生やした少女が居る。
「いいですよ。お互い善処しましょう」
「いつも、マルメロには苦労を掛けるね」
「それは言わないお約束でしょう」
俺は、ロケットブーストで空へと飛び出す。俺の下の地面、長く横たわった糸の隣を、赤いオーラをまとった黒い影が駆けている。




