第7話 解決策を見つけた(2)
ハルトはがっくりと肩を落とし、とぼとぼと帰路についていた。
昼過ぎまで激しく降っていた雨のせいで、空気は湿り気を帯びて重く、まるで彼を押しつぶそうとしているようだった。
歩くたび濁った水が跳ね上がり、ズボンのすそを汚していく。
憂鬱な気持ちを抱えながらも、ハルトはまだ諦めきれず、薬の材料のことを考えていた。
たくさんの課題があるが、その中でも、魔竜を倒す手段がまったく思いつかない。それに、そんな能力をもった人間を見たこともない。かつての仲間であったアキヒロとメグミですら、普通の竜と比べてもはるかに弱かった。
仮に魔竜を倒せる屈強な人間を見つけたとしても、それを雇う財力がない。
メアリーの両親なら、もしかしたらお金や人を集められるかもしれないが、あの両親がハルトの言うことを信じるとは思えない。
(結局、俺のせいってことか……)
お金がないのも、伝手がないのも、信用がないのも、今まで自分が酒とギャンブルに逃げていたからだ。それはわかっているが、今更解決する時間も気力もなかった。
途方に暮れた彼の足は、いつの間にか行きつけの酒場に向かっていた。
大通りから少し外れた場所にある行きつけの酒場は、店主と女将の二人で切り盛りしている店だ。こぢんまりとしており、薄暗い印象を受けるが、隠れ家的な雰囲気がハルトの好みだった。それに安くて気前が良い。
数日前までは一番乗りのハルトだったが、今日は少し出遅れた。すでに何組か飲み始めていて、その中の顔なじみが手を上げて迎えてくれた。
自然とそちらに足が向いたが、女将が立ちふさがった。
「あんた、今日こそはお金を持ってきたんだろうね?」
「ないよ。ちょっと疲れたんだ。一杯でいいから恵んでくれ」
「今日という今日はダメよ! あんた、メアリーちゃんが倒れたって言うのに平気な顔をして飲みにきて、少しはまともに――」
女将の説教が始まる。
いつもなら無理やりにでも通り、酒を要求するハルトだが、今はそんな気力もない。諦めて帰ろうとしたとき、カウンターで優雅にグラスを傾ける女性が目に入る。
リーゼロッテだ。
ハルトの脳裏に、あの夜見た圧倒的な数値がよみがえる。
刹那、特殊能力のスキャンを発動させる。彼女の頭上に各能力が表示されていく。
その圧倒的な数値に、思わず息を飲む。
見間違いではなかった。彼女の戦闘能力は一度だけ見たことがある勇者一行と互角か、それ以上の数値を誇っている。
(あの人なら、魔竜と戦えるんじゃないのか……)
魔竜を見たことはない。だが、彼女の数値はハルトが知る竜よりも高い。魔竜はもう一回りか二回り強いだろうが、彼女ならば、何とかなる気がした。




