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俺たちもあの時に比べれば強くなったん……とか言える場合じゃないな! ブドウドラゴンさんめちゃくちゃやり始めてるんですけど! 前回のモンスターパニックから一転、出てきたの一匹だけだからその一匹は超強いんだろうなーとは思ったけど!
俺たちの視界に見える、壁、天井、地面、それらすべてに余すことなく紫色の果実が点々と並んでいる。天井の果実が爆発を始めた。範囲は前回と変わっていない、並ぶ果実の二つの間に、同時に起爆すれば通れる隙間はなさそう。
「マルメロ! マルメロ! 俺を背負って爆破の上をジャンプ! いったんカエルカードに変えていい!?」
「いいですけど、“グリーンフロッグ”は耐久力もないし攻撃もできないですよ!」
前回……前回といえば、前回のブドウドラゴンは首元に成る果実を振るい落とし、それを尻尾で蹴ってこちらに投げていた。
今回は、何らかの方法で大量に壁や地面にそれら果実を生やしてきており、エネルギー切れの概念はあるだろうが、前回みたいに見える弾切れが無さそうだ。エネルギー切れに関しても、これだけ無茶苦茶やってきている以上、俺たちが体力切れして爆破を食らうまでひたすら爆撃してくる、なんてことも出来そうで。
勝利条件が見えない以上、素直にこっちから殴って敵を倒すことを考えなければいけない。ブルーバードは空を飛べるし、爆弾は天井のものも落ちてこないので、空を飛び回りブルーバードが攻撃を仕掛け、俺たちはただ逃げ場のない地面を跳んで逃げ回る。
今取れる作戦はそれくらいだろうか? ポイズンアントは重くて飛べない、今召還しても良い的だろうし今は休憩中。となれば、攻撃に回せるのはブルーバードだけ? あの相手にブルーバードだけは頼りない気がする。俺が“カードホルダー”のスキルで避けて、マルメロが攻撃に回る……いや、ダメだ。そもそも“黒牛魔”では、この隙間ない爆撃を避けられない以上、攻撃を仕掛けるにしても爆破を受け続ける。
「マルメロ! “耐爆ベスト”であの爆破は受けられそう!? 受けられそうなら攻撃に回って欲しいけど!」
「ご主人さま! あの紫爆弾は、装備があっても避けることをおススメしますよ! なんだかやばそうな気配がしてます!」
「オッケー!」
俺はカードを取り出しマルメロに投げつける。久しぶりカエル人のマルメロ。
「マルメロは俺を背負ってひたすら爆弾を避け続けて! ブルーバード! 聞こえてる! ブドウドラゴン本体への攻撃はそっちに任せた!」
任せて……良いだろうか。ブルーバードの攻撃の真価は、交戦中の相手に意識の外から差し込む幻惑の一撃にある。初撃は通ったとして、まぁ一撃ではまず倒れない。
攻撃を当て続けるには。
向こうの奥で構える、紫色のオオトカゲの姿を見つめる。
実力を軽く見積もるには、相手が大物すぎる。
ブルーバードはすでに飛び立ち、空を飛んでいる。俺はマルメロの背中にしがみつき、肩を軽く叩く。しっとりと濡れた肌。レッドパール装備、“耐爆ベスト”装備の“グリーンフロッグ”のマルメロ。“黒牛魔”でなくカエル人を選んだ以上、俺たちが目指すべきは被弾ゼロ。
向こうから、斜めに広がる爆発の波が、こちらに迫ってきている。今のところ不規則な爆発はなく、ただ波のように爆破は広がり、進んで来ている。
「マルメロ、爆破が来たら上に飛び越える。出来るよね?」
「可能ではあります」
地面に並ぶ紫の果実が、連鎖して次々と爆破する。俺たちは樹木の地面に立ち、迫りくる爆破の波を見つめる。
「しっかり掴まっててくださいね!」
カエル人ことマルメロは、足を大股開きにして地面に両手を付き、ぐっと屈みこむ。黄緑色の濡れた太ももが、彼女の意思に応じて力が入り、膨らむ。
視界が跳ねた。等間隔に並んだ紫の実は、タイミングを合わせて爆破の光を放ち、のちに一斉に爆破する。俺たちは、爆発する波を乗り越えた。一瞬の浮遊感の後、俺たちは放物線に乗って地面に帰還する。
「あはは! 攻撃が一辺倒なんだよブドウやろう! こんな攻撃当たるか!」
向こうのブドウドラゴンは、ぶるぶると首を振って地面に紫の果実を落とした。ぴか、ぴかと、落ちた果実が、爆破の予兆となる光の点滅を示す。
「オラァ! 死ねぇ!」
紫トカゲは大きく体を一回し。彼が尻尾で薙ぎ払った数多の爆弾が、俺たちに向かってばらまかれる。
「後ろにっ――」
後ろから、新たに迫りくる爆破の波がある。
「後ろに跳んで!」
マルメロは振り返り、そのまま数歩走ってぐっと身体を屈め。
体が浮き上がる。爆破の波を乗り越え、俺たちはそのまま背後の壁へとぶち当たる。ずりずりと、壁からずり落ちている間にも、天井から壁の上へと伝う新たな波が見えている。後方の地面で、広範囲に広がり散らばった爆弾の実が爆発した。
「そんなにずいぶん遠いところからじゃあ、何言ってるか、聞こえねぇなァ!」
波が過ぎ去っていくのを見送り、俺たちは壁下の地面に降りる。長くじっとしては居られない。この直方体の六面に、常に爆破の波が伝わり、流れている。
マルメロで攻撃するつもりはなかったが、ブドウドラゴンは向こうの壁下、俺たちはこちらの壁下と、ずいぶん距離を離されている。
そして、気づいた。天井にも、壁にも等間隔に敷き詰められている爆弾の実。だが、一つ。
向こうの、ブドウドラゴンの居場所だけは、地面や壁に爆弾の実が生えて来てない。
「耳が遠いか!? こっちに来いよ!」
「ここはオイラの牙城っ、お前ら逃げ腰♪」
「それとも、その“安全圏”から! お前は出てこれないのか?」
俺の呼びかけに、ふりふりとした紫トカゲの動きが止まり。にや、と口元に笑みを浮かべる。
「さぁ、そいつはどうかな」
「まさか、自分で起こしてる爆発も受けるのが怖い、なんて情けないこと言わないよな?」
「なんだって? そんなに遠くちゃ、聞こえないよ」
ブドウドラゴンははぐらかす。




