第24話 また、やらかす(1)
翌日。
鉱石を手に入れた二人は分かれ道まで引き返し、今度は左手の道を進み、日が沈む前に次の町へたどり着いた。
さらに次の町に行くのは時間的に厳しいということになり、今夜はこの町で一泊することになった。
「おーし! もう一杯行くぜー!」
大きな声を上げたハルトが酒の入ったカップを高く掲げると、それに呼応した周りの酒飲みたちもカップを高く上げる。
ハルトの顔はいつぞやのときと同じく真っ赤に染まっており、豪快に酒を飲む口元には常に笑みが浮かんでいた。その瞳は昨日採った鉱石よりも光り輝いている。
そんな有頂天のハルトを、リーゼロッテは少し離れたカウンター席で見守っていた。
するとカウンター越しに、店主と思しき、美しい口髭を生やした男性が声をかけてきた。
「あの、お連れの方、大丈夫ですか?」
「騒ぎすぎか? であれば止めるが」
「いえ、備品を壊さない程度であれば問題ありません。その、下世話な話ですが、お代の方が気になっておりまして」
「ああ、金ならある」
そう言って、硬貨の入った袋を持ち上げるリーゼロッテ。その袋は、分不相応なほどぱんぱんに膨れていた。
もちろん、ハルトが持ってきた金ではない。彼は露店で興じたネズミレースで大穴を当てて、今夜の酒代を稼いだのだ。
今後のこともあるので、硬貨は一枚でも多く残しておいた方がいい。
だが、彼の不格好な手を見ると、あれだけ頑張ったのだから、今日くらいは散財を見過ごしていいのではないかと思い、あえて止めていなかった。
とはいえ、明日の予定に支障を出すわけにもいかない。リーゼロッテは立ち上がり、他の人間と騒ぐハルトに声をかける。
「ハルト。宴に水を差すようだが、明日も早い。ほどほどにしておけ」
「大丈夫大丈夫。このくらいならぜんぜん酔ってねーって」
そういうハルトの息は、それなりに飲んでいるリーゼロッテでもわかるほど酒臭い。酔っていないわけがないのだが、さすがに彼の愛する人の命がかかった旅で、羽目を外しすぎることもないだろうと思い、「そうか、気をつけろよ」と短く言って、席に戻った。
席に戻ると、美しい口髭の店主がまた声をかけてくる。
「もう少しお飲みになられますか?」
「いや、今日はやめておく。といっても頼まないのも失礼だな。グレープジュースをもらえるか」
「かしこまりました」
後ろでまたお祭り騒ぎが始まる。その中心にいるのはハルトだ。
リーゼロッテはそれを見て馬鹿騒ぎしすぎだと思いつつ、さすがに元のだらしのない性格に戻ることもないだろうと、高をくくっていた。




