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3-1

 俺たちがクリアした二つ目の部屋。ブドウドラゴンが最初に現れた辺りの壁に扉が現れ、薄く隙間が空いている。


 俺たちは、扉の前に集合している。


「マルメロ、ブルーバード、ポイズンアント。準備は良い?」


 その場には、黒い牛の魔人ことマルメロが立っている。青いカッパと銀色のジャケットを羽織った、小柄な少女がそこに居る。白いシャツを着た、長い黒髪の少女。髪には、青くてもじゃもじゃした紐の、髪飾りみたいなのが髪に付いている。ゴールデンちゃんはポーチの異空間の中に帰った。


 三人はそれぞれ頷いた。残る部屋はあと一つ。俺は、最後の部屋へと。


 扉を押し開け、中へと足を踏み入れた。




 おそらくヴァンピちゃんが作成した即席のマップ。残る三部屋目。


 そこは、まぁ同じ構造の空間だった。壁も地面も天井も、植物の根や幹が絡み合った面で出来ており、その隙間の向こうから、明るく白い光が漏れて来ている。


 今回の部屋はひと際広いかもしれない。もしくは二番目も、一番目より広かったのかもしれない。まぁなんにせよ、そこは一つの巨大な、箱形の樹層の空間。


 空間の中心、地面の上に、一人の少女が立っている。黒いカッターシャツに、黒いエナメル質のホットパンツ。髪は白く、頭の上に、内側に曲がった二本の短い赤い角が生えている。また、背中の後ろから、一対の黒い小さなコウモリのような羽と、それから黒いハートが先に付いた尻尾。


「ずいぶんとあっさり登場するんだね」


 俺は、広場の中心へと歩いていく。


「今さらじゃない。知ってる顔だもの」


「確かに。最後に待つのはどうせ君だ」


「あなたは、私を倒しに来たんでしょ」


「そうだよ。君のために、ずっと準備してた。嬉しい?」


 すっと、彼女の口の端が上がる。


「準備?」


「そう。君を倒す、その準備」


 彼女は両手を胸の前に持ち上げる。なんだ、もう、何か始めるのか?


 白髪の少女は、胸の前で二つの手の平を持ち上げて。


 ぱん、と鳴らした。


 俺は即座にその違和感に気づく。振り向き、見渡してみれば。


 俺の周りを歩いていた三人が居ない。魔物カードと、二つの魔物シェルが落ちていて、俺の手元にそれが飛んでくる。


 手の中に青い巻貝と、細長い緑の巻貝を握りこむ。呼んでも返事がなく、どころか、シェルの上から赤いバッテンの文字が浮かび上がり、表示される。


「……これは」


「ふふ」


 再び、そちらを振り返れば。


 白髪の少女は、それはもう、嬉しそうに笑っていた。


「どう? 大切に、積み上げて、準備して、用意してきたそれを、取り上げられる気分は」


「……これは、君の能力? 三人を、君のもとに奪ったの?」


「違うわ。ルールで禁止しただけ」


 ルール……この特殊空間のルールという奴だろうか。マルメロが、最初にデュエルフィールドだの言ってたな。もしかしたら、戦闘に細かいルールとか決められるのかも。例えば、シェル魔物と精霊の呼び出し禁止、とか。三人はそれを食らって、ここに居る顕現が解かれた。


 で、あるのなら、それは一時的なものだ。大したことじゃない。


「なんだ」


 それは、声に出ていたらしい。俺の言葉を聞いて、向こうの彼女が顔をしかめる。


「なんだ……って何? あなたは、あなたの大事な仲間を失ったの」


「このまま、君と、二人でやれって言うの?」


「そう……そうよ。何も持たないあなたを! これから、私が一方的に、なぶり殺しにしてあげる!」


 黄緑色の火の玉すら、俺の周りに確認できていない。マルメロが居ないのなら、今日はちょっと自由にやれそうだ。


 三人に装備させていた道具類は、俺の手元に残っているみたい。とりあえず、使えそうな道具を片端から俺に装備していく。武器はまぁ、能力のない刀だけか。ナックルはどうだろう、俺が作動させても、自爆でどんどん苦しくなる気がするなぁ。


「……なに? その顔」


 俺はアイテムウィンドウを閉じて、道具の調整を終える。抜いた刀を、ヴァンピへと突きつける。


「始めるのなら、早く始めようぜ」


「……」


 ただただ広い一つの空間の中で、対峙する俺と彼女は二人きり。声も、壁に届かずどこかに消えていく。ぱたぱたと、彼女の背中で二つの羽が風を揺らしている。


「楽に取れる頭だと思うなよ」



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