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支える者達

 篤史が美羽や宗次と出会ってから、数年が過ぎた。


 今までは親の付き添いでしか篤史の家には来なかった彼らも、この頃になると1人でも篤史の家を訪ねてくるようになったのだが…


 「うわぁ~、まだ森から帰ってないのか」

 宗次は母トヨの使いで篤史の家を訪ねたのだが、本命は篤史と遊ぶつもりだったのだ


 「ごめんなさいね宗次、あの人達ったら森へ入ると数日は帰って来ないから…」


 篤史の母エミは宗次に申し訳なさそうに伝えるとトヨへ頼んでいた物を受け取る。



          ◆


 篤史の家は村では厄介者扱いされていた。


 知らぬ間に村の近くに住んでいた“四つ足の獣”を食す狩人は村人達から異端者として見られていた


 かつてエミ1人で村へ行った時に村人から酷い目に遭わされた事がある。


 村人達はエミを“ケガレ”た者と罵倒し、石を投げ、棒で殴り髪を掴むと地に引き倒した…


 エミは元狩人である

 村人数人なら本気を出せば倒す事は訳もなかったのだが

 彼女は村との関係が壊れる事を恐れ手を出さず耐えていた


 

 「あんたら!

 大の大人がよってたかって女1人に何やってんのさ!」

 その時、真っ先に村人からエミを守ったのが宗次の母トヨだった。

 

 村人達は

 「こいつら一家はケガレだ、二度と村に来ないようにしないといけないんだ」

 

 と、自分達を正当化しようとしてた

 しかし、トヨは一歩も引かず


 「ケガレだって証拠はあんのかい?

 宮司さんが言ったのかい?

 もしケガレなら宗則さんが居るでしょ

 あんたらが手を出す理由はあるのかい?」


 と、トヨが村の男達を相手にしていた時に村人達を諌めたのが君彦の妻フサだった。


 「皆さん、トヨさんの言う通りですよ

 あの一家はケガレではありません。

 皆さんの行いの方がケガレに近い行いではありませんか?」


 フサは君彦の妻であると同時に村長の娘でもあった


 「この人に危害を加える事は“私が”許しません。

 皆、仕事に戻りなさい。」


 故に村人達はフサの言葉を無視する事は出来ず解散した…


 村人達を諌めた後フサとトヨはエミの手当てをすると今回の件を君彦と宗則に相談し矢作の家へ向かった。


 矢作は君彦から事の顛末を傷跡が生々しいエミの姿を見ながら聞いていたが、

 

 話が終わるとゆっくりと弓に手を伸ばした…


 「まて矢作!

 それをやっちまったら終わりだ!」

 静かに怒る矢作の手を宗則が抑える


 「そうですよ矢作。

 怒るな…とは言いませんが、トヨやフサの行いを無駄にしないでください。」


 君彦もそう言ってなだめると

 エミが1人で村へ降りてこなくてもいい様にフサとトヨが村との橋渡しをする事を提案し矢作達はその提案を受け入れる。


 村としても村で唯一のモノノフと水守神社を敵には回す訳には行かない

 だが“四つ足の獣”を食す狩人とは距離を空けたい


 その為、仕方なくフサとトヨの申し出を了承する。


 村人達は知らなかった…

 矢作達がもたらす品がとても貴重で“薬”を作る上で欠かせない物だと

 村の周囲を守る“結界”の護符を矢作とエミが管理をしていた事も


 そして、君彦や宗則すらも知らなかった

 朝廷が狩人を“守り人”と呼び“モノノフ”と対になるように朝廷から派遣された者達だと…

 


          ◆



 「宗次、すまないけどこれをフサに渡してもらえる?」

 エミはそう言って木の葉で包んだ物を宗次へと手渡し


 「これはトヨに」

 と、森で採れた樹の実を宗次に渡すと

 トヨへの感謝の言葉を伝え宗次を村へ送り出した。



 宗次が訪ねて来た日の翌日矢作と篤史が帰って来た


 足元の状態や身に着けた装備の状態を見たエミは

 「おかえりなさい…今回はずいぶんと無理したのね」

 矢作と篤史の様子からエミは彼らがギリギリの状態で帰って来た事を悟ると

 意識が朦朧とし立つのがやっとの篤史を寝かせ矢作を少しでも早く休ませようとするが

 

 矢作が弓を手に取り出かけようとした為、


 「出たの?」

 と、尋ねる


 矢作は静かに頷くのみ


 「なら私が…あなたは篤史と休んで」


 そう言ってエミは矢作を部屋の中へと押し戻し、自らは弓と鏑矢を手に村へと駆け下りて行った… 


 

 ヒューーーーーーーーッ


 神社の外れに鏑矢の音が鳴り響く

 君彦は鏑矢の音が矢作ではなくエミだと気づくと

 矢作に何かあったのか?と一目散に駆け出し鏑矢を手に取り文を読む


 矢作と違いエミの文には紙が使われている

 エミの文は事細かい事が記載されてる場合が多く、使い回しした紙の最後に読んだら燃やすようにと書かれていた。


 「少し散歩してくるよ」

 君彦はフサにそう伝えると宗則の家へと歩を進めた…



 あくる日の昼頃、宗則と君彦が宗次と美羽に荷物を持たせて矢作の家へと訪れる。

 彼らは矢作の家に着くなり長期戦を見据えた装備と荷物を手に矢作を連れて森へと入って行った…



 「篤史起きた?」

 矢作が君彦達と共に森の中へと出かけた後も篤史は寝込んで居たのだが、親と一緒に来た美羽と宗次が篤史を心配して篤史の看病を手伝っていた。

 

 「少し…“ケガレ”を浴びてしまったみたいね」

 エミが様子を見に来た美羽に言うと美羽は懐から1枚の呪符を取り出す


 「これ…使っていい?」

 エミは美羽が取り出した呪符が美羽をケガレから守る為の呪符だと気づくと


 「ダメよ美羽」

 エミはそっと美羽の小さな手に己の手を重ね包むと

 

 「それは貴方を守る物…あなたに何かあったらフサに合わせる顔が無いわ」

 と、美羽の優しさに感謝しながらも美羽の行為を止めさせる。



 「薪、積んどいたよ!」

 そこへ薪割りをしていた宗次が元気よく入って来て上手く空気を和ませた


 宗次のおかげで和らいだ雰囲気になった所を利用してエミは何かを思い出したように


 「忘れてたわ

 宗次、これをトヨに渡して欲しいの…

 篤史なら数日すれば良くなるから、また今度来てくれる?」


 彼らをこの地に長居させるわけにはいかない。


 そう思ったエミは宗次に美羽を村まで送るよう言い、トヨへの荷物を渡すと宗次達を村へと帰すのであった。



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