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第6話 解決策を見つけた(1)

「あった!!」


 ハルトの大きな声が館内に響く。すると周りから鋭い視線を向けられ、慌てて口を押えて黙る。


 しかし、目の前にある書物を見ると、もう一度叫びたい衝動に駆られる。喉まで出かかった声をどうにか飲み込み、小さく拳を握る。


 思い立ってから五日間、ハルトは図書館にこもり続けた。

 異世界の馴れない文字を一つずつ追い、難しい論文や専門用語に苦戦しながら、ついにあの病、厳密には呪いの記述を見つけた。

 その分厚い辞典には、解呪するための薬のレシピや作り方も詳細に載っていた。薬の知識などないハルトだが、これなら治せるのではないかと、期待で胸がいっぱいになる。


 興奮で震える手を抑え込んで、急いで、しかし正確に本を書き写す。そして何度も見直す。


 転記した内容に誤りはなかった。しかし素材の欄を改めて見ると、先ほどまでの興奮が一気に冷める。


(この素材、どうやって入手するんだよ……)


 薬の材料は十種類ほどだ。名前を聞いたことのある薬草やよく見る甲虫などはすぐにでも採取できそうだ。ただ、二つ問題となる素材がある。


 一つは木の根が入った鉱石だ。薄緑色だがさほど綺麗でもなく、根が入ってしまったことで強度が落ち、アクセサリーなどへの加工も難しいため需要がほとんどない。色々な地域で採掘されるが量が少ないため、あまり市場に出回らない。その上、供給が少ないのでそれなりに値段が張る。

 うっすらとした記憶だが、行商人が持っていたことがあった。だから商人たちを当たれば何とか入手できるかもしれない。


(いや、ちょっと待てよ……)


 ハルトは手帳をめくっていく。中ほどのページに、近くの山に生えている大樹の根元で採れたとの記述があった。


 鉱石は何とかなるかもしれないと思い、目を輝かせるハルト。だが、すぐにもう一つの素材、「魔竜の血」の存在を思い出し、その目からすっと希望が消えた。


 魔竜は今生きている竜の始祖とされている種族で、他の竜たちが空を飛ぶ翼竜なのに対し、魔竜は地上を這う。その姿も独特で、巨大なトカゲのような姿をしている。

 気性は荒く、暴走するトラックのように、辺りの物をすべてなぎ倒しながら獲物を追いかける。

 その戦闘能力は他の竜を寄せ付けず、一匹で国一つを亡ぼしたなんて逸話もある。


 相手の能力を数値で見られるハルトは、それが伝説ではなく、実際に起こりえることを理解していた。通常の竜、いわゆる翼竜ですら、強力な人間の十倍の能力を有している。

 仮に、この町にいる腕っぷしの良い傭兵を五人雇ったとしても、あっさりと全滅するだろう。

 戦闘能力がほぼ皆無のハルトなど、挑んだところで犬死にするだけだ。しかも血は鮮度も重要なので、店に並ぶこともない。どう考えてもハルト一人では入手できない代物だ。


(結局、絵に描いた餅ってことか……)


 そう思い、ため息を吐いたとき、どこからかベルの音が聞こえる。慌てて辺りを見渡すが誰もいない。受付の方に視線を向けると、ベルを持った従業員に睨まれていることに気がついた。どうやら閉館時間を過ぎているようだ。


 ハルトは急いで本を戻し、追い出されるようにして図書館を後にした。


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