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親父さんの決断

「俺さぁ、行商人やってみようかなと思うんだ」

「ほぇ?」

藪から棒に、何を言いだすんだこの人は?


親父さんが『あっち側』から帰って来て数日後、うちに来てイキナリの発言があれだった。

「ちょっとナニ言ってるか良くわかんないんですけど」

「もいっぺん言うぞ。『行商人』をやろうかと思っている」

言い終わると一気に湯呑に入っている温くなっていたお茶を飲み干す。

「行商人っていつの時代ですかっ」

「あ?あぁ、『あっち側』の事だわ」

・・・・・・・・・・・・ある意味予想通り。

「その行商人やるとしてこっちの店はどうするんですか?」

「娘がいるからなぁ、奴にやってもらうよ」

「娘さんいましたっけ?」

「ああ、ヒマだと言ってフラフラしてるのがな。もう呼び寄せてるから近々来る」

衝撃の真実発見。子供居たんだねぇ、知らなかったよ。

「そうなんですか・・・・もう行商人はやるつもりなんですね?」

「もちろん、やるよ。最初は百均でガラス製品あたり売れば高値が付くんじゃないかと思ってる」

流石は商売人だな。ちょっと見ただけで文化やら生活スタイルを理解出来ているようで早速目星を付けていたようだ。

「良いんじゃないですかね。ガラスなら軽く10倍程度はイケると思いますけど」

「まぁ、あんまり売っても価値が下がっても困るから生活できる程度しかやらないけどな」

確かにそれもそうか。自ら価格崩壊させたら目も当てられない。

だから高級品扱いされているガラス系のモノを売れば少量で高額になるから荷物が少なくて済む話か。


親父さんのスマホが鳴った。

「もしもし、あぁ着いたか。そこで待っててくれ。迎えに行く」

「ちょっと娘を迎えに行ってくるよ」


5分も経たずに戻ってきた。

一緒にいるのは娘さんなんだろう。

「・・・・・・・・・・・・・・もしかして、ケンヤ君?」

「えぇ、そうですけど。・・・・・・・・・・・えっ?アカネ?」

うっそ。衝撃の事実ぱーと2。親父さんの娘はアカネだったという・・・。

あ、アカネは高校の時のクラスメイトで結構仲は良かった方だった。

俗にいう『友達以上恋人未満』とでも言うべき間柄。

進展が無かったのはこの関係が壊れるのがイヤだったから。

まぁ、俺がヘタレだったという事もあるんだけどな。

「お父さん、知ってたの?」

「んにゃ、そんなワケないだろ」

だろうなぁ。知ってたら物凄いニヤニヤ顔で寄ってくるから大体は分ってしまう。

「ま、まさか親父さんがアカネの親父さんだとは・・・・・・流石に思いもしなかった・・・・・・」


「店はお前に当面任せる。細かい事はノートに綴ってあるからそれを読んでくれ。年度末にはちゃんと仕事するから。領収書だけきちんとしておいてくれればいい」

もの凄いテキトーな言い方だなぁ。

ある意味高田順二よりもテキトーなのかもしれない。

「もう、お父さんったら」激おこな状態のアカネ。

それもそうか。いきなり呼びつけられて店やれ、あとはヨロシクじゃあんまりだな。

「すまんなアカネ。このトシでやりたい事が出来たんだよ」

「・・・・・・やりたい事?」

あれ?まだ説明とか全然だったり・・・・・・・・・・しそうだな。


最初の頃は『何バカな事言ってんの』的な感じだったが貨幣やら写メっていた画像を見せたりしているうちに、ようやく理解してくれた。

「お父さん、向こう行っちゃうの?」

心配そうな顔をするが、何故かは解らないが問題ないと一蹴される。

「大丈夫。週一で帰って来るから問題ない。たとえ難しくてもこっちに来る奴に伝言して貰えば大丈夫だろう」

何だろう。長期出張に行く人の言葉のように聞こえるんだが気のせいか?

「まぁお父さんって自分で決めたって事には昔からガンコだったもんね。あの古物商だって急にやるんだって決めて・・・」

言いながら思い出したようでげんなりした顔になっていた。

「ま、どうせもう何を言っても聞きやしないだろうから好きにして。ただし死なない程度にね」

「お・・・・・・・おぅ」

普段は厳つい顔なのに娘には弱いんだなぁ。

「・・・・・・なに?」

「い、いえ・・・・・ナンデモナイデス」怖ぇーよ。



「じゃあ、とりあえず百均で一通り仕入れてくるわ」

と言い残しさっさと帰って行った。

「・・・・・・・・・・・・アカネはどうすんだこの後」

「どうもこうも無いわよ。実家から通うかこの辺りに引っ越すか考えないと」

「親父さん言ってたろ。少なくても一年は行ったり来たりだと」

「む~。どうしようかなぁ」

「ここらへん賃貸って殆ど無いぞ。かといって親父さんの店は倉庫に毛が生えた程度だしなぁ」

「ねぇ、ケンヤ君ちって部屋空いて無いの?」

「まぁ無いことはないけど・・・・・・・・ってマジ?」

「うんマジ。ちゃんと食費とか諸々収めるってば」


そういう事ではない。


それはつまり俺とアカネがあーしてこーして・・・・・・・・・・・。


********しばらくお待ちください********



「お~い、生きてるかぁ?」

何故かアカネが俺の顔を覗き込んでいた。

「ほぇ?」

まだ夢でも見ているのだろうか。久しぶりに見たアカネは綺麗になっていてますます自分の好みにドストライクになっていた。

そうか、これは夢なんだな。夢なら何したって大丈夫だな。

俺のおでこに手を当てていたので、そのまま手を掴み抱き寄せた。

「ちょ・・・・」

「アカネ・・・・・好きだわホント」

顔を両手で挟み、互いの顔の距離を縮めていこうとしたら・・・・・・・・。




「熱っ!!!」

アツアツのこんにゃくが顔にくっついた。

俺は上島じゃないっつーの。

しかもカラシが大量に。これは芸人でも食うのを躊躇う程の量だ。

まさかとは思うがチューブ1本使ってないよ・・・・・な?

夕方に仕入れから帰って来た親父さんと向こうで売れそうなモノをあれこれ吟味していたら閉店時間になって、閉店したらあまり時間経たずにスタインさんとトムさんが来た。

「・・・・・・・・・・・モフモフしたい」

ちょっと目がマジだったから何も言えなかった。

でも、これで完全に信じてもらえたようだ。

スタインさんは百均で仕入れたガラス製品を見てたまげた顔をしていた。

「これだけの品質であれば銀貨数枚以上でも問題ないだろう」

トムさんは自分のおでんにハチミツを入れていた。美味いかは知らんが。

ハチミツを食べた事により『プーさん化』していた。

「やべぇ、リアルぷーさんハンパないんですけど」

気持ちは解る。俺もそれを最初に見たときはビックリしたからなぁ。

「・・・・・・・・・・お父さん、アタシね」

「どうした?急に」

「ケンヤ君と結婚したい」

ヒロイン登場

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