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状況を整理しよう。この第二部屋の相手はブドウドラゴン、勝利条件は見えていない。部屋全体に、彼の力の産物と思われる爆弾が生まれ、敷き詰められ、見えている端から爆発していく。こんなに贅沢な力の使い方をしておいて、相手がぬけぬけとガス欠で倒れるとは思えない。あるいは、俺たちが息切れして爆破に巻き込まれるのが先か。
今回は、この部屋の主であるブドウドラゴンを倒さなければいけない。ブルーバードは空を飛び、彼のことを攻撃も出来るだろうが、ブルーバード単体だと攻撃が読まれ、最悪ブルーバードだけが返り討ちにされる可能性がある。
俺とマルメロはまだ攻撃を避けるのに必死で、あっちの元までたどり着けないし、たとえ近づけて攻撃できたとしてもカエルカードでは攻撃が弱く、かと言って、“黒牛魔”に戻せば爆発を避けられない。
ブルーバードはさておき、俺とマルメロがこの空間の“爆発する波”を避けながら、ブドウドラゴンにダメージを与えるなら、どうすればいいか。
ヒントは、彼の足元だけ爆弾の実が生えてきていないこと。また、“黒牛魔”、レッドパール装備かつ“耐爆ベスト”装備のマルメロも、その爆発は避けるべきだと警告を発している。“耐爆ベスト”は“爆破属性”のダメージを大幅に抑えられる装備であり、ならば、普通に考えればここの爆破だって多少は受けられそうなものだ。
あるいは、それら“防御を貫通する”ような力が、ブドウドラゴンの操る爆破には宿っているのかもしれない。その“防御貫通”が強すぎて、彼は、爆弾を生む自分自身にすらダメージを与える。
だとしたら。ブドウドラゴンをあの安全地帯から引きずり出し、爆破の波に巻き込むことが出来れば。あるいは、飛んできた爆弾の実を、彼の体へと返すことが出来たのなら。
俺たちは、ブドウドラゴンを倒しうるダメージを、彼に与えられるかもしれない。
絶えず爆破の音が鳴り響き、壁や天井を連鎖する激しい破裂の波が広がっていく。うかうかしていればまた、俺たちの足元にもその波がやってくる。
ブドウドラゴンをあの陣地から動かすなら、ブルーバードでロケットしながらでもぶつけて、爆破の波に巻き込むか。しかし、それではブルーバードがブドウドラゴンに接敵するとき、そして爆破の波に近づいた時で二回、身が危ない。
まだ二部屋、次の第三部屋が残ってる以上、手持ちの駒を落とすことはあまり考えたくない。それでブドウドラゴンを落とせる確証もない。
まだ……まだ状況観察に回るべきか。ブドウドラゴン、彼の実力の底が知れない。種族はトカゲでいいのか?
再び、今度は右手から爆破の波がやってくる。マルメロが悠々空を跳び、それを避ける。ここまで離れていれば、ブドウドラゴンも爆弾バラマキもやってこないな。
とりあえずは……あのブドウドラゴン本体、防御力や攻撃力、機動力などの本体性能を見るべきか。この状況が続く限り、彼はあの陣地の中で様子を見守るだけ。彼の性能を測るにはまず、無理やりにでもあそこに突っ込んでいく必要がある。
「マルメロ、もう“爆破の波”の動きは見切った。あとは、俺の“空中シューズ”だけでも避けられそう」
俺は、マルメロの背中に掴まり、彼女の首の後ろから話しかける。
「これから君を“タイヨクのカード”に変える。空を飛んで避けながら、あいつに近づいて攻撃して。まだ様子見の段階だから、無理はせず」
「……了解しました。そちらも、気を付けてください。あなたが倒れれば、あなたに紐づけされた私たちも、その時点で終わりですので」
カードを取り出し、マルメロの体に直接押し付ける。形が変わり、背中から飛び出たカードを俺はキャッチする。
俺は樹木の地面に降りた。隣には、白黒の羽毛をまとった鳥人ことマルメロが立っている。
奥の壁の下に構えているブドウドラゴンは、こちらを見て、再びにやりと笑みを浮かべる。
「ごー!」
マルメロが駆け出した。“タイヨク”形態の、彼女の背中には一対の翼があり、空を羽ばたける。しかし、それは空中でも動ける程度で、空を飛び続けることは難しく、また、俺を掴んで飛び続けることも難しい。
まぁ、この中で爆破の波を避けながら近づくことくらいは出来る。俺という荷物を背負っていなければ、あそこに居るブドウドラゴンに殴りかかることも可能だろう。
さて、俺は爆破の波に巻き込まれないように、あっちを観察。
天井を、四方の壁を、広がった地面を、隙間なく等間隔に、紫色の丸い実が生えている。絶えず炸裂音が鳴り響き、紫の実が弾け、連鎖し、爆破の波となって面の上を伝わっていく。
向こうの壁下にブドウドラゴン。俺は反対側の壁の下に居り、今、俺の目の前を白ワシ人のマルメロが走っていく。ブルーバードは空を飛んでいるが、見えている姿は幻覚だ。
マルメロが、斜め向こうから迫りくる波を飛び越え、そのまま翼をはためかせながら、向こうに居るブドウドラゴンへと近づいていく。まずは軽くジャブというか、マルメロは殴って様子でも見るつもりだろうか。
ブドウドラゴンはというと、逃げもせずばらまきも行わず、ただ空を飛んで近づいてくるマルメロを見つめている。
「ブドウドラゴンさん! お覚悟を!」
マルメロが、拳を掲げて殴り掛かった。“耐爆ベスト”に、“爆裂ナックル”を合わせた爆破する一撃だ。レッドパールは装備しているが、“タイヨク”は“黒牛魔”に一枚劣り、またポイズンアントも引っ込んでいるので“共力の珠”も今は発動しない。万全ではないが。
それでも、俺たちの用意している中では、強力な一撃だった。
大きく、とは言わないまでも、無視できないダメージが、あのブドウドラゴンに入って欲しかった。俺は迫る波から逃げながら、向こうの二人の交錯を見つめた。
期待は、儚く終わった。
するりと、紫色のトカゲの体が動いた。大きいが、ポイズンアントよりも小さなオオトカゲ。動きは、無駄なく、視線の先で流れるように動いて。
その尻尾が、跳ねた。尻尾の薙ぎ払いは、マルメロの胴体へと突き刺さり。
「なっ……」
マルメロの体が、それはもう面白いように空を飛ぶ。マルメロの体はくの時に折れ曲がったまま吹っ飛んでいき、天井へと接触し、空間の半分以上を飛んで、地面へと落ちてくる。
「マルメロっ!!」
落ちた体を何かがさらい、浮かび、波を飛び越え、俺の元まで近づいてくる。俺はその落下点を予測して、荒く運ばれてくるマルメロの体を受け取った。大きな体、そこまで勢いが付いてたわけでもないが、俺は力を受け止めきれず後ろによろよろと退く。
俺の腕の中に、白黒の羽毛に包まれた彼女の体がある。
「マルメロ、大丈夫か」
俺は懐から取り出したグリーンオーブを砕き、彼女に振りかける。
「ご主人さま……私は、放っておけば回復しますので、アイテムは……」
「いったん変身を解除して休んでて。君が戻ってくるまでの間は、俺がどうにかする」
マルメロは、力なく俺の体の上にのしかかっている。すぐ間近で目が合う。また、別の波が俺のもとに近づいている。考えている暇はない、彼女もそう判断したのだろう。
マルメロの変身が解け、カードと、それからベストとナックルがその場に落ちる。俺はさっさと回収して、俺の体に迫る爆破の波を、避ける準備をする。




